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魔界戦記譚-Demi's Saga-  作者: 九傷
第4章 武闘大会編
148/282

第135話 競技大会 開始

例の如く、帰宅後に修正するかもしれません。

あと少しで月末月初のラッシュが乗り切れる…はず…

→微修正しました。




――――荒神・大演習場





「ぜぇ…、ぜぇ…」



やばい。これは、マジで、疲れたぞ…

競技が終わった後、全身の疲労感に耐え切れずその場に腰を落とす。



「お疲れ様です」



そう言って手拭いを渡してくるスイセン。



「ありがとう」



俺はそれを感謝しつつ受け取り、額の汗を拭う。

全く、彼女の疲労もそれなりに濃いだろうに気遣いまでされて、情けない話である。



「…すまない。俺がムキにならなきゃスイセンもそこまで疲れなかっただろうに」



「いえ、張りあったのは私の方ですから…。それにしても、流石ですね。初参加でこの記録は驚異的ですよ?」



「…止してくれ。これまでの競技の不甲斐なさから、意地になっただけなんだからさ。全く、あれ程次の日に響くから無理はするなって言われたのにね…」



「トーヤ様…」



先程行われた競技が本日最後の競技、耐久力の測定である。

結果は測定不可。もちろん測りきれないほどの数値という訳では無い。測りきれないほど俺がひ弱だっただけである。

恐らく順位表にも載らない、正真正銘の最下位。まあ、これについては最初から諦めてたからいいんだけどさ…

だってもう、見た目からして無理だったんだから、仕方ないよな?


そう自分の中で言い訳をしながら、他の参加者の様子を見る。

この中でへばっているのは、俺やゾノ、ライといった種族的に身体能力が劣る者ばかりである。

当たり前だ。何しろやり方が酷い。酷すぎる。

だってこの耐久力測定、剛体の使用出来ない竜の牙を使用したハンマーを防御するという無茶苦茶なものだったのだから。

ちゃんと加減はされているらしいが、ハンマーで人を殴る事自体おかしい。下手すりゃ死ぬよ?

死にかけた俺が言うのだから間違いない。いや、疲労が溜まってなければ踏ん張るくらいは出来たかもしれないけどさ…


実は、この1つ前に行われた魔力操作で、俺は既に疲労困憊状態になっていたのだ。

言い訳に過ぎないが、これも先程の酷い結果の原因の一つである。

スイセンからは事前に、魔力測定と耐久力測定は「明日に響くので無理をしないように」と忠告されていたのにね…


実の所、俺も無理するつもりなど毛頭なかったのだが、自分の余りの成績の悪さに、唯一好成績を取れる可能性がある魔力操作で欲を出してしまったのだ。

だって仕方ないだろう。俺の成績はそれ程に酷いものだったのだから。


先程受け取った結果用紙を改めて見てみる。


体力・・・500/582 位

持久力・・・480/582 位

攻撃力・・・573/582 位

瞬発力・・・498/582 位

速度・・・551/582 位

知力・・・175/582 位

魔力量・・・295/582 位

魔力操作・・・2/582 位

耐久力・・・X/582 位


知力と魔力量、魔力操作以外は全て下位である。


知力がそれなりに良いのは、脱落者が多かった為だ。

俺としては、計算の類はともかく、知識面の無さが露呈した事もあって、正直結果にはあまり納得はいっていない。

魔力量にしても他に比べてマシというだけで、全体の半分以下な事には変わらず、誇れる数字とは言えなかった。


ちなみに、この結果は兵長以上の役職の者しか反映されていない為、その他の兵士や一般参加者を含めると結果はもう少し変わってくると思われる。

とは言っても、競技の内容から考えれば結果が良くなるとは到底思えない。

むしろ悪くなる可能性の方が高いくらいだ。


魔界で目覚めてから半年以上の月日が経っているが、今日ほど人族のポテンシャルの低さを痛感させられ日は無かった…



「…私にはトーヤ様の気持ちが痛い程わかります。私も、同じでしたので…」



スイセンは慰めるようにそう言って来るが、その表情には少し悲痛さが浮かんでいた。

確か以前、スイセンは同僚に対して劣等感を持っていたような事を言っていたな…

もしかしたら、過去にこの大会で似たような事を経験したのかもしれない。



「本当に申し訳ない…。もしかして、嫌な事思い出させちゃったか?」



「っ!? いえいえ! 確かに思い出しはしましたが、もう全然気にしていないので! ただ、その…」



「その?」



「な、何でもありません! 本当に平気ですから! そ、それよりも、そろそろ子供達の武闘大会が始まりますし、移動しませんか?」



「あ、ああ。そうだな…」



急に慌てだしたスイセンを訝しげに思いながらも頷き返す。

まあ、スイセンが気にしないで欲しそうなので、俺もこれ以上は引きずらないようにしよう。









「パパー!」



勢いよく腹に抱き着いて来たのは、オークの娘であるセシアだ。

セシアは一応、この武闘大会子供の部に参加予定の選手である。

しかし、この娘は生まれてまだ1年も経っていないというのに、本当に大丈夫なのだろうか?



「よしよし、頑張ってな。でも、あまり無茶はするなよ?」



「うん! 頑張るから、ちゃんと見ててね!」



それだけを伝えたかったのか、セシアは折り返すように受付の方へ駆けて行く。

子供は元気だなぁ…。ちょっと元気過ぎてハラハラするけど。



「セシア! ちゃんと前見て!」



「はーい! ママ!」



ああ、だから振り返らないでちゃんと前見て!

凄く心配である。

ただ、それでも危なげなく駆けて行くセシアを見ると、闘仙流はしっかりと使いこなしているように思える。



「…シア、本当に大丈夫なのか?」



「…はい、恐らくは。あの子、ああ見えて私よりも数倍優秀ですからね…。情けない話ですが、もう体格くらいしか勝っていないかもしれません」



情けないと言いつつも少し自慢げに語るシア。

しかし、やはり心配は心配なのか複雑な表情をしている。



「セシアなら大丈夫ですよ」



と、後ろから声がかかる。

振り返ると、アンナ達姉妹とコルト達兄妹がこちらに向かって歩いてきていた。



「アンナか。まあ、アンナが言うなら本当に平気なんだろうけど…、ってそういえばアンナ達は本当に出場しないで良いのか?」



「はい。前も言ったように、出る意味がありませんので」



出る意味が無い、か…

まあ確かにアンナの実力から考えれば、子供の大会にでる意味は無と感じても仕方ないかもしれないけどさ…



「あの、トーヤ様、姉さんは決してトーヤ様の思っているような事を理由に、出場しないのではありませんよ?」



「それってどういう…、ってあれ? 今、もしかして…」



心を読んだ? まさか、アンネもアンナと同じように読心術を?



「ね、姉さんほどではありませんが」



そう言って恐縮そうにするアンネ。

いやいや、本当にこの姉妹は…、何と言うか凄すぎるな…



「トーヤ様、私が意味が無いと言うのは、あくまで子供のみ参加する大会で好成績を残す意味が無い、という意味でしかありません。決してこの大会や、他の子供達を軽んじて見ているわけでは無いのです」



ああ、そういう事か。

確かにアンナが考えそうな事ではある。



「私も姉さんと同じ考えです。私達はあと2年もしない内に大人の仲間入りをしますので」



「俺もです。ただ、代わりと言っては何ですが、今日はエステルが参加します。ほら、エステル、親父殿に話があるんだろ?」



そう言って、コルトが後ろに隠れるようにしていたエステルを前に出す。

エステルは凄く恥ずかしそうにモジモジしていた。

というか、この格好は…


エステルはショートパンツに袖口の広い上着、そして両サイドに団子のように纏められた髪と、まるでどこかの中国娘のような恰好をしていた。

凄く似合っているが、一体何故…?



「…あの、お父さん、その、どう、ですか?」



ど、どうって、やっぱり格好の事か?



「どうって、いや、似合っていると、思うけど…」



「よ、良かった…」



ぐ…、なんだこの可愛い生物は…、って痛い! 抓るなアンナ!



「コ、コルト…、この服は?」



「ルーベルトさんが用意しました。今の体格で長い履物は動きを阻害すると…」



ルーベルトが…、だと…?

あの男、一体どういう気で…? いや、もちろんコルトの言った理由が全てだと思いたいが…

この見た目は、なんと言うかドグマの屋敷に残っていた奴隷用の服に通じる何かを…。いや、これ以上想像するのは止めておこう。

万が一にもルーベルトの前で顔に出すワケにはいかないからな…。殺されてしまう…



「お、お父さん! 私も頑張るから、お、応援しててね!」



叫ぶように言い放ち、凄まじい速度で受付の方に駆けて行くエステル。

…なんだあの速度は。ルーベルト、あんた一体何を教え込んだ。



「ね? トーヤ様。あの子を見て、この大会を決して軽んじて見る事なんて出来ないでしょう?」



軽く言うけどなぁアンナ。この大会、ひょっとして大変な事になるんじゃないか…?



「さあ、私達も客席に向かいましょう♪」



そう言って自然に腕を組んでくるアンナ。

俺は期待と不安の入り混じった複雑な気持ちを抱えたまま、そのまま客席へと引っ張られていくのであった。




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