第10話 顔合わせ
場所を俺の部屋へと移し、改めて自己紹介から始めた。
「改めて、ケイローンという。君の家庭教師をすることとなった。まずは宜しくだ。」
「よろしくお願いします、ケイローン先生。アキレウスです。一生懸命頑張ります。」
「うむ。そんな子供のフリなどせんでも良い、イチノセアキよ。」
俺は後ろへ大きく跳びのき身構える。
「身構えなくとも良い。ちょっとした特技だ。俺の目は真実を見通す。お前が転生者だからといって別にどうにもせん。今までにもお前のような生徒を何人も取ってきた。実際の3歳児よりも扱いやすくて良いぐらいだ。」
「すいません、驚いたもので。それにしても真実を見通す目ですか。それに先生はそこまで高齢には見えない。一体何歳なのですか?」
「ーーーはっはっは。そりゃあ驚くだろうな、転生者は前の名前で呼ばれると驚くって相場は決まってるんだ。自分しか知り得ない情報を人に知られるのは怖いことだ。だから俺の目のことも年齢もいまはまだお前には教えない。それにしても驚き過ぎだぜ。顔すごい引き攣ってたぜ。」
この人こういうタイプの人か。今のも俺をビビらせようとしただけで、なんの他意も無いんだ。そう分かり安心すると、すごいムカついてきた。
なんだこの人性格悪いってもんじゃねえぞ。
それにしても真実を見通す目か。年齢も若そうなのにずいぶんと長く先生をやっているようだし、喋り方もなんだか定まっていないようで素を見せない。いろいろ不思議でつかみどころのない人だなっと思った。
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「じゃあ俺はそろそろ帰る。明日からは勉強していくからな。アキくんバイバイ。」
「その名前で呼ぶのはやめてください。あと父さんや母さんにはそのことは言わないでください。」
「なんのことかな?ちゃんといってくれないとあの事とか言っちゃうかもなあ。それにアキレウスくんのことをアキくんって呼んで何がダメなんだい?あと、あの事を知ったからって君の両親は変わらないと思うよ。喜ぶぐらいじゃないかな。まあいいや、それじゃあね。」
そう言って先生は帰っていった。
最後まで俺を苛立たせる人だ。明日からある意味大変だな。
本当に父さんと母さんは俺が転生者だと知っても気味悪がったりしないのだろうか。
少しはあの真実を見通す目とやらを信じてみようか。
それにしても俺は今の両親のことも思いのほか好きなようだ。
日本の両親のことを思い出したり、いろいろなことを考えて少ししんみりしてしまった。