訪問
私は白緑。
この名前はあの人が付けてくれた大事なもの。
あの人は私にとって色を与えてくれた人だった。
でも、今はいない。
あの黒い大人達から私を逃がしてくれるために、命を落としたからだ。
それからは一心不乱に逃げ続けている。
寒さと飢えで死にそうだが、それでも足を止めない。
あの人が言った大切な人を見つけるために。
何日も彷徨った森を抜けた先に、街の明かりが見えた。
それを見てホッとしてしまった私は、急に脱力してしまい力が尽きそうだった。
そんな時、目の前に廃れた工場があった。
そこの一室が明るく照らされており、人がいることが分かる。
誰でもいいから、とにかく何か食べ物をもらわなければ。
最後の力で歩き出し、工場内で光が漏れている場所に着く。
中からは男の人の声がするが関係ない。
ドアノブを回して入る。
1番最初に目にしたのは、女性の生首を眺めている巨漢の背中だった。
ドアの前に突っ立っていたのだ。
「なんだ? 急に風が入ってきて寒くなったな…おい葉隠、ドア閉めろよ空いてるぞ」
「はぁ?俺は開けてなんか…」
巨漢が振り返って、そこで私を見る。
「え……お嬢ちゃん……誰?」
「お腹…空い…て……」
気力も無かった私はその場に倒れた。
お腹が空いてそれどころじゃ無いから。