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魔界戦記譚-Demi's Saga-  作者: 九傷
第1章 レイフの森
32/282

第31話 作戦会議

改稿済みです。




 ――――ソクの家




 ソクの家を、臨時の作戦会議室とし、戦闘に参加するメンバーが集まっている。

 主なメンバーはゾノやゲツといったゴブリン族の若者、同じくオーク族の若者、そしてトロール達である。

 今回、魔王の目的が集落の制圧というよりも俺達との戦闘にあることから、非戦闘員である者達には元オークの集落に避難してもらっている。



「大体30人くらいか……。まあ、人数が多ければどうにかなるってこともないだろうから、妥当な所だろうな……」



「あの、トーヤ殿……、魔王様との戦いは、どうしても避けられないのでしょうか?」



「……あの感じだと無理だと思う。あれは、多分自分が楽しみたいだけだろうから……。俺達がゴウを倒したという事実がある以上、この戦いは避けられない。無抵抗でもあっちの感情を逆なでするだけだろうし、逃げ切るのもまあ無理だろう……」



 ゴウを倒したことが、結果的に魔王から目を付けられることになってしまった。

 しかし、あの時点で俺達にはゴウを倒さない選択肢は無かったため、この結果は必然だったと言っていいだろう。


 正直逃げだしたいところだが、単騎で追ってくる魔王相手に、集団である俺達が逃げ切れるとは考え辛い。

 仮に逃げ切れたとしても、魔王が本気であれば今度は軍が動くはず。

 そうなっては、正直どうにもならない。

 どうせ戦うことが確定なのであれば、魔王一人を相手に抗った方がまだマシだろう。



「迎え撃つしかない、か。しかしトーヤよ、魔王相手にどうにかできるものなのか?」



「それは俺が聞きたいよ。俺は魔王がどんな強さなのか、正直想像もついていないんだ。誰か。詳しい人いないか?」



 全員を見渡す。

 オークやゴブリン達は、あの状況でも誰一人として魔王に気づいていなかった。

 魔王に対する知識に関しては、あまり期待できないかもしれない。

 しかし、アレが魔王だと認識できなかっただけで、魔王自体の噂くらいは聞いている可能性はある。



「ライは魔王と面識があったみたいだけど、何か知らないか?」



「面識といっても、昔父さんに連れられて一度会っただけなんだけどね。父さんは親しそうに話していたけど……」



「そうか……」



「でも、噂くらいは聞いているよ。曰く、魔王は無限の魔力を持つとか、数百年前に国を単騎で攻め落とした、とかね」



 おいおい……

 それが本当なら、こんな集落でどうにかなるレベルじゃないんだが……



「ライの言っていることは、俺達トロールにも伝わっているぞ。言い伝えでは、かつて災厄と言われた三頭のトロールを葬ったのも、今の魔王と同一人物らしい」



 ガウが補足する。

 他のトロール達も同じように頷いている。



「私も聞いたことがある。国を攻め落とした際、魔王は一切の傷を負わなかったのだとか。矢の雨降りしなか、鼻歌交じりに闊歩する~みたいな詩を吟遊詩人が歌っていたのを覚えている」



 吟遊詩人ねぇ……。やっぱりあるんだなそういう職業。

 それはいいとして、ジュラの聞いた歌の内容について、気になる部分はあった。

 傷も負わず、矢も受けずって、それはつまり……



「『剛体』……ってことかな?」



「私はそう解釈できるでしょうね。無限の魔力だなんて正直信じられないけど……、そんな逸話があるくらいだから、常時使っていると思って間違いないでしょう」



 それって、お手上げなんじゃ……

 『剛体』の頑強さは、ここ数日のイオ達との稽古で嫌という程味わっていた。


 『剛体』は、魔力を全身から放出するようにし、皮膚の周りに薄い被膜のようなものを形成する。

 この被膜は穏やかな水面のようになっており、その状態を常に保とうとする性質がある。

 その性質こそが、『剛体』の生み出す反発力の正体だ。

 つまり、その表面を乱す攻撃が強ければ強い程、反発力も強くなるワケで、当然魔力の消費も多くなるのだが……



「もし本当に無限の魔力を持っているのだとしたら、剛体を抜くのはほぼ不可能だな……」



 デイが呟く。

 実際、その通りだから困ったものだ……


 剛体を正攻法で破る場合、相手の魔力貯蔵量を超えるだけの攻撃力が必要となる。

 しかし、トロール同士の攻防でも破れないことを考えると、それは至難の業と言えるだろう。

 俺のような華奢な肉体でも、ゴウの攻撃を防げたという事例があるしな……


 ……ん? あれ、でもそういえば、さっきライは剛体の上からダメージを与えていたような……



「ライ、今日の稽古で、剛体の上から傷を与えていたよな?」



「ああ……、まあ確かに、あれなら確かに多少の傷は与えられるかもしれないね。でも、はっきり言って致命傷は与えられないと思うよ。正直、小細工の類だし……」



「そうだ、先程は聞きそびれたが、あれはどういったカラクリだ?」



 ガウも思い出したようだ。

 先程の稽古の際、ライは数撃程、ガウにダメージを与えていた。

 致命傷には至らないものの、稽古の中でダメージを与えたこと自体初めてのことであった。



「あれは当て方にちょっとしたコツがあるんだ。でも、喰らったガウならわかると思うけど、大した効果は期待できないよ」



「……いや、ライよ、獣人にはトロールのような再生能力は無いはず。魔王とはいえ、獣人である以上それは変わらないはずだ。ならば多少の傷でも確実に蓄積はされるハズ……」



 成程……、ダメージの蓄積か……

 問題はその蓄積の効果が表れるほど、俺達が耐えられるかだが……

 いや、他にダメージを与える方法が無ければ、それに賭けるしかないか……



「よし、ライはさっきの技について詳しく教えてくれ。それから、ゾノ達は今から言うものの準備を頼む。無駄かもしれないけど、いくつか試したいことが有る」



「わかった」



 こうなったら、やれることを可能な限り試していくしかない……

 ようやく少し魔界に馴染めたと思ったのに、こんな所で死ぬのはご免である。


 ……とはいえ、魔王相手に一矢報いるなんて、本当にできるのだろうか?

 もしこれがゲームか何かであれば、序盤でいきなり魔王戦ということになるのだから、クソゲーもいいところである。


 こんな事を考えても仕方ないのだが、少しくらい現実逃避したっていいだろう……




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