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魔界戦記譚-Demi's Saga-  作者: 九傷
第5章 魔族侵攻
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第255話 東軍戦の結末



(ほう)の首を持ち帰った俺達は、適当に敵兵をあしらったあとにすぐに隠れ里へと撤退をした。

もともと兵力には大きな差があったので、撤退自体は予定通りである。


陽動、及び牽制の役割だった(えん)の隊も、甲牙隊が退くのに合わせて撤退してきている。

それなりに被害は出たようだが、甲牙隊と(がい)率いる西軍の両方を相手にしていたことを考えれば、大健闘と言える結果であった。



「まあ、隊長の(こう)は取り逃がしてしまいましたがね」



「それでも、甲牙隊の半分は削ったんでしょう? 十分すぎる結果ですよ……」



陸の話では、甲牙隊は魔族の軍の中でも屈指の精鋭部隊だと聞いている。

それを半壊させるというのは尋常ではないことだ。

……やはりこの炎という男は、計り知れない実力を持っている。



「いえ、全盛期であれば仕留め損なうこともなかったでしょう。やはりもう少し勘を取り戻す必要がありそうです」



恐ろしい話である。

やはり以前の見立て通り、この男はタイガ殿に匹敵する実力者と思って間違いなさそうだ。



「……それでトーヤ殿、次はどのように動くんで? 凱将軍も馬鹿じゃありませんし、あまり時間はないと思いますぜ?」



時間がないというのは、この場所が発見されるのも間もないということを言いたいのだろう。

……いや、あるいは既に発見されている可能性だってある。(りく)の言う通り、あまり時間は残されていないかもしれない。



「そうですね。ただ、次は別段作戦と言う程のものはありません。今いる全兵力で、東軍を攻めるだけですよ」



「……それは無謀では無いですか? いくら指揮官を潰したといっても、まだまだ兵力には大きな差がある。真っ向からぶつかって勝てるとは思えませんが……」



真っ向勝負と聞いて、流石に炎が難色を示す。

無理も無い。何故ならば、先の戦闘でこちらの戦力はさらに削れており、リンカ達亜人軍を含めても最早二千にも満たない兵しか残されていないのだ。

その状況で真っ向勝負をしかけるなど、死にに行けと言うようなものである。



「大丈夫です。恐らくですが、真っ向勝負になることはないハズですから」



「それは何故だ?」



「東軍は、あの場から撤退し、西軍と合流を図ります。理由は、あの地点に留まっても防衛が困難だからです」



俺はあの周辺に掘り進められた抜け道を利用し、既に二度の打撃を与えている。

奇襲を受ける可能性のあるあの場所に、わざわざ留まる理由などもうないだろう。



「しかし、あの抜け穴を掘ったのは奴等でしょう? 対策を練ることくらい容易なのでは?」



「容易であれば、最初から奇襲など受けていませんよ。あの穴は使役した砂漠蚯蚓(さばくみみず)がいたからこそ掘れた穴なんですよ。それがいない今、新しく穴を掘るのも、逆に掘った穴を塞ぐのも困難となります」



「……待ってくれトーヤ殿。その砂漠蚯蚓がいないというのは、何故わかるんだ?」



「使役されていたと思われる砂漠蚯蚓は既に始末しましたので。また新たに用意していれば話は別でしょうが、あの魔獣の生息地を考えれば、それは困難と言えるでしょう」



魔獣使いが魔獣と契約するには、直接本体に触れる必要がある。

そして、砂漠蚯蚓は名前の通り砂漠のある地方に生息する魔獣だ。

近場に魔獣を生きたまま保管する場所でもなければ、この短期間で代えとなる砂漠蚯蚓を用意することは不可能と言えるだろう。



「成程。であればトーヤ殿の言う通り、西軍はそう動かざるを得ないでしょうな」



そのまま北上するという選択も無いワケではないが、撤退するつもりでもない限りはその可能性は薄い。

東の凱将軍が、それを許すはずないからだ。



「そう。俺達のやることは、その背を攻撃して少しでも敵軍を削ることだけです。そしてある程度削ったら、そのまま南の亜人軍と合流すれば俺達の役目はお終いというワケです」



「となれば、のんびりと休んではいられませんね。すぐに出れるよう指示を出しましょう」



「……負担をかけて済まない。この戦いが終わったら、美味い酒でもごちそうするよ」



作戦のためとはいえ、炎にはかなりの負担をかけてしまっている。

せめてそのくらいの労いはしたいところだ。



「そいつはいいですね。楽しみにしておきましょう」



そして俺達はこの隠れ里を放棄し、そのまま亜人領を南下。

いよいよ亜人軍と合流することになる。




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