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魔界戦記譚-Demi's Saga-  作者: 九傷
第5章 魔族侵攻
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第256話 ザジ大将軍



予想した通り、東軍は西軍へ合流すべく動き始めた。

俺達はそれを追う動きをみせつつも深追いはせず、そのまま西の亜人軍へと合流を果たす。



「トーヤ様!」



合流した直後、真っ先にこちらに駆けて来たアンナは、飛びつくように俺に抱き付いてきた。



「アンナ、良くやってくれた。アンナのお陰で大きな被害を出さなくて済んだよ」



甲牙隊を釣りだした陽動は、アンナが事前にこちらの作戦方針を亜人軍に伝えていなければ、被害は甚大なものになっていただろう。亜人軍がしっかりと足並みを揃えてくれたからこそ、大きな被害を出すことなく作戦を遂行できたのである。



「トーヤ様に任されたのですから、当然のことです。それより、トーヤ様がご無事で本当良かったです……」



アンナはこう言うが、この任務の難易度は相当なものであった。

作戦方針を亜人軍へ伝えるには、当然ながら敵陣地を越える必要があり、それを実行するとなると高度な隠形の行使はもちろんのこと、それを長時間維持するだけの精神力が必要となる。並みの使い手では突破することさえ困難とだっただろう。



(本来であれば勲章を与えるべき成果なんだろうが……)



残念ながら、そんな制度は存在しないため、俺の方でそれに匹敵する褒章を与える必要がある。

ただ、本人はそれを望まないだろうから、扱いに困るところだ。



「再会に水を差すようで申し訳ないが、失礼させて頂きますぞ」



そう声をかけてきたのは、アンナの後ろから近付いてきた初老の獣人である。



「もしや、貴方がザジ大将軍ですか?」



「如何にも。お初にお目にかかります左大将殿」



ザジ大将軍は畏まりつつも、蛇を思わせる目で俺を見据える。



(リザードマン……、いや、恐らくは蛇系の獣人とのハーフか……)



目以外に蛇の特徴は薄いが、薄っすらと鱗のようなものも見えるので間違いないだろう。



「トーヤ様、お気をつけ下さい。この老人、隠形を見破ります」



「いやいやアンナ、この人は仲間なんだからその言い方は無いだろう……」



「ハッハッハッ! どうやら私はその娘に嫌われているようで」



アンナがこうして敵意のようなものを向けるのは、俺の知る限りルーベルトとソウガくらいだ。

どうにもアンナは、隠形の通じない相手に警戒心を持つようである。



「しかし、隠形を見破れるというと……、温度を感知できるということですか?」



「ほう? 左大将殿は博識ですな。希少な蛇系統の獣人の特徴をご存知とは」



蛇系統の獣人の特徴というか、たんに蛇の特徴について、俺の知識に刷り込みが行われていただけである。



(ピット器官……。もし敵方にいた場合に備えて、対策は練っておくか……)



ピット器官は、一部の蛇に備わる赤外線感知器官のことである。

蛇はこの器官により、暗闇でも正確に獲物を察知することができると言われている。

この器官による感知を逃れるためには、隠形で体温まで隠蔽する必要があるだろう。



「たまたま読んだ書物にかかれていただけですよ。……それよりも、まずはお礼を言わせてください。急なこちらの作戦に合わせて頂き、感謝申し上げます」



いくら俺が左大将という立場とはいえ、2年以上も姿をくらましていた者の命に応じるのは相当な抵抗があったハズ。

そもそも、本当に左大将の要請だという保証だってなかったし、合わせてくれるかどうかは賭けに近かった。



「なに、責任はサイカ将軍が取ってくれるとのことだったので応じたまでのことです。私は今でも半信半疑ですぞ?」



「なっ!? ザジ大将軍!?」



ザジ大将軍の言葉に、後から合流したサイカ将軍がらしからぬ反応を見せる。

普段冷静なサイカ将軍をここまで動揺させるとは、この老人、中々に曲者のようだ。



「ハッハッ! なにせ私は初対面ですからな。実際に会ったことのある者の言葉を信じるしかないのです」



確かに、俺が北方領域を守るサジ大将軍達に会うのは初めてである。

互いに面識のある者に確認を求めるのは、ごく自然な流れと言えるだろう。



「それではサイカ将軍。ザジ大将軍に対し、私の身元を保証して頂けますか?」



「左大将まで、お人が悪い。……ええ、この方は、亜人軍左大将、トーヤ殿で間違いありません」



「それでは、信用しましょう。……改めまして、左大将トーヤ殿。私はこの北方領域の防衛を任されていますザジと申します。最早隠居を控えた身ではありますが、存分に使い潰して頂くようお願いしますよ」



「……よろしくお願いします。サジ大将軍」



後半の発言にはあえて触れず、挨拶だけを返す。

ここで反応しても、何やら揚げ足を取られそうな気がしたからだ。



「……まあ、そう言いましても、此度は魔族軍も流石にで退いて行くでしょうがな! ハッハッハッ!」



俺が反応してもしなくても、こう繋げるつもりだったのだろう。

やはり、この老人は中々に癖のある人物のようであった。




割烹では報告しましたが、今月より月1更新となります。

手直しがたくさんあるので、まずはそちらを中心に活動していく予定です。

お待ち頂いている読者様には申し訳ありませんが、しばしお時間をください。

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