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俺は目を開ける。
おお、ここが異世界か…って、ん?
妙に真っ暗だ。まさかまだ転生できてなかった?
と思ったのもつかの間、すぐに視界が開けた。どうやら紙が顔についていたらしい。
俺は落ちた紙に何かが書いてあることに気づく。
そこにはこう書かれていた。
ちょっといい忘れていたことがあったのでメモに書いておきます。
あなたはこの世界ではノイと名乗ってください。
by女神
あっはい。
ということで今から俺はノイです。どうぞよろしく。
そして視線を紙から逸らす。するとそこには。
夢の世界があった…!!
少し広めの道の、右には宿屋、仕立屋、民家などなど、反対側には武具屋、道具屋、鍛冶屋などなど。
そしてその間を通る人々は俺と同じ容姿の人はもちろん、耳の長い人、角のある人、けもみみの人、緑色の人、etc…。
最高だっ!なんだよこの世界!マジヤベェ!
そしてこの世界に来て初めの一歩を踏み出す。
タンっ!
ヒャッホー!
余りの嬉しさにそのまま二歩三歩、駆け出してしまう。
いけないいけない、高校生にもなってこんなにはしゃいでると変な目で見られてしまう。すると。
「おう、そこのお嬢ちゃん、元気がいいねぇ!これ持っていきな!」
「おおっと、あ、ありがとうございます!」
果物屋の人だろうか。リンゴをひとつ貰っちゃった!なんて親切なんだ!
いやー初っぱなからラッキー…っととちょっと待てーい。
今あのおっちゃんなんつった?お嬢ちゃんって言ったか?
おいおい、俺はお嬢ちゃんなんて年じゃないし、そもそも性別は男…
ふと、建物の窓に映る自分を見る。
まず、どうみても十二、三才程にしか見えない身長。今の陽気とは正反対な凍える雪原地帯の様な白銀の髪。ちなみにショート。そしてその白銀の逆、漆黒の瞳で、半透明って言うのだろうか、透き通る様な白い肌、自分でいうのもなんだが、めっちゃ可愛い。
それはとても清楚な少女っぽい感じの俺だった。
まぁ、確かに小柄で華奢な感じとは言ったけど。
ここまでしなくても…ねぇ。
と、俺は思う。しかし、すぐに頭を切り替える。じゃあ今の俺は女?てことは?
すかさずおへその下、右足の左、左足の右、太ももと太ももの間、そこからちょい上。つまりそれの部分を触る。だが。
そこにあったのは、清楚で綺麗なお嬢ちゃんのものではなく。
選ばれし勇者ですら引き抜くことは許されない、伝説の『聖剣』だった。
身体変化ッッッッ!!
俺は反射的に能力を使い、その『聖剣』を封印した。そこには、もう…何もなかった。
今の俺の状態。
外見、美少女。
身体能力、超高い。
魔力、超高い。
最強能力持ち。
性別は…何もないので中性。
である。
うん、何とも言えない感じだ。
さて、この世界の探検を、と、そうだ、せっかくこの容姿なんだ、しゃべり方とかも合わせるか。まぁ、とりあえず敬語で、一人称は、私…いや、何か慣れない。そうだ、ボクにしよう。これなら小学校の頃使ってて多少は慣れてるし、いいんじゃね?
そうして、自分のキャラが完成した。
よっし、じゃあ異世界生活スッタート!
「これください♪」
「ありがとうございます♪」
「♪~」
片手にリンゴ、もう片方は焼き鳥を二本。可愛いお洋服。
美少女ってこんなに楽しいのか!
リンゴ貰ったし、焼き鳥買ったらおまけでもう一本つくし、洋服はさっきまで着ていた上等とは言えない服と交換してもらえた。
仕立屋のおじさんが俺の服を貰ってニヤニヤしていたのを除けば、美少女であるということは、とてもいいことなのである。
宿屋にて。
「今日は本当に楽しかったなー。さて、明日は何をしようか。あ、そうだ、冒険者ギルドなんてあったな、そこに行こっかなー」
そんなことを言いながら俺、いや、ボクは眠りについた。