25話
予算編成に決算
死にそう
微かな振動を伴う重低音は、車両をけん引する魔導車の駆動音だ。
整備班スタッフが乗り込む車両で、少女は壁に背を預け膝を抱えていた。
むさ苦しくも明るい職人たちが車内でカードに興じているのを、ただぼんやりと焦点の合わない目で眺める。
少女と整備班の男たちは不思議と気が合った。少女の物怖じしない明け透けな物言いと無邪気な笑顔が、面倒な人付き合いと愛想笑いを嫌う職人たちの目に好ましく映ったらしく。ドックに顔を出す少女を歓迎するようになるまで時間はかからなかった。
少女はエージがいない時は頻繁にドックに出入りするようになり、そして難民護送でエージと決裂して以降は完全に入り浸るようになった。
「おうちに、帰りたいな……」
自身の膝に顔を埋めた少女がぼそりと呟く。
この世界の現実を見せつけられ、知識チートやら異世界無双なんていう甘っちょろい幻想は吹き飛んでいた。
ここには自分を守ってくれる家族もいなければ、悩みを聞いてくれる友人もいない。一人でも生きられる強さが必要で、自分にはそれが無い。
帰りたい。ただそればかりが少女の頭をグルグル回る。
粗暴な雰囲気の男たちがガラにも無く気を使ってくれているのを申し訳なく思いつつ、いい加減疲れていたし、何よりひたすら車に揺られるだけの行軍に嫌気が差していた。
実際に体験してみるとわかる。
ライトノベルでは1行で示される「馬車で1週間」はそれっぽさを演出する定番表現だが、現代少年少女にとっては地獄でもある。
「嬢ちゃん、元気が無ぇな。もしかしてあの日か? はっはっはっ」
「おいテメェ、レディに何てこと言いやがる。未だに決まってんだろ。な、そうだろチビ助?」
「ビスケットは要るかバンビ? 干したフルーツがたっぷり入った高級品だ」
対して、男たちは事あるごとに少女に話を振り、食べ物を勧め、何とか笑ってもらおうと下品なジョークを飛ばす。少女は黙って首を横に振った。
それでも男たちは沈んだままの少女に対し、決して悪態をつくこともなく、反抗期の娘に戸惑う父親の様に根気強く見守る。
「難民護送以降、小鹿ちゃんはずっとあの調子だ。やっぱりエージの奴が何かやらかしやがったに違いねぇ」
「あの野郎…… ウチの小さな妖精さんに手ぇ出しやがって…… このままじゃ済まさねえぞ」
「アイディアがある。ヤツがよく乗る機体のケツに煙突みたいな推力装置をブッ刺してやろう。最大出力で光の粒子がケツから噴き出すのさ。きっと辛いものを食ったら火が出るに違いないし、そのうち一緒にクソが出てくるはずだ」
「なんて発想だ。それでいこう。お前の生え際が後退してるのはその分だけ脳に栄養が行ってるからに違いない。そうだろう?」
「待てよ。良い案だがおやっさんが言ってただろ。構想があるなら構造を示せってな」
ゴツイ男どもが頭を突き合わせてああでもないこうでもないと、機体の尻にスラスターを換装するための議論を始める
「構造的には可能だ。股関節駆動域確保のためにメインデバイスが無い部分だからな」
「耐衝撃ジェル格納部を空にしてブースターとインジェクターを直結させれば何も難しい事は無い。あとは太くて硬いのでケツを掘るだけさ」
「ちょっと待て。円筒状のスラスターは放射面積が少なすぎるんじゃないか。機体の機動性に懸念が残るぞ」
「機体性能を落としちまうなんて俺たちメカニックの仕事じゃない。度肝を抜く絵面と性能を両立させる必要がある」
男たちは年甲斐も無く、少年の様に目を輝かせながら熱く語り合う。最高にお恥ずかしい機体にエージを乗せるためだ。
しかし、かれこれ1時間近く大真面目な議論が続いているが、未だ彼らの納得いく答えは出ない。
様々な案を検討してみるが、構造上どうしても機体性能が落ちるという結論に至ってしまうからである。
そうして当初は大盛り上がりだった車内に重苦しい空気が漂ってきた時、ぼんやり男たちを眺めるだけだった少女がポツリと呟いた。
「……ロケットエンジンみたいにすればいいじゃない」
むさ苦しい男たちが一斉に少女を見る。
「設計思想がエコなのよ。魔導変換したエネルギーで推力を得るためには確かに今のアーキテクチャがベストだわ。エネルギーコントロールが容易ふぁし、アタッチメント次第で空戦も水中戦もこなせて汎用性も高いもんね」
少女は体育座りのまま、焦点の合わない視線を宙に彷徨わせている。
ボソボソと紡がれるセリフは誰かに聞かせようとしたものではなく、完全に独り言だ。ただ思ったことを口にした、そんな感じである。
しかし男たちは、突然技術的な話題に口を挟んだ少女に対し、驚きの目を向けた。
「お、おい、嬢ちゃん…… 一体何を……」
「リアクターとインジェクターを連結させて、魔導変換そのものを推力にすればいいのよ。制御がとんでもなく難しいけど……」
魔石を燃料に、魔導反応炉で魔導変換された魔素、【感応魔素】がヴァイヲンの動力源だ。
ヴァイヲンに搭載された兵装も各種デバイスも全てが、人の概念活動に反応する【感応魔素】により制御されることで、魔法を使う事の出来ない一般人が初めて鋼鉄の兵器を通じて魔法的現象を引き起こす。
いわば、リアクターはスファルを精製するために存在する装置だ。そしてヴァイヲンはスファルの存在を前提として設計されている。これがヴァイヲンを語るうえで大前提となる基礎構造なのだ。
しかし先ほどの少女の呟きは、それらヴァイヲンの基礎構造を根底から覆す発想であると同時に、ヴァイヲンの基礎理論に深い理解が無ければ出てくるはずの無いものだった。
少女は自分の世界に閉じこもるようにブツブツと呟く
「そもそも刻印魔法陣の顕現効率が悪いのよ。あれだったら直接タービン回したほうがまだマシなんだから」
そこで少女はハッと我に返った。
そして慌てて車内を見回し、整備班の男たちの驚きと疑念に満ちた視線に怯えて小さく悲鳴を上げる。
「チビ助、お前……」
「ち、違うわ! 私は……ッ」
その時、少女は唐突に足元が消失したような感覚に襲われた。
落ちていく。何も存在しない空間をどこまでも落下した先にあったのは、手も足もつかない無重力空間だ。見たことも無い文字の奔流が荒れ狂い、少女は飲み込まれもみくちゃにされる。
それはまるで津波。情報の津波だ。
「な、なによ、これ……」
少女が自身を掻き抱き、怯えるようにブルブルと体を震わせる。
少女の尋常ではない様子に気付いた整備班の男が、少女の肩を揺さぶった。
「嬢ちゃん、いきなりどうした! おい、落ち着け、聞こえてるか!?」
「ろ、ロボなのよ…… 日本に存在しないファンタジーロボットなのよ…… なのになんで……」
「ニホン? ロボ? チビ助、お前一体何を言って……」
「わ、私、なんで…… なんでこんな事がわかるのよ……ッ」
膨大な情報が脳を掻きまわす。
不思議ロボットの不思議機構が、確固たる理屈に裏打ちされた論理となって彼女の頭の中の常識を粉々に打ち砕く。
破裂しそうなほど頭が痛かった。ぐるぐると視界が回り、自分が今どこにいるかさえ見失いそうになる。
「なんでッ なんで……ッ!」
「おいチビ助! わかったから落ち着け―――」
頭の中から得体の知れない知識を追い出そうと半狂乱になる少女。
若い整備士が両手で少女の肩を掴んだ、その時だった。
『所属不明機の機動を確認! 繰り返します! 所属不明機の機動を確認ッ! 機影5! 待ち伏せですぅッ!!』
広域拡声で届けられる悲鳴染みたルールーの声。
エンジニア達は一瞬、きょとんとした後、立ち上がって顔を見合わせる。
すぐに車内は騒然となった。
「敵襲だとッ!?」
「待ち伏せ!? 冗談だろ!? ただ隠れてるだけならルールーの索敵を騙せねえはずだ!」
「完全に動力を落として待ち伏せしてやがったんだ。理論上それしか考えられない!」
「それこそ有り得ないよ! 鉄巨人が5機もあればちょっとした戦争が出来る。そんな戦力で待ち伏せするほどこの道に往来は…………まさか――ッ」
「―――ハメられたって事だ……ッ」
「砲撃音ッ! 来るぞッ!!」
――――――ドンッ
その圧倒的暴力は容赦無く車列を襲う。
着弾の衝撃が地面を伝って車輪を揺らす。瞬きする間に爆風が車体を直撃してフワリと傾いた。
外で何が起きているかわからない。認識できるのは音だけだ。
金属がひしゃげる破滅的な音。遅れて重量物が地面に叩きつけられる轟音、悲鳴とも怒号ともつかない無数の声。
『2時の方向距離2300に錬成反応増大! 魔導収束砲来ますぅッ!!』
「クソっ 最悪だ! ドンパチおっぱじめやがった!」
「死にたくなけりゃ森に逃げるぞ! 絶対に固まるな!」
そしてすぐに魔導砲の甲高い砲撃音が鳴り始める。
引っ切り無しに地面が振動し、そのたび落雷みたいな爆音が少女の鼓膜をブッ叩く。
一体何が起きているのか理解すらできなかった。
ほんの少し前まで、尻から煙突を生やす相談をしていたはずだった。それが1分も経たないうちに怒声と死臭が充満する極限状態だ。
エンジニアたちが次々と車両を飛び出して行くのを少女は呆然と眺める事しか出来ない。
「おいバンビ! お前もグズグズしてないで―――」
―――ズンッ
今度は車体が勢いよく浮き上がり、体が宙に投げ出される。
恐怖でギュッと目を瞑り、受け身も取れないままドンと床に叩きつけられる。
思いのほか少ない痛みに恐る恐る目を開けると、若いエンジニアの苦悶の顔が吐息のかかる距離にあった。彼がクッション替わりとなり、固い床にで怪我をせずにすんだらしい。
先ほどまで壁だった面が床になっており、車両は完全に横倒しになっていた。
「い、痛たた……何が起きて……」
混乱する少女とは対照的に 下敷きとなった若いエンジニアが頭をさすりながら起き上がる。
周りを見ると血を流している者もいるが、全員無事だった。
彼らは声をかけたり肩を抱えたりして何とか車外に脱出していく。そうして車内に残るは、少女と若いエンジニア、そして班長の3人となった。
「襲撃だ」
「しゅ、襲撃!? 戦うの!? 誰が!? なんでッ!」
「細かい事は後だチビ助。とにかく出るぞ。ここにいたら死ぬ」
「班長さん、血が……」
班長のバックリと割れた額からとめどなく血が溢れる。
もっとも、班長は大して気にする素振りも見せず、袖で乱暴に血を拭って、ほとんど少女を小脇に抱えるようにして車両後部ドアから外に出る。
周囲は既にむせるほどの土煙に覆われていて視界はほとんどない。
逃げるべき方向を探し周囲を見回して少女は背筋を凍らせた。自分たちが乗っていた車両は道から外れてほとんど崖から落ちそうになっていたからだ。
「団長の指示に従うぞ。レノン、お前は嬢ちゃんつれて森へ。俺は周辺の車両を確認してから行く」
少し離れた車両を粉砕した魔弾が地面に着弾。
反射的に腕をかざして爆風から顔を守る。粉塵が押し寄せ小石がバチバチと顔を叩いた。
「そんなの危ないわ! ビームが飛び交ってるのよ!」
「ビーム? とにかく言い争う時間は無い。ヴァイオン同士の戦闘に巻き込まれたら終わりだ。早く行け!」
「でも……」
「バンビちゃん行くよ! おやっさんの言う通りだ!」
班長に突き飛ばされる形で、レノンと呼ばれた若いエンジニアと少女は足をもつれさせながら森に向かう。
魔導車につれられて全て横倒しになった車両群の脇を必死に駆ける。
ロケット花火のような擦過音が絶え間なく鳴り響き、オープンチャンネルで流される操縦士の声も別世界の出来事に思えた。
大音声を浴び過ぎて鼓膜が痺れていた。手を引くレノンが必死に何かを喋っているが、ほとんど何も聞こえない。
だから、半ばレノンに引きずられるようにして走っている時、その声が聞こえたのは奇跡だった。
「足が……ッ あの男、わたくしを一人置いていくなんて……ッ」
少女はレノンの手を振りほどいて、声が聞こえた方に近づく。そこには横転した車両に足を挟まれ踠いている女の子がいた。
抜ける様な白い肌、土砂の舞う戦場においてもなおキラキラと輝く金髪。強い意志を感じさせる鮮やかなスカイブルーの瞳。痛々しいくらい華奢な体。
少女の心を言い知れぬ怒りが渦巻いた。
こんな恐ろしい場所に取り残されている同世代の女の子に、自身の理不尽な境遇を重ねてしまう程度には強い怒りを抱えていた。
「お前は独りだ」というエージの台詞を思い出して、堪えるように歯を食いしばる。
難民たちを切って捨てたエージと同じにはなりたくなかった。
「女の子! 助けないとッ!」
「ほっときなよ! 捕虜だ。いちいち助けてたら命がいくつあっても足りない!」
「捕虜だって人間じゃない! あんた達もそんな事言うのッ!?」
「他人を気にしてる余裕は無いって言ってるんだよ! 早く逃げるよッ!」
レノンが少女の手首を掴んで強引に引っ張る。
少女はその手を払って叫んだ。
「嫌よッ!」
「何考えてるんだ! 死にたいのか!?」
少女のあまりにも感情的な行動に、レノンは声を荒げる。
年若い青年の本気の怒気にビクリと震える少女。その時、レノンの目が大きく見開かれた。
「危ないッ!!」
レノンが少女を突き飛ばすように地面に倒して覆い被さる。
直後、目と鼻の先に魔弾が着弾。間欠泉の様に土砂が吹き上がり、空気が破裂。
音が、消えた。
「―――え?」
爆風に飛ばされ、宙で空と地面を交互に見ながら、ぼんやりと少女は自分は死ぬのかもしれないと思った。
そのままの勢いで地面に叩きつけられ、こげ茶色の土の上をゴロゴロと転がる。麻痺しているのか、不思議と痛みはあまり感じなかった。
なんとか起き上がると、少し離れたところでレノンがうつ伏せで倒れていて、電池の切れた人形の様にピクリとも動かない。
サーっと血の気が引く。自分のせいで彼は死んでしまったかも知れないと凄まじい恐怖に襲われたが、すぐに意識を取り戻してせき込み始めたレノンを見て、少女はホッと胸をなでおろす。
「さっきの子は……ッ!?」
飛ばされた上に何回転もしたせいか方向感覚が完全に狂っている。
何度か見回して、おそらく先ほど中学生くらいの女の子の足を挟んでいたと思われる車両を発見。
車両は至近距離の爆発で見事に破壊されていた。しかもついさっきまでそこにいたはずの女の子の姿が無い。なのに車両が特定出来た理由は、特徴的な幌がボロボロになってその場に落ちていたからだ。
文明レベルの低い木製車両と言えども、どう考えても人体の方がよほど脆い。
破壊された車両の残骸を目に、嫌な想像が頭を過る。
しかしその時、少女の目が遠ざかる人影を捉えた。足を踏み出すたびにフワリと舞う金糸は、間違いなく先ほどの女の子のものだ。
その彼女が向かう先に視線をやって、思わず少女は呻いた。
「待って…… 戻りなさいッ!」
到底届くはずの無い背中に右手を伸ばす。
名も知らぬ女の子が向かう先。そこで待ち受ける死と暴力の化身が、嗤った気がした。
「わたくしを助けに来たんですのね!? 帝国に戻ったら報奨を与えますわッ!」
『クソッタレがッ 戻れッ!』
どこまでも暗い銃口がゆっくりと金髪の女の子を捉える。
その場に立ち竦んだ女の子の背中が目に見えて震えている。
「うそよ…… そんな酷い事……」
殺される。
化け物みたいな銃で撃たれて。成す術なくあの子は殺される。
嫌だ。助けたい。こんな簡単に人が死んで良いはずが無い。
しかし、少女が願ったところで現実は何も変わりはしない。
ヴァイヲンがトリガーを引き絞る。少女は思わず目を瞑った。その時―――
『間に合えぇぇッッ!!』
雄叫びと共に見覚えのあるヴァイヲンが敵ヴァイヲンの射線上へとその身を差し出す。
そして―――
「エージぃィィッッ!!!」
―――ドカッ
体が痺れるほどの銃撃音と共に、銃口が赤く光った。
飛び込んできたヴァイヲンを守るように、空間にうっすらと浮かび上がる幾何学的な紋様に亀裂が奔る。
―――ドカッ ドカッ ドカッ ドカッ
次の1発で亀裂が拡がり、2発目で紋様が砕け散る。
3発目がヴァイヲンのフレームで火花を散らし、4発目ではエージ機が衝撃に仰け反った。
銃撃は止まらない。至近距離から冗談のように魔弾が浴びせられる。
藁を掴むように突き出されたエージ機の右腕を、敵のククリ刀が豆腐でも切るように切断する。
「やめなさいよ……」
自身でも驚くほど声は震えていた。
エージの事は嫌いだった。人を人とも思わない冷血漢だし、事あるごとに冷たく突き放された。
突然、異世界に来てしまった境遇に同情する素振りも見せず、ただ強く在るよう強要された。
無神経で下品でだらしない上、隙あらば女性の尻を目で追う変態だ。
そんな大人を好きになんてなれるはずがないではないか。
それでも―――
「お願いだから……」
それでもエージは恩人だった。
死体の海で腰を抜かすだけの少女を拾い、奴隷商に捕まり襲われかけたところを助け、そして口癖のように「売っぱらうぞ」と言いながら、いつもどこからか見守っていてくれた事を知っている。
理不尽な状況に八つ当たりした時も決して怒らず、寂し気に俯くだけだった。
「殺さないで……ッ」
ルールー機、ライラ機が既にエージを援護するため動き出していたが、少女がそれを知るはずもない。
エージ機が力無く崩れ落ちる。敵がそれを見下ろしてククリ刀を振りかぶった。
死ぬ。あと一動作。敵が武器を振り下ろすだけで。
敵ヴァイヲンが、勝ち誇ったように少女の方を向く。
口元が引き攣った。死にたくない。死んでほしくない。
少女は無意識のうちに叫んだ。
「ダメえぇ~~~~ッッ!!」
敵ヴァイヲンが武器を振り下ろさないまま跳び退る。直後、背後の地面に大穴が開いた。
ライラの砲撃を回避し、すぐに体勢を立て直した敵ヴァイオンは逃走することなく突進。
凄まじいスピードでエージ機と尻餅をついている金髪の女の子の脇を通り過ぎる。
敵の進行方向にいるのは、ヴァイヲンでも捕虜でもない。
拡声通信で、聞きなれた男の声がした。
『そいつはお前を狙ってるッ! 逃げろガキィィッ!!』
「生きてた……」
その時にはもう、敵の鉄巨人はほとんど目の前にいる。
自身に危機が迫っているにも関わらず、少女は僅かに微笑んで呟いた。
「よかった……」




