第1話 ファンタジーな異世界に転生した
都市国家ロマーノは周りの部族との戦闘に明け暮れ、そのほとんどで勝利を収めた。
ロマーノ人は戦での敗者や外国人にも自分たちと同じ権利を与えることで、同化して行き巨大帝国と発展していった。
そんなロマーノ帝国の首都ロマーノから1300kmほど南東に位置する都市アセンス。
アセンスはロマーノが興る以前の世界において、現在のロマーノと比べれば小さい規模ではあるが最も栄えた国の一つであった。
今日のアセンスの領主宅は朝から慌ただしい様子だった。
領主ペーレウスはかつてドラゴン討伐をも成し遂げ、英雄と讃えられるほどの実力者であった。
しかしかつてドラゴンと相見えた時でさえ落ち着き払っていたペーレウスの心臓が激しく鼓動する。
最愛の妻テティスが産んだ子供が産声を上げないのだ。
ペーレウスは死産だと思った。
妻が必死になって産んだ子だ、母子ともに危ない状況での出産だった。
もし死産だとなれば、妻はどう思うだろうか。今精神的にやられてしまうのはまずい。
ペーレウスは生まれてまだ間もない赤子に縋るような気持ちだった。
「おぎゃあああ」
子供が産声をあげた。よかった、二人の家族を同時に失うかもしれない状況だった。
ペーレウスは一度緩めた表情をまた硬くして、妻を見る。
妻もまたこちらを見ていた。目に涙を浮かべ、微笑んでいる。妻も大丈夫そうだ。
ペーレウスは神に感謝した。
これほどに嬉しいことが今までにあっただろうかと思い、産婆に渡された赤子を抱える妻に覆いかぶさるようにそっとハグをした。
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目が覚めた。意識ははっきりとしているわりに目が見えにくい。
転生したようだから今自分は生まれたところか、それに赤子は目があまり見えないと聞いた事がある。
だから視界がぼやけているのかなどと客観的に自分の誕生について考えていた。
あたりを目線をずらして見渡す。同じ色の服を着ている人が何人かいる。そのうち一人に抱きかかえられていることから、この人たちは助産師さんたちかな。
ならば目の前で横になっているのが新しい母親で、そしてこの中で特に背の高い人、この人だけが男性だろうから、父親か。
なんとなく重い空気が漂ってる気がした。なんでだ、せっかく俺が生まれたのに。
理由を考えること数秒。わかった、人生の最初の一大イベント「産声」やってないじゃん。
死んで生まれたと思われてるのか。
それじゃ一丁やりますか。俺は息を思いっきり吸い込んだ。
「おぎゃあああ」
なんか変な感じになっちまった。まあいいか、雰囲気も一気に晴れやかになった。
俺は母親に渡される。そっと撫でられた。優しい手つきだ。
うぎゃっ。突然苦しくなる。横で見ていた父親が覆いかぶさってきた。
優しくしているつもりだろうけど全然苦しいよ。
でもきっと嬉しかったんだろうと思うと別に許せた。
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生まれてから数日だんだん感覚がはっきりとしてきた。
観察による結果、色々な事がわかった。
まず俺は両親にとって初めての子供のようだ。
それから俺の名前はアキレウス。前世の名前がアキだったから違和感も少なくていい。
父さんはペーレウス、母さんはテティスっていうらしい。それに父さんも母さんも金髪碧眼で超美形。
この二人の子である以上自分の容姿は保証されたも同然だと思い少なからず嬉しかった。
父さんはそこそこ偉い人なのかうちには色々な人がやってくる。他には執事とメイドさんが一人ずつ住み込みで働いているようだ。
そして言語は異世界らしく聞いたことのない言葉だったが、赤子の柔らかい脳のおかげか前世の記憶のおかげか少しずつわかってきた。でも発声器官がしっかりしていないのかまだ話すことはできないので、自分の気持ちを伝えられないのが苦しい、とにかく泣くしかできないのだ。
そうそう、前世の記憶も結構しっかりと覚えている。
この世界は日本と比べてあまり文明が進んでいないようだ。
前世の知識で一攫千金ってのもありきたりだが出来そうだと思った。
そして魔法。魔法だぜ。びっくりした。母さんが俺のことを風呂に入れようとしたときに、桶の中に水を入れたんだけど、何か呪文を唱えたと思ったら指先からお湯が出てきたんだ。
異世界ってすごいね。俺も魔法使えるようになったりするのかな。
魔法のある世界かファンタジーだな。
これからのこと、かなり楽しみになってきた。
でもまずはお腹が空いたからミルクの時間だ、泣かなきゃ。
ついに始まりました第1章。
プロローグ投稿後すぐにポイントつけてくださった方がいて、かなり感動しました。
これからもますます頑張っていきますので読んで頂ければ幸いです。