現実と狂気の狭間にて
病気に対する適切な処方ですが
薬に関する表現が一切ダメという方はブラバしてください
世界には多くの陰謀がある。
そう気づいたのはいつだっただろうか?
それについて話すと決まって嫌な顔をされた
だが、それも高校に入ってからはなりを潜めた。
別に陰謀や策略がなくなったわけじゃない、ただ現実と折り合いをつけることを覚えたと言うだけだ。
昔から世界はゆがんでいた。
誰もそれに気づかなかっただけだ。
だが俺は気づいてしまった。世界は危険なのだ、俺の認識によって世界は存在している。
世界が存在師弟ことに異存はないだろう。
だが世界が確かに存在していると保証できるのは俺だけなのだ。
もし俺がいなくなれば俺にとっての世界は消滅してしまう。
その後の世界は残るのだろうか?
誰も保証してはくれない。
突然世界が遠く見える。
これは錯覚だ。
だが確かに見える世界は俺の体より遠くに見えているのだ。
俺にも分別はある、人に話すことはなかった。
だがそれが何より俺を苦しめた。
俺以外の人間はそこに存在しているのだろうか。
他人の存在すら俺が認識しなければ存在している保証はできない。
世界などそのようにあやふやなものだ。
叫びたくなることもあった。
だがそれを俺の理性が許さなかった。
もし地獄というものがあるならば今このときだったのだろう。
家族が自分の妄想上の存在、そんな恐ろしいことを考えたことがあるだろうか?
自分の存在すら揺らぐ恐ろしいものだった。
しかし成績は悪くなく大学への進学もできた、これがまずかった。
大学ではひとり暮らしで家族はいなかった。
これほど恐ろしいことがあるだろうか?
自分の存在を保証してくれるものが誰もいないのだ。
これは狂気をため込む一番の原因になった。
世界が自分の脳内にある。
当時はそれがすべてで恐怖以外に存在はしていなかった。
人を傷つけようと思ったことはない。
なぜなら人を傷つけても自分の存在の証明にはならないからだ。
自分の手をたたいたりひっかいたりはした。
痛みは確かに存在し、俺がそこにあるということを証明してくれる心地いいものだった。
夜は恐怖そのものだった。
みんなが寝付き、家族はおらず、一人で寝ていると恐怖に駆られて叫びたくなるのだった。
世界が崩壊していく様な感覚は飽きるほどに味わった。
恐怖であった、自分が永遠に取り残されていく様な感覚は言葉で言い表せたものではない。
俺は狂気と恐怖の中に一人だった。
かろうじて日常生活が送っているなかで、ある日ふと上を見上げた。
そこには黄色の看板でメンタルクリニックと書いてあった。
いってみたい気はしたが、「病気じゃない」と言われるのではないかととても恐れていた。
もしこれが病気でないのなら世界は一体何なのだろうか、ただそれだけが恐ろしかった。
しかし同時に限界でもあった。
叫びこそしないものの、夜中に飛び起きてベランダに飛び出すことも日常茶飯事だった。
もはやどうでもよかったのだ。
そうして俺はクリニックの入っているビルに入った。
診察は家族の病歴を聞かれ、妄想について聞かれた。
おそらく異常な目つきだったとは思うが後知恵だろう。
とにかく医師も異様なものを感じたのか、リスパダールの液剤を出した。
帰宅後それを飲むと不思議と恐怖感が薄れた。
それ以来薬が欠かせない生活をしている。
薬に頼るなど……などという者もいる。
だが俺はあの頃に戻るくらいなら一生薬を飲むことを選ぶ。
今でも薬を飲んでいる。
世界は存在しているし、俺がいなくても地球は回る。
今はそれが理解できるだけで十分だった。
あの頃は苦しかったなあ(遠い目
悩んでいる方が一歩踏み出す一助になれば幸いです