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本当にほんとう

大切な人。

白緑はその単語を言った男に目を開きその顔をマジマジと見続ける。


「あなた…あなた達が大切な人? でも私にはよく分からない…本当にそうなの?」


「え、えーと……」


そう問われてたじろぐ葛原。

もちろん嘘だ。

大切な人は、人を食べたり解剖したり首を取ったりしないから。

しかし、この場を切り抜けるにはこの手しかない。

ちょうどたどり着いた黒田と葉隠の2人が、葛原の言葉にポカンとしていた。


「え、大切な人?」


「なに……何なのマジで?」


まずい。

もし事情がよくわかってなくて2人が余計なことを言えば最後、白緑が信頼しなくなるかもしれない。

葛原は早急に、口から出まかせをかましてみた。


「も、もしお前があの銃持った連中から狙われてるなら、俺たちがお前をそいつらから守ってやるってんだ。そうすれば俺たちはお前にとって大切な人になるだろ?」


「…そう言うものなのかな?」


「う、うん。そうだわ……多分」


「おい、なんだその会話」


とにかく納得できるように最後まで会話してみたところで葉隠が横から入り込んできた。

葛原は2人に向けて喋るなとジェスチャーを送り、白緑の方を指差す。

2人は白緑が悩んでいるのをみて察したのか、コクンと頷くと言葉を選んで喋り出す。


「お嬢ちゃん、ひとつ言っておくけど」


「…ん、おじさんどうしたの?」


「あの部屋にあった死体は作り物だからね」


「え?」


グキリ。

白緑が疑問を抱く寸前、すかさず葛原が葉隠の顔面に握り拳を叩き込む。

巨体はその衝撃に耐え、倒れずに後ろに数歩下がり込んだ。


「ってぇな!何すんだお前ェ!!」


「今きて少し聞いただけでもそんな会話じゃねーだろこれ!!」


「あぁん!?大切なものがどうとかって食人のことじゃねーのかよ!!」


「言うな馬鹿野郎!」


赤く腫れた鼻を押さえた葉隠。

どうやら何か勘違いしていたようで今の言葉を言ったようだった。

葛原はハラハラしながら白緑を見る。

対して白緑は普通に葉隠が言ったことを信じていた。


「作り物だったんだあれ…」


「そ、そうなんだわ。俺たちってこう見えて芸術家だから無から有のグロオブジェとか作るの得意なんだわ」


「へぇ、すごいんだねおじさんたち」


なぜかそう言って納得する白緑。

それに少し違和感を持つ。

子供だからと騙せたと思う葛原だが、自分が子供だったら本物だとずっと信じてしまいそうなものだと思う。

それに先ほどからも白緑がソレについて一切言及しない。


(変なガキだな)


この時はそんな感想で締めくくり、特に深読みすることもなかった。

葛原は白緑に言った。


「俺たちは全国を旅しているが、これも何かの縁だ。お前が言う大切な人としてできる限りの事はするぜ」


「…うん、分かった」


「よっしゃ、そんじゃ」


そう言って小指を出す葛原。

だが白緑はそれを不思議そうに見ていた。


「何それ?」


「約束をする際のおまじないだよ。こうやってお互いに小指を絡めて…」


葛原は白緑の細い小指を無理やり絡ませる。

と、横から見ていた黒田と葉隠も同じように小指を出してきた。


「僕も混ぜてよ」


「事情はこれで分かったから、俺もやらせろ…」


2人は葛原と白緑に自身の小指を絡ませた。

葛原は、この嘘の約束に付き合ってくれる解剖魔と生首マニアに心から良い奴らだと思いつつ始める。


「そんじゃ、ゆーびきーりげんまーん、ウソついたら針千本のーます、指切った!」


「ゆ、ゆびきり…?えーと…指切った!」


「怖いなぁ」


男3人で指切りのげんまんのいつも通りの唄を歌い。それに遅れながら白緑も歌い切る。

絡めていた指を離し、3人は笑う。

もちろん安堵の笑みで。

白緑はそれも知らずに一緒に笑い出した。

初めて笑う顔を見た葛原は、安心するのと同時に早く食べたいと。

黒田は解剖したいと。

葉隠はその笑顔のまま首を切りたいと。

多様な想いが真夜中のコンビニの駐車場で起きたが、それでもこの笑みは嘘ではなかった。

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