後日談 そして物語は生まれ変わる
むかし、むかし、あるところに浦島太郎という心優しい漁師が住んでいました。
(最初の亀襲撃の部分は、やっぱり書けないから割愛ね)
ある日のことです。浜辺を歩いていると一匹の亀が子供達にいじめられているのを見ました。そこで浦島太郎は亀を助けてやりました。
(亀の洗脳とか書くと愛護団体が騒ぐわよねぇ、ここはそのままね)
数日過ぎたある日、いつものように釣りをしていると亀が海から出てきました。
「浦島太郎さん、僕はこの間あなたから助けられた亀です。お姫様があなたを竜宮城にお礼にお連れしなさいというのでお迎えに参りました」
浦島太郎は早速亀の甲羅に乗ると海の中に入っていきました。竜宮城は珊瑚に囲まれ、魚が泳ぐ、それはそれは美しいお城でした。お姫様はそれはそれは美しいお方でした。
「浦島太郎さん、どうぞ楽しんでいって下さい」
浦島太郎は時間の経つのも忘れて楽しみました。まるで夢のような毎日でした。
(案外ここまでは流れが変わってないのよね。さて、改変するならここからかしら)
数日が過ぎ、浦島太郎は乙姫に村の風景を見せてやりたいと思い立ちました。
でも、乙姫は村に行くのが怖いと言って聞きません。浦島太郎がどうしてもと言うので、お姫様は一つだけ約束をさせました。小さな箱を持ってきて、こう言うのです。
「浦島太郎さん、もし困ったことになったら、この箱を開けますからね」
浦島太郎は乙姫と一緒に亀に乗って村に帰りました。いつの間にか随分な時間が経ち、村はまったく変わっていました。竜宮城での楽しいひと時のうちに、時代はあっという間に過ぎたのです。ただ一軒、浦島の家だけはそのままでした。
「浦島太郎さんがいなくなって、老いて死んでしまったみんなも心配していたよ。戻ってきてくれて良かったよ」
浦島太郎の知り合いはいなくなっていました。でも、親切な村人たちと乙姫がいるから、浦島太郎は寂しくありませんでした。
浦島太郎は乙姫と仲睦まじく過ごして、ふと小箱のことを思い出しました。
「あの小箱は何だったんだい?」
「あれは玉手箱、開ければ老いる魔法の小箱です。もしも地上がつらいことばかりなら、早く老人になってこの世から去ろうと思っていました。
でも、そんな必要はなかったんです。だってあなたとの暮らしは幸せそのものですから」
浦島太郎と乙姫はいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし
(こんなところかしら。彼が切り拓いた物語は激しすぎたけれど、望んだのはこんな小さな幸せの結末。この天啓を編集者に授けるとしましょう。
良い物語をありがとう。いつかまた物語に困ったら、またあなたを頼ると思うわ。それまでは少しの間、さようなら)
了