短編兼キャラ案 アカヤ ミドリ サクラ ムツキ
メモ用
2人目
「ほい」
「なにこれ?」
「なんか、機関が発明した超使えるタリスマンだってさ。アイシャにも渡したんだけど……結局は帰ってこなかったから、期待できないけど……」
「ふぅん。例の前任者も持って行ったの? まぁ使えるものなら受け取っとくけどね」
「まぁ、その、なんだろう。頑張って帰ってきてくれよ。また1人ってのは嫌だからな」
「任せなさいよ。ちゃちゃっと片付けて速攻で帰ってきてやるから」
「そんな簡単にいくかよ。それと……ごめんな、力を貸せなくて」
「はぁ、あんたが謝る事ないわよ。こっちこそ罪悪感を煽ったなら謝るわ」
逆に、気を遣わせてしまった。
「まぁ、私は帰ってくるから。あんたはしゃんとして待っとけばいいのよ」
颯爽と翻る彼女のマント。赤い炎髪とあいまって、頼もしく見えた。
27人目
「何ですか……これ」
「これか? これはな、討伐に向かうやつに持ってってもらう事にしてるんだ。機関が作ったタリスマンだ。強力なものだから、きっと役に立つと思う」
「そう……ですか」
「なんだ? 不満そうだな」
「いえ、別にそんな事は」
「ほらいくぞぉ」
「へ?」
「よっ」
「え、ちょっとまってってってってぇい!」
おぉ。ギリで取りやがった。成長したな。
「お前、鈍さは相変わらずだな。そんなんで生き残れんのか?」
「あなたに心配されたくないです。このお怠け教官」
「ふん。そんな教官でも仕事はきっちりこなしてんのさ。証明としてここに今お前がいるんだからな」
「ぐ、ぐぅ」
「はははは。最期くらい、口喧嘩で勝って欲しかったなぁ」
「最期って……」
「あぁ、誤解すんな。俺の指導の最後って意味だ。お前はこの戦いで生き残っても、もう俺が教える事にはならねぇからな」
「そ、そうですか。それはそれで、さみしい気もしますね」
あからさまに落ち込んでんじゃねえか。
「まぁ先ずは生き残る事を考えろよ。生きて帰ってくれれば、俺の方から会いに行くさ」
56人目
「ありがとぉー!」
「はぁ、大袈裟だな。そんな喜ぶもんでもないだろうが」
「嬉しいよ! 君から貰ったものならなんでも。しかも今日は討伐への餞別でしょ? これってあれでしょ? 生き残ってくれ、サクラ、きらん。みたいなやつでしょ?」
「お、おう。まぁ似たようなもんだ」
なんだよ、きらんって……。
「じゃあ帰ってきたらまずは結婚でしょ? 新婚旅行をした後はー、えっとね………君と一緒ならなんでもいいかな」
「そうかよ。じゃあたのしみにしとくよ」
「なんで棒読みなのよぉ。辛いなぁ、悲しいなぁ、今から戦いに行くのになぁ」
顔を隠している手の、指の間からの目線がチラチラとうざったい。それなら片目瞑ってても見えるだろうが。
「なんだよ、これでも心配してるし、無事を祈ってんだよ」
「もぉ、ダーリン。そんなことわかってるに決まってるじゃない! 」
きゃぴきゃぴ言いながら背中をばっしんばっしん叩かれる。
でもこいつ、これで平常運転なんだよなぁ。……うぜぇ。
「あぁ! 今うぜえって思ったでしょ?」
「思ってない」
少しの間沈黙。
「まぁいいけどね〜。貴方が私の事好きなのはまぎれもない事実だしー。 あ、それと。私のいない間は、浮気しちゃダメだぞ☆」
……うぜぇ。
「はいはい、分かったから。……出来れば、無事で帰って来いよ」
後半はサクラの目を見つめて、真面目に言った。
「うん! まぁ無事っていうのは無理だけど、きっと帰ってくるからね!」
72人目。
「なんでこんなことに、なったんだろうね」
「さぁな」
俺は愛剣を片手に持っていた。
「私があなたに話したから?それとももっと他の原因?」
「……さぁな」
ムツキは俺に倒れかかるように体重を預けていた。
「こんなあなた、初めてみたよ。いつもみたいに笑ってよ」
「っ。無理だな。もうお前に対して、そういう態度はとれねえ」
預けられた体重を受け止めて、俺は彼女を左手で抱いていた。
「なんで? 」
「お前が知ってしまったからだ」
「そっか。あーぁ。あんなもの見つけるんじゃなかったなぁ。ねぇ?じゃあ私に言ってくれた事って全部演技だったの? 私に討伐にいかせる為だけの?」
「……信じてくれるなんて思わないが、お前への言動に、嘘偽りは一つとしてない」
右手の愛剣は彼女を貫いていた。
「そう……ならいいよ」
なぜそこで納得できるんだ。
「私、幸せだったもの。ずっと側にいられて幸せだったの」
「それは作られた感情だ。お前のものじゃない」
「そんなの関係ない。私があなたを好きだってこと以外、何もいらない」
「………」
俺の腕の中で、彼女が顔を上げた。
「これから貴方は同じ事を繰り返していくんでしょ? なら、後の事は後輩に任せるから。私は気づくのが遅かったみたい……。後輩達には悪いけど、ちょっとズルいけど、私は幸せに包まれて、好きな人に抱かれたままで死んじゃいます。きっと、気づいてくれる人がいるから。それまで頑張ってくださいね」
一瞬だった。何の前触れもなく、彼女が腕の中でかき消えた。何の痕跡も残さず、この世から否定されたように。
これが俺の初めての、彼女達の終わりを知った瞬間だった。