第189話 レイフの現状について
2時に帰りはキツイ…
例のごとく帰宅後修正予定ですが、帰宅できるかは不明です…
→微修正済です。
暴れようとするアンナをなんとか宥め、俺達は再び薪を囲うようにして腰を下ろす。
アンナも少し落ち着いたのか、抱きつくのはやめてくれた。
…密着状態なのは変わらないが、な。
「…ええっと、さっきの話の続きだけど、何故コルト達が来たんだ?」
「それは先程も言った通り…」
「ああ、いや、大人だとか子供だとかを気にしているわけじゃなく、ね。翡翠やヒナゲシはともかく、何故この四人だったんだ?」
大人か子供かを抜きにしても、やはり腑に落ちない点はある。
単純に、俺を助けに来るという目的であれば、近衛兵こそがその任に適しているからである。
だというのに、ライやスイセンがいないのは少し不自然に感じたのだ。
「…そういう意味では理由は二つですね。まず第一に、近衛兵も含む軍属の方々は、それぞれの持ち場を離れられることが出来ませんでした」
…確かに、その可能性はあると思っていた。
しかし、近衛兵の任務において最も優先されるのは守護対象の護衛である。
つまり、俺直属の近衛兵であるライ、スイセン、イオは軍属とはいっても、俺を助けるという名目があれば自由に動ける筈なのだ。
「ライさんとスイセンさんについては色々と揉めたようですが、現在は一応ソウガ様がレイフの代表代理となっていますので、近衛の方々もそれに伴ってソウガ様の直属として扱われているようです」
そういう事か…
以前翡翠に託した手紙で、俺の代理にはザルアとグラを推薦しておいた。
最終的な判断はソウガに委ねると記述はしたが、結果はそういう事になったらしい。
ソウガの判断に対する不満は無い。むしろ、これは期待通りといって良い結果だろう。
実の所、立場的にもそれが一番だとは思っていたのだ。
しかし、ソウガが忙しい身である事は重々承知している為、俺は真っ向から頼まずに判断を委ねるという風に、わざわざ小賢しい言い回しにしたのである。
俺の目論見は成功したと言えるが、恐らくソウガも俺の意は読み取っているだろう。
ただでさえ大きな借りを作っているというのに、これは戻った時の業務量が怖いな…
「ソウガ様は本当に小賢しい方です。トーヤ様が戻られるのだから、当然こちらが優先される筈ですのに…」
うーむ、アンナはどうにもソウガに対して刺々しいな…
遠征中に色々あったのは聞いてるが、アンナがここまでソウガを気嫌いするとは思っていなかった。
タイプ的には結構似ているところがあると思うんだが…、同族嫌悪というやつだろうか?
なんて事を考えていると、わき腹をつねられた。すごく痛い。
「ど、どうしたんですか親父殿」
「…い、いや、皆の事が懐かしくて、少し涙が、ね…」
痛みで出た涙だとは流石に言えなかった。
ここ二年で痛みには慣れたと思ったけど、つねられると相変わらず本気で痛いから困る。
以前と違うのは、攻撃に流用できないかと考え始めるバトル脳になりつつあることか…
これはこれで嫌な変化だな…
「…あれ? そういえば今の話、イオの事が抜けてたいと思うが」
俺がそう言うと、隣のアンナから不穏な気配が漏れた気がするが、気づかなかった事にしよう。
「イオさんは…、その…、荒神の方でかなり暴れたようです。最終的にはタイガ様が直々に抑え込んで、そのまま前線に連れていかれたと聞いています」
ああ、やっぱりそうだよな。
イオらしくて逆に安心した気がする。
どう見てもクールビューティなのに、色々と大雑把だからなぁ…
「まあ、イオらしいと言えばイオらしいけど、なんで荒神で?」
「実は、イオさんの近衛兵転属は正式に受理されていなかったとかで…」
「正式に受理されていない…?」
どういう事だ?
「イオさんは元々、荒神所属の副将軍ですので、本来であれば荒神で正式な審査が必要だったそうです…」
ああ、そういえばイオって一応元副将軍だったっけ…
叙勲の時もいなかったし、そんな事完全に忘れていたぞ…
しかし、俺の近衛兵になることについては、随分前に連絡を入れた筈なんだがなぁ…
「小賢しい方です」
ああ、そういう事ね。
「実際の所はどうなのかわかりませんが、荒神の事なのでいくらでも誤魔化しはききますからね…」
コルトもその辺りはあまり信用していないらしい。懐疑的、というより自分なりによく考えているのだと思う。
アンナは相変わらずだし、アンネは黙って話を聞いている。ロニーは…、良くわかっていなさそうだな…
それにしても子供というのは面白いな。同じような環境で育ちながら、こうも個性が出てくるとはね。
「まあ、イオの事はいいだろう。事実はどうあれ、どの道イオは防衛戦には不向きだ。前線で戦う方が本人もやり易いだろう」
近衛兵としてはどうかと思うが、イオは自由に動いてもらう方が良い結果を出す気がする。
「それで、もう一つに理由って?」
「それは…」
「重量の問題だよ」
答えようとするコルトに割り込むように、翡翠が答えを返してくる。
「僕の形態変化は、年齢に比例して大きくなっていくからね。若龍程度の大きさじゃ、子供五人乗せるくらいが関の山さ」
翡翠は現在、人の姿に変化しており、洞窟の奥でゴロゴロと寝転がっている。
一応服は着ているのだが、ロニーが持ち込んだ予備らしく、サイズが合っていない。
そのせいか、寝返りを打つたびに色々と見えてはいけないモノが見えてしまいそうで、非常に冷や冷やする。
「…ということは、俺を含めて飛ぶのは無理か?」
「無理だね。いや、実際飛ぶのは問題ないと思うけど、空族の縄張りを抜ける速度が保てるかはちょっと怪しいかな」
翡翠が言うには、上空には空族の領域が存在しており、そこを飛んでいると問答無用で襲われるのだとか。
その為、翡翠たちは高速でその空族の領域を抜け、一気に高空へ到達し、その上でここまで飛んできたそうだ。
縁による感知が効きにくかったのも、その高空にいたことが原因なのかもしれない。
「まあ、空族の件を抜きにしても、暫くはあの形態にはなれないよ。アレって、僕本来の姿より少し上乗せで成長してるから、魔力の消費が半端じゃないんだ。多分、二か月くらいは無理だと思うよ」
「ん、もしかして、いつものように子龍の姿じゃないのはそのせいか?」
「うん。一応これが僕本来の姿だからね。魔力の消費はこれが一番少ないんだ。流石に、暫くは節約しないとね~」
まあ、そうそう簡単にはいかないよな。
翡翠達がここに来た方法を考えれば、真っ先に思いつくのが同じ手段での帰還だ。
しかし、世の中大抵そういった簡単な方法は通じないものである。
さて、早速一つプランが消えたが、どうしたものかなぁ…