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魔界戦記譚-Demi's Saga-  作者: 九傷
第5章 魔族侵攻
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第223話 紫華城での尋問②

少し体調を崩し、更新が遅れました…



「さて、では早速尋問を始めようか。(えん)(ろう)の猿ぐつわを解いてやれ」



「はっ!」



(ゆかり)の傍らに控えていた炎が、命じられた通り、狼の猿ぐつわを解く。



「っ! 紫ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!! 貴様! このような大それたことをして、許されるとでも思っているのか!!!?」



猿ぐつわが解かれると同時に、狼がけたたましい声で吠える。

紫はそれに全く怯むことなく、やれやれといった感じで首を横に振る。



「おいおい兄上、兄上がそれを言うのか?」



「貴様こそ、俺が何をしたと言う!」



「…はぁ、この状況で、まだしらばっくれるというのか…。これが立場上私の兄だというのだから、全く嘆かわしい…」



紫はワザとらしく眉間に指を当て、首を振る。

そして空いた手で指をパチンと弾くと、予め準備していたのか、(すずめ)が奥の部屋から一人の男を連れてくる。



「っ!?」



その男を見て、狼は明らかな動揺を見せる。

何ともわかり易い反応だ…



「私が死んだと思い、処理を抜かったな兄上? まあ、兄上だけで(まつりごと)を回せるとも思えんし、消すに消せなかったのやもしれんが…」



雀が連れてきた男は、目に見えて憔悴した様子だった。

あの男に関しては、恐らく既に尋問済みなのだろう。



「な、なんだその男は! そんな男、俺は…」



「戯言はそこまでにしてくれ、兄上。こ奴には全て吐いて貰ったあとだ、今更どう取り繕おうとも聞く耳もたんぞ」



「ば、馬鹿な! そのような者の言葉を信じ、兄の言葉を疑うつもりか!?」



「そうだが?」



何を当たり前の事をとでも言うように、紫は狼を見下すような目で見る。

それは間違いなく、兄弟に向ける様な目では無かった。



「裏切られたとはいえ、この男は一応私の下で長い事働いていた人間だ。扱い方はよ~く知っている。なあ? (しげ)よ」



重と呼ばれた男は、紫の言葉にビクリと反応すると、その場で膝を付き平伏し始める。



「紫様! 私は嘘偽りなく、全ての事実を語りました! 許せとは申しませぬ…! しかし何卒、命だけは…!」



「た、戯言だ! 耳を貸すな紫! 俺はそんな男、本当に知らぬぞ!」



…なんともまあ、醜いやり取りである。

両者とも自らの保身のため必死なのだろうが、見苦しいのを通り越して呆れてくる…

こんなレベルであれば、俺やアンナが見る必要もなかったのではないだろうか。



「…すまんな、トーヤ。このような茶番に付き合わせて」



「…いえ」



茶番、まさにその一言につきる。

しかし、それをあえて見せたのは、俺に変な罪悪感を持たせない為って所か?



「さて、トーヤよ、一応確認するが重の言っている事に偽りはあるか?」



「いえ、含みはありますが、嘘は言っていませんね」



俺の読心はアンナ程の精度はないが、この程度の事であれば容易く見抜くことが出来る。

もし俺が読めないようであればアンナの助けを借りるつもりだったが、これならその必要も無さそうだ。



「という事で兄上、最早釈明の余地は無いぞ…? 早々に認められよ。時間の無駄だ」



声色に威圧感こそ無いが、紫の視線には問答無用とでも言うような意思が込められていた。

狼もそれに気づいたのか、吠えかけた言葉を飲み込み、今度は忌まわし気に俺の事を睨んでくる。

逆恨みも甚だしいが、この男のような小者であれば、ごくごく自然な流れとも言える。



「さっきから気になっていたが、貴様は何者だ! 何故この場にいる!」



「…ただの協力者ですよ」



「協力者だと…? まさか、貴様が紫を…?」



おいおい、この男は何を言い出す気だ?

って言うかそこまで言ったら、自白しているも同然なんだが…



「ほう…? トーヤが私を、どうしたというのだ?」



紫に揚げ足を取られ、再び狼が口をつぐむ。

なんとも往生際が悪いというか…、まさか、ここまで来て言い逃れられるとでも思っているのだろうか?



「ふん、まあいい。それより兄上よ、一体誰の差し金で、こんな事をしでかしたのだ?」



「…あ? 誰の差し金、だと? 何を言うかと思えば…、俺は誰の指図も受けておらんぞ! 俺は俺の野望の為に動いたまでだ!」



ええ…、認めちゃうのか…

一体今までのやり取りは何だったんだ…?

もしかして、本当の意味で茶番だったのか…?



「…その返答は想定外だったな。まあ、面倒だしこのまま続けようか。それで、その野望とやらは何だ?」



紫の反応を見る限り、どうやらそうでは無いようだ。

つまり、本物の馬鹿という事である。

少し頭が痛くなってきたな…



「決まっている! この魔界を統一し、俺が真の魔王となる事だ!」



…………そう来たか。



「ど、どうしたんですトーヤ様?」



俺が急に俯いたため、アンネが心配そうに声をかけてくる。

アンナは俺の心情を見ている分、どう反応していいかわからないようであった。



「…ほう? 魔界統一か。随分と大きく出たものだな?」



「ふん! 大きいだと!? まあ、貴様のような小物には大それたことかも知れんがな…。しかし、俺にとっては違う! 俺は既に、兄上達と協力して魔族領の半分を手に入れた! そして既に、亜人領への侵攻も開始しているのだ! 魔界統一は、最早目前に迫っていると言っていい!」



ぐ…、色々とツッコミどころが多すぎるぞ…

こんな奴が俺と同じ目的を持っていると思うと、同族嫌悪では無いが、嫌になってくる…

…しかしまあ、耳よりの情報があったのも確かだ。

そういう意味では、この男が愚かである事に感謝すべきかもしれない。





今週はもう一話更新を予定しています。

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