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魔界戦記譚-Demi's Saga-  作者: 九傷
第3章 羅刹の鬼達
144/282

第131話 『亜人領 競技大会のお知らせ』

更新再開です。

今話から新章となります。

今話は短めですが、次回より通常量に戻ります。




「う~む、どうしたもんかなぁ…」



自分で呟きながら、妙な既視感を覚える。

ああ、そういえば2か月ほど前もこうして悩んでいた気がする。



「お茶をお持ちしました」



そうそう。あの時も。俺が悩んでいる所にヒナゲシが気を利かせてお茶を運んできてくれたのだ。



「ありがとう」



受け取り、啜るように口を付ける。

少し熱いが、やはり美味い。

気温の低さからやや冷えていた体に、染みるように熱が広がるのを感じる。


穏やかな時間であった。





――羅刹との戦から、約2か月の時が経とうとしていた。



季節は後季。木々には霜が降り、堀の水は凍りが張る程に冷え込んでいた。

どうやら、この時期は1年を通して最も寒いとされる時期らしい。

魔獣を含める動物達も冬籠りをする為、遭遇する事が滅多にないとの事だった。


実に平和である。

この間まで戦をしていたとは思えない程に…



「カプ」



翡翠が頭に噛り付く。

人が平和を噛み締めていると言うのに、この子龍は…



「…翡翠。頭に噛り付くのやめてくれないか? 地味に痛いんだが…」



前はこんな事しなかった筈なのにな…

もしかして味を占めたのだろうか? いやいや、行為的にそれはちょっと笑えないぞ…



「トーヤの頭って妙にしっくり来るんだよね」



頭を口から解放しつつ、そんな事を言う翡翠。

そんな理由で頭に噛み付くのは本当に勘弁して欲しい。

そもそも、翡翠は今でこそこんな姿をしているが、本来は4メートルを超す程の龍なのである。

何かの拍子に力が入るだけで、俺の頭は噛み潰されてもおかしくないのだ。はっきり言って冷や汗を通り越して血の気が引きかねない。



「はは、心配しないでも噛み潰したりしないって! …多分」



「多分とか付けないでくれ…。本当に怖いから…」



この翡翠は、古龍族という1000年以上も昔に絶滅したとされる種族の生き残りらしい。

何故その古龍族が、ドグマなんぞの屋敷にいたのか…。それについては本人も分からないとの事だった。

俺の事も何か知っていると思ったのだが、残念ながら大した回答は返ってこなかった。


分かった事としては、翡翠はどこか知らない建物で、人族らしき老人に監禁されていたらしい事。

その老人に、トーヤという男の庇護下に入れと告げられた事。


そして、気づいた時にはドグマの屋敷に居たらしい。

ヒナゲシとはそこで知り合ったようだが、他の屋敷の人間とは一切関わっていなかったようだ。

そのヒナゲシとすらも、食事を運んでくる以外の接点は無かったらしい。

これについては、あの時のドグマ達の反応を知っているだけに、信憑性は高いと思われる。

恐らくは、ヒナゲシ以外の者には認識できないよう、何かが仕掛けられていたのだろう。


その事からも、ヒナゲシはその老人とやらと関りがあるのは間違いないのだが、残念ながら本人には分からないようであった。

ただ、翡翠へ料理を運ぶ、という命令だけが頭に残っていたらしい。

ヒナゲシの存在については俺もいくつか仮説を立てており、その仮説通りであれば、それに不思議はない。



まあ、いずれにしても分からない事だらけである。

しかし、既にこれだけ干渉をしてきているのだ。比較的近い将来、何らかの接触があるのではないかと俺は予想している。

それが俺にとって、どのような結果を引き起こすかは分からないが、考えても結論が出ない以上、それを待つのが一番だと思っている。

翡翠もそれに同意しており、もし何かあった場合は責任をもって俺を守ると胸を張って宣言していた。



だから、その件についてはもういいんだ。

問題は…



「さっきから何を悩んでいるの?」



翡翠が肩越しに尋ねてくる。

俺はそれに答えるように、机の上の紙を指さす。


その紙には大きな文字でこう書かれていた。




『亜人領 競技大会のお知らせ』




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