集合時間、全員集合!!
「おーい!そこの嬢ちゃん」
「兄ちゃんです。」
りんご売りのおじさんに間違えられるも、怒りながらに即答し先を急ぐ姿は
とても勇者(補助)に見えない。
「貴様がライか…五分前とは律儀だな」
「他の人達は来ておりますか?」
「まだだ…貴様には先に武器を渡しておこう。少し待っていろ」
王国騎士の貴様、と言う声を二回も聞きライは顔を少ししかめた。
魔法はこの世界に来てから熱心に人目につかないところで練習したのだ。
お前なんか丸焼きだぞ、と脅そうとするも、こちらでは
魔法が使える、というのは人族じゃないことを表し、イコールスパイと言う式が成り立っている。
「これが新しい武器だ。古いのは私が預かっておくぞ」
布に巻かれた双剣を受け取り、元々持っていた双剣を騎士に預けた。
新しい双剣はとても綺麗だ。黄色がベースでペンタスの花が彫ってある。
「…」
「ライ、お仲間だ。彼はカゲ。幻惑と水の教会から来た。」
「よろしく!」
「…」
新しく城に入ってきた少年は、終始一言も喋らなかった。
なんだ此奴、という視線をライが送るのだが、無反応。
黒髪黒目…この世界では少し珍しい。
彼の左目は前髪で見えなかったが、右目はつり目で三白眼の様だ。
「新しい武器だ。」
「……ありがとう、ございます…」
ボソッと言いながらカゲが受け取ったのは弓矢だった。
片目で上手く打てるのか、と聞こうと口を開いたライだが、答えてくれないだろうと口を閉じた。
「とーちゃっく!」
「やった、ぴったし〜」
気まずい空気を跳ね飛ばすように、仲間と思われる少年2人が入ってくる。
「武術と炎の教会から、テトラ…操作と草の教会からエンマ…おっと、テトラ。君には隊長を任せよう」
騎士がサラッとテトラを隊長にすると、テトラはあり得ないとでも言いたげな顔をした。
そんな彼を余所目に、騎士は武器を取りに行って来る、と言い奥へ行ってしまった。
「その反応からすると、君がテトラかなぁ〜?」
ライはにやけながら、茶化すように話しかける。
テトラは爽やか少年なのかチャラ男なのかわからない。
髪も目も黄色く、目元は猫目みたいだ。しかし、容姿以外は頼りになるお兄ちゃん、といったところ。
「あぁ、そうだよ。」
「となると、こっちがエンマかな…っ!?」
今までエンマに背を向けていたライは、彼の声は聞いていたが、容姿は見ていなかった。
身長が…
「…君身長何センチだい?」
「オイラは百八十八センチ」
「…アッソウデスカ」
あり得ないあり得ない、とライは心の中で唱えていた。
カゲもテトラも、百六十五〜百七十五程度だったのだ。しかし、いきなり百八十代。
君は何センチ?と清々しい笑顔で笑うエンマに、ライは軽く恐怖を感じた。
「確かにお前ちっちゃいなー」
テトラはここぞとばかりに先ほどの仕返しを始めた。
ライは少し怒りながらも、自己紹介をしよう、と持ちかけた。
「俺は武術と炎の教会から来た、テトラだ!武器はいろいろ!」
「…水……カゲ……弓」
「オイラは操作と草の教会から来た、エンマ!武器は来てからの楽しみで!
百八十八センチです!!」
百八十八センチ、という部分だけ強調した彼は、少しニヤニヤとライをみた。
「…僕は地方教会から来た、勇者補助のライです。武器は双剣…
百五十四センチです!」
諦めと怒りを含ませたその言葉を聞き、テトラとエンマはゲラゲラと笑った。
背ひっく!ちゃんと食えなどの言葉を帯びせられたライは、最高にご立腹だった様だ。
「武器。持ってきたぞ」
「ありがとうございます!」
綺麗にハモって二人は自分の武器を受け取った。
エンマの武器は剣や槍、盾などをもった人形、テトラは槍だ。
「…人形?」
「そうさ。糸を操れば簡単に自由自在に操れる、死人もね。」
「変な武器。」
「操作と草の神子様に育ったんだから、操作することが上手くなるんだよ!」
死人も操れる、という言葉を聞いて少し強張ったライだったが、彼の明るい空気に流された。
そのあと、騎士から魔族の弱点などの説明をされたが…正直言ってライにはどうでもよかったので、聞いてない。
「_______といことだ。わかったな。」
「はい!」
「今日はもう遅い。明日から旅に出てもらおう…部屋を貸す、ゆっくり休め」
テトラに鍵を渡すと、騎士は奥の方へ消えた。
「部屋に向かおうか。」
「そうだね!」
「オイラ疲れた〜」
口数少ないカゲに不安を抱きながら、ライは部屋へ向かった。