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SS:みさきと結衣


 ゆいと結衣。

 みさきと龍誠。


 あれ以来、四人は定期的に集まるようになった。


 集まるといっても、特に何かをするわけではない。

 ゆいとみさきが毎週のように遊ぶから、それに保護者として二人が付き合っているといった形だ。


 ゆいとみさきは仲直りしたことで、前よりもっと仲良しになったらしい。


 今日は、龍誠の部屋に集まっていた。

 ゆいとみさきは暫く遊んでいたが、やがて飽きて、ソファでテレビを見ていた親達の膝に乗った。


 そのまま談笑しながら歴史ドキュメンタリー番組を見ていたのだが、ゆいは途中で飽きてしまった。


 その後、ゆいが珍しく外で遊ぼうと言い出したけれど、みさきと結衣はテレビに夢中。


 仕方なく、龍誠が付き添う形になった。

 こうして二人になった結衣とみさき。


 暫くはテレビを見ていたが、やがて番組が終わると、なんだか手持ち無沙汰になった。


 結衣は少しだけみさきが苦手だ。

 みさきはゆいと比べて感情表現が乏しい。怒っているか喜んでいるかは色で分かるけれど、それがあまりにも表情と一致しないから、時々不安になる。


 ……良い子なのは分かっているのですが。


 物分かりが良くて、とても素直。

 だが、あまりにも大人しい。


「とても興味深い番組でしたね」

「……ん」


 試しに声をかけてみても、この通りだ。

 これがゆいであれば、嬉しそうに話を始めるはずである。


 みさきは対照的に静かで、結衣は少し居心地が悪いというか、やりにくい。


 一方でみさきは、ちょっと考え事をしていた。


 あの日、結衣が来てからりょーくんは元気になった。だからみさきはお礼が言いたい。


 でも、なんだか気恥ずかしいというか、少し怖い。

 りょーくんならいつもニコニコして話しかけてくれるけど、結衣はあまり声をかけないし、そんなにニコニコしていない。


 みさきは迷った。

 迷って、迷った。


 果たして、ぴょんとソファから降りて、立ち上がった。


「みさき、どうかしましたか?」


 直ぐに結衣から声をかけられる。

 みさきは口を一の字にして、結衣の顔をじーっと見た。


 ……どうしたのでしょう?


 結衣は心の中で首を傾ける。

 みさきの色は、何かを決意したけれど、ギリギリになって躊躇しているような人に見られる色だ。


 結衣は少し考えて、お手洗いかな? と思った。

 そして結衣が声をかけようとした瞬間、みさきは背を向けて、ぴょんと結衣の膝に飛び乗った。


「みさき?」


 驚く結衣。

 みさきはギュッと体を緊張させる。


 やがて、とてんと倒れるようにして結衣に体重を預けた。


 それから顔を上に向けて、じーっと逆さ向きに結衣を見つめた。


 これがみさきの精一杯のありがとうだ。

 それを受けて結衣は、感じたことの無いような高揚感を覚えた。


 ……これは、甘えているのでしょうか?


 かわいい。

 とてもかわいい。


「みさきは、猫の様な子供ですね」

「……ねこ?」

「はい、猫さんです。にゃー」

「……にゃー」


 結衣のマネをして鳴き声をあげたみさき。

 結衣はブルりと身を震わせて、衝動的にみさきの顎を撫でた。


 みさきは気持ち良さそうに目を細める。

 その姿があまりにも愛くるしくて、それから龍誠達が帰ってくるまでの間、結衣はみさきのことを撫で続けていたのだった。

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