表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔界戦記譚-Demi's Saga-  作者: 九傷
第1章 レイフの森
3/282

第3話 ライとの共同生活(前)



 ライとの共同生活は、何もかもが凄く新鮮であり、正直かなり楽しいと言えるものであった。

 釣りをしたり、狩りをしたり、山菜を採ったりと、完全にサバイバルな生活なのだが、不思議と苦には感じていない。

 そういった不自由さよりも、刺激や好奇心が上回っているあたり、アウトドア感覚ってやつなのだろうか。

 こういった事に新鮮味を感じるということは、やはり自分は文明人だった可能性が高いな……



「あ、引いてるよ、トーヤ」



「おっと!」



 本日2匹目の獲物だ。川なのに大型魚が目立つのは、やはりここが魔界だからだろうか?

 いや、地球でも熱帯の方だと普通に大型魚が多いかもしれないが……



「2人合わせて4匹。このくらいで引き揚げようか」



「そうだな」



 はっきり言って、食うものには全く困っていない。

 今日の釣果だけ見ても、大型魚4匹なんて二人分の食料にしては多すぎるくらいだ。

 まあ、基本的に日持ちしないので、二日程で平らげてしまうけどね。

 保存に関しては、熱をコントロールする魔法が使えれば、少しは保存期間を延ばせるらしいのだが、ライは使用できないそうだ。



「練習すれば、トーヤは使えるかもしれないよ?」



「え、そもそも魔法自体使えるとは思わないんですが」



 さも簡単にライは言ってくれるが、こちとらそんなファンタジーな世界に住んでいたわけでは無い……筈。

 少なくとも、俺の知識には日常生活で魔法を常用するような世界観は存在していない。



「いやいや、今も自然に使ってるじゃない?」



「え?」



 どういう事だろう? 俺には全く自覚が無いのだが……


 ライの説明によると、この魔界には魔法……のようなものが当たり前に存在している。

 それも、一部の才能ある者が使えるといった類ではなく、全ての種族が当たり前に出来るものとして存在しているのである。

 はっきり言って、俺は最初、それを全く信じなかった。

 いやだって、流石にファンタジー過ぎるじゃないか……

 しかしまあ、実際に見せられては信じざるを得なかったのだが。


 で、その魔法を俺が使っているって?

 にわかには信じられないが、ライが嘘を言っているようにも見えないな……

 という事は、無自覚に何か使用しているのか?

 ……まさか、やはり魔界の空気は汚染されており、俺は無意識に空気清浄的な事をしているとか?

 やはりこの空の色を見ると、どうしてもそんな事を考えてしまう。

 ライが言うには、薬物などで空気が汚染されているからでは無いらしいが、何故こんな色をしているのかまでは知らないらしい。

 まあ、そもそもライにとってはこのピンク色の空こそが、生まれた時から知る空の色なのだし、疑問を抱くことなんて無かったのだろうが……


 しかし、空気清浄じゃないとしたら、一体俺はどんな魔法を使っているのだろう?



「……ごめん、わからない。俺、無自覚になんかやってる?」



「ああ、気づいていなかったのか。……トーヤ、僕の唇を見て」



「えっ!?」



 ま、待ってくれ! 俺にはそっちの趣味は……



「いやいや、何を顔を赤くしてるのさ。いいから、僕の唇の動きをよく見てよ」



 いやいや、赤くなっても仕方ないだろ?

 ライは女性と見紛うような美形なのである。正直、耐性のない俺は直視するだけでもドキドキするくらいなのだ。

 ……いや、俺はノーマルですよ?

 でも、それでも、ねぇ……?



「……ってあれ? もしかして、俺が聞いている内容と、ライの口の動きが合っていない?」



「そういう事。要するにトーヤが扱っている言葉と、僕の扱っている言葉は異なっているんだよ。それを補足しているのが、今僕らが使用している魔法だね」



 まさか、そんな事があろうとは……

 しかし、翻訳しているにしては全くタイムラグが無い気がするが……



「……疑問は残るが、言葉を理解できるって事はそういう事なのか。……でも、俺は使用しているなんて意識は全くないけど?」



「それはそうだよ。僕だって意識して使っているわけじゃないしね。これは、どの種族も使用できる共通魔法の一つで、ほとんどの場合、産まれて1~2年で自然に使えるようになるものなんだ。精霊が勝手にやってくれるんで、意識的に魔力を使うわけじゃないんだけどね」



 成程、そういうケースもあるのか……


 魔法については、以前ライから簡単に説明を受けたことがある。

 どうやら魔法には二種類の系統が存在しているらしい。


 一つは、無数に存在する外の精霊に呼びかけ、その力を借りることで効果を発揮する外精法と呼ばれるものだ。

 火を起こしたり、水を操ったりと、まさに魔法のような現象を引き起こすことが出来るのが、こちらのタイプである。

 精霊に呼びかけ、操作したい事象を決定し、その意思を伝える、だったかな?


 そしてもう1つは、自身に宿る精霊の力を行使する内精法と呼ばれるものだ。

 なんでも、ほぼ全ての生物には精霊が宿っているらしい。

 自身の精霊は肉体と同化しており、その精霊に働きかけることで、優れた身体能力を発揮できるそうだ。



「という事はアレだ。この前の説明にあった、内部精霊の力を無意識に使用して、ライの伝えている内容を翻訳しているのか」



「その通り。より正確に言うと、言葉を発する際に、精霊が同時に意思を伝えているみたいだよ。それを受け取った精霊が、理解できるよう翻訳して宿主に伝えている、って事らしい」



 成程。だからタイムラグがほとんど無いのか。

 それにしても、これは便利だな……


 どうやら、この世界には言葉の壁なんてものは存在していないようだ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ