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魔界戦記譚-Demi's Saga-  作者: 九傷
第3章 羅刹の鬼達
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第108話 開戦




「トウジ将軍の情報よりも多いな…」



俺達は今、敵軍の後方から1里程離れた場所にある丘に潜伏している。

敵軍も偵察部隊は出しているようなので、この場所がバレるのも時間の問題だろうが、見つけられるのも作戦の内に入っているので問題は無い。

それよりも、これから攻める予定である敵軍の左端が、情報よりも大分多い事が問題だ。

トウジ将軍達はこの左端を抜けて来たらしいが、それが原因で増員されたのか? いや、それほど単純な話でも無さそうだが…



「まあ、あれ全部相手にするワケじゃないし、平気じゃないかな? それに、ほとんどがゴブリン中心の部隊みたいだし、なんとかなると思うよ」



普段から比較的冷静なライがそう評価しているなら、まあ平気だとは思うけどさ。

でもライよ、君もレッサーゴブリンだからね? 正直君レベルが数人いたら無理だからね?



「トーヤ殿! 中央が動きました!」



「…よし、ジグル一族、頼むぞ!」



俺の声に呼応するように、臥毘(がび)率いるジグル一族が雄たけびを上げる。



「任せてくれトーヤ殿! 臥毘(がび)隊、出るぞ!!!!」



「「「「応!」」」」



うむ。これだけ士気が高ければ大丈夫だろう。

竜人族、俗にリザードマンと呼ばれる彼らは、全員が高い身体能力を持っている。

丘を駆け降りる速度もかなりのもので、あの速度なら6~7分程で敵軍に到達する。こちらも準備開始だ。



「リンカ隊は臥毘(がび)隊に続いてくれ。構成的に術や弓の妨害はほぼ無いとは思うが、来ると臥毘(がび)達の足が鈍る。ボタン達はその露払いを頼む」



「承知しました」



「リンカ含む術士以外の面子は手筈通り、隙を見て将を狙ってくれ」



「ええ、では行って参ります! リンカ隊! 行くぞ!!」



臥毘(がび)隊を追うようにしてリンカ隊も出撃する。

臥毘(がび)達の速度は確かに速いが、リンカ達の速度はそれをさらに上回る。

後発で臥毘(がび)隊に追い付けるのは、自軍では彼女達くらいしかいない。



「ガラ隊は俺に続け! 出るぞ!」



「「「「応っ!!!」」」」









――――時は少し遡る。



合流したサイカ将軍を交え、作戦会議が開始される。



「当然だが、俺達の事は敵軍には気づかれている」



「まあ、あれだけ襲撃もありましたしねぇ…」



ちなみに襲撃の際、何人かを捕虜に取る事に成功したが、その全ては鬼族、つまり羅刹軍の者達だった。

逃げられても深追いはしなかったので、こちらの戦力や到着時間なども既に敵軍に周知されているだろう。

鬼達の首都、羅刹とキバ様達の軍を挟むように展開された敵軍。彼らは恐らく他の勢力の者達なのだが、羅刹軍が情報を出し惜しみするとは思えない。

それはあの警戒っぷりからも伺える。展開する軍はしっかりこちら側に対して警戒を行っているようだった。

今は森の中に身を潜めている俺達だが、それも既に敵軍には気づかれている筈だ。



「まあ、俺達があの囲いを抜けた時点で、こうなる事は予想出来た事だ。で、その上でどうするかなんだが…」



「…敵軍の規模は?」



「どこまで増えているかはわかんねぇが、恐らく万には到達していない」



まあそれはそうだろうな…

いくら魔王を討てるチャンスだからと言われても、何の確証も無くその情報を鵜呑みに出来るかと言えば、難しいと言わざるを得ないだろう。

それでもこれだけの規模の敵が集まったと言うのだから、キバ様も大した人望だな…

とゆうか、何をやればこんなに敵を作れるのだろうか?



「それは我々の方でも確認した。数としては凡そ8千といった所だ。まあ、これから増えない保証も無いがな」



補足するように発言したのはサイカ将軍。

彼もシュウと同様の狼系の獣人のようだが、シュウと比べれば大分大人しい印象を受ける。

彼は元々諜報部隊の出身らしく、その部下もそういった事に長けているようなので、この情報は信用しても良いだろう。


しかし、8千か…

今のこちらの戦力は、サイカ将軍の部隊を加えても3千弱。後続の2部隊も精々2千いるかいないかだそうなので、数的には不利と言える。

敵軍を挟んだ向こう側にいるタイガ殿達はあてに出来ない。ただでさえ羅刹軍の攻勢を受けている状態なのだ。防衛以上の事は出来ないだろう。



「俺としては、今の全戦力で無理やり包囲網をぶち抜くのが良いとは思うんだが、ここでの決定権は左大将にある。なあ、どうする?」



そうなんだよな…、俺が立場上は一番上なんだよな…

俺、こんな戦なんて経験無いし無理! と叫びたかったが、そうもいかない。

ただ、トウジ将軍の作戦だけは無いと思う。とゆうかそれはもう作戦じゃない、ただの突撃だ…

仕方ない、戦の経験は無いが、俺の持つ知識をベースになんとか組み立てていくしかないか。



「サイカ将軍、敵軍の構成ですが、複数勢力からなる合同軍なんですよね? どれくらいの勢力の集まりかは分かりますか?」



「把握できただけで5つですが、あとは多くても1~2程度かと」



「ふむ、では少し多めに見積もって10勢力いると想定しますか。各勢力の割合や種族構成などは?」



「正直まばらですが、分かりやすいのは盗賊団であるムウマ一味ですね。奴らは基本ゴブリンのみで構成されています。数だけは多いですが、所詮はゴブリンであり、大した戦力でもありません」



「そこは潰しやすそうだな…。指揮官みたいなのはいましたか?」



「ええ、なにしろムウマ本人が出てきていますので。愚かな事に」



それはそれは…。功を焦ったのかもしれないが、余りに酷い。

情報が真実とも限らないのに、リスクリターンを考えられないのだろうか? まあ真実なんで釣り合っているのかもしれないけどな…


他の勢力についてもサイカ将軍はある程度情報を掴んでいるらしく、大体の勢力図が見えてきた。

それにしてもこのサイカ将軍、非常に優秀である。こんな人がいたのか…



「…成程、大体わかった。これならなんとかなりそうだ」



「本当か!? 左大将!?」



「ああ、ただ、トウジ将軍には多少無理してもらう事になるけど…」



「んな事構わねぇさ! こう見えてさっきまで決死の覚悟してたんだぜ!? それが多少の無理くらいに落ち着くってんなら上等ってもんよ!」



「そう言ってくれると助かります。サイカ将軍は…、多分俺が言わなくてもわかっているんじゃ?」



「…まあ、先程の確認内容から大体は想像できますが」



頭の回転も良さそうだ。

シュウを筆頭に、狼系獣人は好戦的かつ刹那的な者が多かった為、そういった人種なのだろうと思っていたが、勘違いだったようだ。



「では時間も無いし、詳細を詰めましょう。なに、やる事は単純ですよ」



そして俺達は作戦を煮詰める。

トウジ将軍から多少異論のようなものが挙がったが、なんとか説得する事に成功。



そして各隊は配置につき、開戦の合図を待つのであった。





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