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プロローグ

 

 ーー吹き付ける熱風。
 灼熱の大地。所々でポコポコと音を立て、内包する空気によって弾け飛んでは地面を焦がすマグマ。おおよそ人がいるはずもない、そんな場所に三人のプレイヤーが立っていた。
 漆黒の大剣を構えるのは筋骨隆々の男。全身を禍々しい鎧で固め、背にはもう一本、純白の輝きを放つ大剣を装備している。兜から覗く青の目は、闘志を宿しある一点を見つめていた。
 その男の横で背丈ほどある杖を構えるのは、見目麗しい整った顔立ちの女。十字の入ったローブを身に纏い、長い金髪を尖った耳にかけ、細いまゆを釣り上げ男と同じように一点を見つめていた。
 そんな彼らの背中を守るように立っているのは、一体の牡鹿。頭部から生える角はダイヤモンドのごとく煌めき、淡い光に包まれている。体皮もそれ同じく、そして、知性を宿した翡翠の目を、煮え立つ火口に向けていた。
 暑さのせいか、肌を伝う汗がポタポタと落ち、そのたびに地面からは焼けた石に水をかけたような蒸発音が上がる。

「来るぞッ!!」

 牡鹿から緊張を乗せた人の声が上がると同時に、火口のマグマが火柱を吹いた。

「グォォォォォォォオオオオ!!」

 火柱の内側から鳴る爆音。周囲に漂う熱風とマグマは、立ち上がり続ける火柱に吸い寄せられ、螺旋を描きながら徐々に火柱を成長させていく。
 そしてついには、燃えていた大地に静寂が訪れた。
 急激に冷え込む世界に、プレイヤー達はカチカチと歯を震わせる。口から漏れる息は白く、鎧が小刻みに揺れていた。
 曇った空からは火山灰に似た雪がしんしんと降り、焼け焦げていた地面を白に染め上げていく。
 先程までと打って変わった状況の中、一つだけ変わらないものが、熱を発しながら宙に浮かんでいた。
 まるで太陽を彷彿とさせる焔を這わせた球体。
 その周りだけは黒の大地を従わせ、白を溶かしていた。
 やがて、地面を黒一点に残して白で染め上げた雪は、自身の役目を終えたかのように唐突に止んだ。
 それが合図だったかのように。
 擬似太陽はドクン、ドクンと不定期に心臓のような動きを始めた。
 それに連動するように空気が波打ち、赤いオーラを含んだ余波が広がっていく。

 次の瞬間、擬似太陽が爆風とともに四散した。大地が震え、爆心地には大きなクレーター。
 飛び散る火の粉は雪の上に降り注ぎ、プレイヤー達の方に向かった火の粉は男の漆黒の大剣によって危なげなく薙ぎ払われた。

「守りたまえ・願うは主・信仰を手に・我らは祈ろう【聖なる盾(ホーリーシールド)】」

 女の凛とした声が鳴り響き、プレイヤー達の体を温かい光が覆った。
 同時に、クレーター上に舞い散る焔と緋色の熱の中で、爬虫類のように縦に伸びた瞳孔がギョロリと動く。
 熱風と蒸気を切り裂き、姿を現せたのは、ドラゴン。
 赤黒い鱗を携え、そのひと羽搏(はばた)きで村を押し倒してしまうであろう巨大な血染めの翼を大きくはためかせたドラゴンは、王者の覇気を放ち、その黄金の瞳をプレイヤー達へと向けた。

「グォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオッ!!」
「「「う、うぉぉぉぉおおおおおおおッ!!」」」

 ビリビリと鼓膜を叩く咆哮。
 負けじと声を張り上げるプレイヤー達。
 漆黒の大剣を手に、男は駆け出した。女は牡鹿に騎乗し、詠唱を始める。
 ドラゴンはそんな彼らを迎え撃とうと口を開け、地面を蹴った男が振るう大剣と自らが吐き出した炎をぶつからせた。


『新たな世界をその目に焼き付けよ』


 ドラゴンと男の激突シーンを背景に、テレビ画面に大きく映し出されたその言葉は、ゲームに疎いぼっちの少年の心を攫うには十分すぎた。

「・・・俺、このゲーム買いたい・・・」


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