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魔界戦記譚-Demi's Saga-  作者: 九傷
第5章 魔族侵攻
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第197話 義火討滅③



「…姉さん達、大丈夫でしょうか?」



「絶対に大丈夫とは言い切れないけど、さっき調べた感触じゃアンナの戦闘力で後れを取るような敵はいないと思うよ。コルトも付いてるし、冷静さを欠くことも無い筈だ」



「そうであればいいんですが、姉さん、少し拗ねていましたからね…」



…確かに。

いやしかし、コルトもいる事だし流石に大丈夫だろう…

って俺、早速コルトに依存気味だな…



「…まあ、心配な気持ちは俺も一緒だ。俺達は俺達できっちり仕事をして、早めに追い付くとしよう」



そう言って、俺は再び意識と魔力をを地面に浸透させていく。

今度はより局所的に、かつ精密に情報を探る為に…









「アンナ、先行し過ぎだ。それじゃあ何か見落とすかもしれないぞ」



「心配ない。それより、さっさと終わらせちゃいましょう」



「駄目だ。ちゃんと親父殿の言いつけを守ってくれ。慎重に、確実に、そして静かに片付けていくぞ」



全く…、アンナは親父殿の事になるとどうしてこう冷静さを欠いてしまうのか…

アンナが親父殿の事を慕っているのは十分理解しているが、こんな事では逆効果に思える。



「…だって、アンネだけズルイよ。さっきも凄く褒められてて、私だってちゃんと強くなってるのに…」



アンナは親父殿の前以外じゃ、以前のような子供っぽい態度を見せる。

本人は大人ぶっているが、中身はまだまだ子供のままなのだ。



「それは親父殿も十分に承知していると思うよ。だからこそ、俺とアンナに先行させてくれたんだろ? 昔の俺達じゃ、こんな事絶対任されなかった筈だ」



「…そうだけど」



アンナも頭では理解しているのだろう。

しかし、親父殿を思う気持ちが強すぎて感情に振り回されているのかもしれない。

ここは俺がしっかりとフォローしてやらないとな…

きっと、親父殿も俺にそれを期待してアンナと組ませたのだと思う。



「俺達が仕事をきっちりこなせば、親父殿もきっと褒めてくれるさ。ヘマしないように、きっちり仕事をしよう」



「…わかった」



…うん、だんだんとアンナをコントロールする方法が掴めてきた気がするぞ。









「さて、じゃあ始めるとしようか。よいせっと」



俺は軽く息を吐いてアンネの事を担ぎ上げる。



「ちょ、トーヤ様!?」



一応高所に陣取ったとはいえ、正面で盾を構えられると突破するのは困難だ。

狙撃はなるべく高所から行う方が良い。



「矢は俺が補給する。アンネは俺の感覚に意識を集中して、どんどん撃ってくれ」



「もう…、こんな所、姉さんには見せられませんよ…」



アンネは嬉しさ半分申し訳なさ半分といった表情をしつつも、俺の言葉に従い感覚に集中していく。



「凄い…、この距離で、こんな精確に敵の位置が…」



「いけそうか?」



「はい、これなら、絶対に外しません」



「…じゃあ、始めてくれ」



俺の言葉を合図に、アンネが弓に矢をつがえる。

そして先程は違い、鋭い音をたてて矢が放たれた。



「的中しました…、でも、他の見張りに気づかれました」



「ああ、それでいい。どんどんやってくれ」



次々と放たれる矢に、巡回してる者や、見張りに立っている者が一人また一人と倒れていく。

狙われなかった者達が慌てて洞穴の中に入っていき、辺りは段々と騒々しくなってきた。



「で、俺は本当に暴れるだけでいいのか?」



「ああ、好き放題暴れてくれ。無理はしないでいいけどな」



本音を言えば、暴れつかれて決闘どころではない状態になって欲しいがな。



「ハッ! その方がわかりやすくて助かるぜ。まあ、本番はお前との決闘だからな…。適当に手は抜かせてもらうぜ」



まあ、流石にそうはうまくいかないよな…



「…ヒナゲシも可能な限り大暴れしてくれ。ただし、最優先は自分の身の安全だ」



「承知いたしました。では、行って参ります」



そう言ってヒナゲシは崖をものともせず駆け下りていく。

ヒナゲシの格好はレイフにいた時と同じ、メイド服のような服装だ。

あのようなヒラヒラとした恰好で良くあそこまで動けると思う。



「あの嬢ちゃんも大分イカレてやがるな…。んじゃ、俺も行ってくるぜ!」



蛮はヒナゲシとは違い、集まり始めた兵士達の群れに飛び込むように落下していく。

矢や槍で狙われたらひとたまりも無いだろうが、この闇の中では狙いをつけるのも困難か…



「翡翠とロニーは俺達を狙ってくる敵の露払いを頼む」



「わかりました!」



「了解~」



その間にもアンネはどんどんと標的を落としていく。

感覚を共有している俺にはわかるが、恐らくほぼ確実に命を奪っているだろう。


…俺と出会う前から、彼女たちは命を奪う事に躊躇いが無かった。

それは、魔界という世界では別段珍しいことでは無いのかもしれない。

しかし、あのイオでさえも初めて敵を殺した際は一週間ほど震えが止まらなかったと言っていた。

そこから想像するに、例え魔界といえども、普通に生きていれば人を殺める事などあまり無いという事だろう。

つまり、アンナ達は…



(…やめよう。今それを考え出すと、作戦に支障をきたしかねない…)



「あ、流石にコッチにも敵が向かってきたね。大丈夫? ロニー?」



「大丈夫です! あいつら、絶対シュウさんやガウさん達より弱いですから!」



「その意気だ! さて、ボクも久しぶりに暴れるぞ~!」



そう、俺も今は、目の前の敵に集中しよう…




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