プロローグ3
随分と長い間意識を手放していた気がする。
最後の記憶はなんだっけかな。
なんだかまだ意識がはっきりとはしていないな、靄がかかっているみたいだ。
記憶はあるんだけど思い出せない。
なんだか変な感じだ。
まあいいかもう少しだけ寝ようか。
目が覚めた頃には多少はマシになってるだろう。
目が覚めた。
うん、ここどこだよ。
なんとなく荘厳な雰囲気の建物だ。
行ったことはないけどナントカ大聖堂って感じの建物。
なんで俺こんなとこにいるんだろう。
最後の記憶にあるのはえーっと、
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大学終わりにバイトに行く途中、深夜ラジオをタイムフリーで聴きながらニヤニヤしそうな口元を咳をするのを装って隠す。
この音楽の悩み解決してくれるコーナー面白いよなーとか考えながら歩く。
なんてことないいつも通りの日。
いや月曜日はあの娘と同じシフトだから少しだけ特別な日かも。
そこの信号を渡ったら右に曲がってすぐの中華料理店。そこが俺のバイト先
店長さんが中国人の本格的な中華が売りのお店結構人気で小籠包が絶品。
たまに賄いでも出してくれる。熱々の小籠包を割ったスープはキラキラでトロッとしてて薬味は絶対一緒に食べた方が美味しい。
出るかもわからない小籠包のことを考えながら信号を渡ろうとする。
あぁ点滅し始めたから渡らなくてもいいか、落ち着きのある男はモテるらしいし。
信号が赤になった。向かいの歩道には親子だろうか、3歳ぐらいの女の子とお母さん。
あとはガタイのいい兄ちゃんもいるな。
あの少し奥にいるのは、あの娘じゃないか。ちょうど渡るときぐらいにこっちに気づくかな。
なんて声かけようか。
そんなことを考えていると、正面の女の子が持っていた丸いぬいぐるみを落とした。
コロコロっと車道まで転がる。女の子が拾いに行こうとする。車のことなんて見えていない。
危ないぞと思った。あれ、お母さん電話に夢中で娘に気づいてないな。ヤバイんじゃないか。
おい車来てるぞ、運転手も気づいてないんじゃないか。
このままじゃ確実にあの子轢かれるなと思った瞬間、俺は地を蹴って飛び出す。
それは突然芽生えた正義感か、好きなあの娘にかっこいい所を見せるためか。
このまま女の子のところまで走って行き、抱きかかえて向こう側まで渡る。
女の子と車の距離もまだある。いける。イメージはできた。
そして走り出す。
俺は五歩ほど走ったところで車に轢かれた。全然手前の車見えてなかった。
最後に見えたのは、ガタイのいい兄ちゃんが女の子の腕を掴んだところだった。
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えっ、もしかして俺死んだのか。しかも無駄死にか。寧ろ迷惑かけただけじゃん。
やっちまった。親とか友達とか悲しむだろうな。
なんで車見えてなかったんだろう。
なんか突発的に善意が溢れたというか、善意に支配されたというか。
なんかおかしい。夢かな。ちがうよな。
「おーーい。すいませーーん。誰かいますかーー。」
「あっ、君が転生者君か。待ってたよ。」
女の人がやってきた。うわっ、物凄い美人さんだ。スタイルも抜群。神はピンクで肌はきめ細やかで真っ白。
服装は古代ローマみたいな感じ。でもコスプレって感じじゃなくてものすごく似合っている。
「あのすいません。ここはどこですか。あと今転生者って、、」
「それはわたしが説明することじゃないわ。あなたのことを担当してくれる人がいるから、案内するわ。ついて来てちょうだい。」
なんなんだろう。この人は受付嬢的な人なのかな。
ついてこいって言われたけど、誰が待ってるんだろう。もしかして閻魔大王か。
それにしてもこの建物広い。だいぶ歩いたと思ったけど、まだ着かない。
あとこの女の人凄い良い匂いがします。石鹸みたいな自然な香りでとても落ち着く。
「この部屋よ。あなたにはこれからいろいろなことが起きるでしょう。でも頑張ってね。
あなたなら大丈夫よ。あと、あなたに私の加護がありますように。」
そう言って女の人は俺の頬にキスをした。
軽く触れるぐらいのキスだったけれども、脳が揺れるぐらい甘美で、今までされたキスの中でも、って言っても三人目だけど、一番良かった。
それに私の加護って何だろう。もしかしてあの人神様なのかな。キスの神様。そんなわけないか。
蕩けた脳を揺さぶるように、何度か首を左右に振って気持ちを入れ替えた。
神でも悪魔でもドンと来い。
キスの神の前では、誰もが無力だ。そんなことを考えながら、扉を開けた。
ついに主人公が出て来ましたが、まだ何もわかりません。
次回でやっとプロローグは終わりです。
章の終わりごとにその章での初登場人物、設定なんかをまとめた話も投稿する予定です。
いずれ長く連載が続けば、必要になるはずです。