第9話 家庭教師を雇う
3歳になったある日、父さんが俺に家庭教師をつけようと言い出した。
話を聞く限りではこの世界の学校は7歳になったら入るのが普通らしい。
飛び級なんかもあるらしいが俺には関係なさそうだ。
多くの貴族家庭や儲かっている商人などの裕福な家庭では、子どもが3歳から4歳頃になると家庭教師をつけてさまざまな基礎的な学習をしていき7歳になると商業学校や魔術学園、騎士学院などに子供の入学を決めるものらしい。
そんなわけで家庭教師がつくことになったわけだが、その人は父さんの知り合いでかなり有名な先生らしい。教えてもらう限りはいい先生に教えて欲しいのだが、どういったことを教えてもらうのか気になって聞いてみて愕然とした。
音楽、医学、狩猟、武術、馬術に加えて基礎教育を学ぶらしい。
いくら前世のアドバンテージがあるとはいっても基礎教育ですら、魔術や歴史、言語学に関しては本当に初めから学ばなければならず、今から気が滅入っている。
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家庭教師についての話があってから二週間ほど経って、自分の中で家庭教師の話もなんとなく忘れかけていたのだが、今日の朝食時にいきなり、昼過ぎに家庭教師の先生が来るということを言われた。
今日は自己紹介だけということだが、両親以外の大人の人と一対一で話すことはしばらくしていない、というか今回の人生に限っては初めて、なのでソワソワと落ち着かない。
父さんも母さんもいい人だから大丈夫だ気にするな、とは言ってはいたもののメノイティオスさんの件もあり、父さんの知り合いというだけでなんとなくやばい人なのではないかという気がしている。
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昼過ぎにその先生がやってきた。
黒髪だったので少し珍しいと思ったぐらいでどこにでもいそうな人だとは思ったが、予想よりも若そうな見た目で驚いた。三十代前半ぐらいの見た目だった。
有名な先生ということだったので勝手にもっと年のいった人かと思っていた。
「やあはじめまして、アキレウス君。君のことはお父さんに色々と聞いているよ。年の割にはずいぶんと賢いらしいじゃないか。安心してくれたまえ、君が行けるところまで引き上げてあげるし、もしかすれば僕の持つ知識や技術を全て教えてあげるかもしれない。もっとも、僕のいうことを良く聞いて吸収していければだし、そこまでいった教え子は今まで一人もいない。そこまで行かずとも、多少頑張れば今までの僕の教え子のように君も英雄なんかになれるかもしれないね。」
この人もやばい人だ、俺はそう確信した。
父さんやメノイティオスさんと同じ、“そういった人”だ。
当たり前のように圧倒的な力を出すことのできる人、その力がどの分野かはわからない知識的な面かもしれないし、もちろん剣や弓などの武術かもしれない。
やっぱり父さんの知り合いはやばい人だった。
やばい人の知り合いは、やばい人っていうのは前の世界でも常識だった。
自分がこれからの日々に関してある種の恐怖を感じつつ、心のどこかに期待感を抱いていることに気づき、自分もやばい人の知り合いだったことに気づいて苦笑した。
今度文中での人物の表現をもう少し詳しくして書き直そうと思います。