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異常脳力の応酬

葉隠は白緑を抱えながら走る。

背中には既に何十発もの弾丸が撃ち込まれるが、それでも止まらずに走り続ける。


黙々と追いかけてくる連中に舌打ちして、葉隠は抱えている白緑に話しかける。


「怪我は今のところはないか!?」


「う、うん…でもおじさん、さっきから背中撃たれてるかもしれないよ…」


「撃たれている!!めっちゃ撃たれている!!」


「痛くないの?」


「涙が出るくらい痛い!!でも気にすんな!」


無理やり笑顔を作って白緑に見せる葉隠、対して白緑はその引きつった涙顔の顔に怯える。

白緑の心配も他所に葉隠はどんどん増える足音と立ち込める吸っても無害な煙に考える。


(どうしたって避難した客の波に逃げ込むのが一番安全なのは確かだ。だが…ここまで派手にやらかす連中ならそれすら想定している…!群衆に逃げ込むのは愚の骨頂、だったら別の逃走ルートを確保しなきゃいけねぇ!)


痛みよりも先に逃げることを考え、他の3人の事よりも白緑を優先させる。


走りながら白緑と一緒に前に抱えるように持っていた自身のスポーツバッグのファスナーを少しだけ開けて彼の武器に目をかける。

ビニールに入った生首の横に置いてある愛刀である肉切り包丁。

何代目かも数え忘れたが、今まで多くの人間を斬ってきた大切な凶器。


葉隠はその包丁の刃を白緑の首に入れたい。


綺麗な柔肌に入れたくてたまらない。

そしてそれを愛でたい。


生首を愛する殺人鬼はそのためだけに白緑を抱えて逃げる。

傷つけないように、自分達以外の人間が少女に傷をつけないように。


目的を再度確認、理解した上で彼の顔つきは苦悶の表情から獰猛な猛獣のように変わる。

それを間近で見ていた白緑は、彼がただ意気込んでいることしか分からない。


まずは追っ手の排除からだ。

今彼が走っているのは三階の東モール、火災が起きた西側モールのゲームセンターから反対側の場所だ。

近くには電化製品や本屋がある。

彼はまず近くの電化製品店に逃げ込む。


そこも煙が充満していたが、彼は微かに見える設置物や展示物を避けながら広い店の奥に逃げ込む。

ふと振り返ると、見える数で10人ほどの男女が追いかけてくるのがわかる。



「いくら何でも多いだろこれ!!」


あまりの追っ手の多さに驚愕する葉隠は急いで身を隠す。

彼らが身を隠したのは携帯電話の展示物が置かれた台の下だ。

息を潜めながら暗い台の下で息をひそめる。



『何処だ!』


『こちらにはいない!』


『もっとよく探せ!』


『クソ!何で電気量販店に逃げ込んだんだ!』


『ホワイトヘアーとリアリアンは出入り口見張ってろ!どうせ袋の鼠だ!!』


口々に英語で会話する彼らの声。

単語程度しか知らない葉隠と白緑はそれらを耳にしながら静かに待機する。


と、その時不穏な単語を吐く女の声を聞いた。

それは単語だけ理解すれば何なのかさっぱり分からない、さっきから飛び交うコードネームや暗号だと思える。



『ここ良いね。電気製品なら任せて、私が全部繋げるから』



何だ?

葉隠が不思議に思っていた時。


【ビロロロロロロローーー!!!】


【フンフンフーンフンフーン♫】


【ブーブーブーブーブーブー!!!】


突然台の真上に置いてあった携帯電話が一斉になり始める。


(うぉ!?)


(ーーー!!!)


大音響で鳴るそれに耳を塞ぎ静かに耐える二人。

葉隠はそれで次の言葉を聞けなかった。


『あぁぁぁぁー!耳が痛い痛い!!相手が鼓膜を痛めてる!!しかもこの痛みからして音の発信源からすぐ近くだ』


『音はあたしが操ってるからみんなには聞こえないはずだし…あたしらのすぐ近くってことか?』


『何処か展示物の下…に隠れてるなこれ。一個一個探すのは面倒だ』


『おうよ、だったら俺の出番か』


耳を塞ぎながら葉隠は目の前にある机にかけてあるテーブルクロスの布が捲れるのを見た。

何かマズイ!

彼は耳から手を離して急いで白緑を抱えて台の下から出る。


その直後、彼らが飛び出た台は吹き飛び、台や設置物、大音量で鳴っている携帯が宙を舞う。

ここだけではない、葉隠が振り返って見た時にはいくつもの展示物が吹き飛んでいた。


葉隠たちも例外ではない。

飛び出て少し駆けた後葉隠の足は宙を浮き、そのまま前方へと宙に浮きながら吹き飛ばされてしまう。彼は白緑を庇うように抱きしめ、そのまま奥にある薄型テレビの展示物に体当たりをして止まる。


口から不必要な血が溢れる。

衝撃は殺しきれず、白緑がそのショックで気を失ってしまう。


何が起きたのか理解できない。

まだある意識。

耳はキーンと響くだけで何も聞こえない。

揺らぐ視線の先では数十人の男女がゆらゆら走ってくる。

視線が定まらない。

まずい、早くしなければ。


彼はそう思って白緑を……。


「……まてよ?」


ふと、その場で横たわる少女を置いて彼はスポーツバッグの方に手を伸ばす。

そこから、殺人で使う道具を迷いなく引き出して持つと、すぐさま追ってから見て右に走り出した。


白緑を置いて。

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