怪人
私が眼を覚ますと、どこかで仰向けに寝かせられている。
ボーッとする意識の中、薄暗い部屋の中を見渡す。
そこには、世にも奇妙な怪物がいた。
1人は鉄で出来た鳥のような形のマスクをし、それにシルクハットを被ってタキシードを着た怪人。
ズタボロの布切れで作ったような覆面をした巨体の怪人。
最後は私の近く。
黄色いマスクに黒いインクでニッコリと笑顔を書かれたマスクを被った小さい怪人。
彼らは異常だったが、それ以上に朦朧とする頭で疑問に思ったことがあった。
血。
正確には彼らの服装に飛び散って付着している返り血だ。
最初は怖かったが、やがてそれは絶頂に達する。
あいつらの内、巨体が持っているものを見たからだ。
それは、チサトの顔をしたモノ。
頭だ。
「この女……不味くはないけど…なんかイマイチだな」
「失礼なこと言うな、死んでもこの美しい生首を見せてくれる彼女の死を無駄にするな」
「味がイマイチ…僕の解剖が雑だったかな?何せ2ヶ月ぶりの時間制限の無い解体ショーだったし」
「いや、単に不味いだけだ。気にすんなわ」
彼らはそう言って会話する。
中身は分かっている。
さっきの三人だ。
美形で草食系と肉食系で仲良しで金持ちでそれで…それが殺人鬼だった。
早く逃げよう。
殺されたチサトを見てまだ現状を理解できていなかった。
私は愚かだった。
体を固定されていることに気づかないなんて。
「な……なん……!」
暴れようとするがまだ覚醒しきれていないのか動かない。
と、ここで不思議に思ったのが私の今の状況だ。
「あ、起きちゃダメだよ!!」
黄色いマスクの怪人が私が起きたのに気づいて慌てる。
それに2人も気づいて私に近づいてくる。
「あちゃー、起きちゃったか」
「もうこのまま首切ろう。そうした方がいいぞ」
「だ、ダメだよ〜!これは僕が解剖するって約束だろ?そっちはあげたんだからちゃんと食べて、その生首愛でてなよ」
私を解剖する。
それを聞いて私がいる場所がようやく分かった。
手術台だ。
自分の体には白い布が掛けられており、足元を見る。
いや、胴だった。
私のお腹は開けられており、私の目で私の臓物を見てしまう。
赤黒く、それでいてリアル脈動する臓器を。
私は声を上げずに、気を失った。