封印されしいちごぱんつ
やってしまった……
反省はしていない
XX15年8月2日。
百年に一回のこの日がやってきた。
この日をどれだけ待ったことか。我が活動できるのは百年に一度、たった24時間のみ。
天照に生み出され、「やっぱだせぇから使わないわ」と忌々しき封印を施された我の名はいちごぱんつマークⅡ。初代なのにマークⅡなのは我に名づけた天照しか分からないであろう永遠の謎である。
我の存在意義は一つ。
幼女もしくは少女、それか美しき女性に履かれることである。
それがいちごぱんつとして生まれた我が使命。
だが、これまでの数千年の間一度としてその願いが叶ったことは無い。
どの時代においても「いちごぱんつとか時代遅れ」と放られてしまうのである。
たまに手にとってもらえることもあるのだが、大抵は履かれずに箪笥の奥底にしまわれる。一度しまわれてしまえばまた百年は誰の目にも映ることなく、触れることすら出来なくなってしまうのである。
これが運命なのだろうか?
否! 断じて違う。
運命は己の手で切り開くものなのだ。
さあ淑女達よ! デパートのレジのすぐ横に置かれた我を手に取るが良い! そして履くのだ!
……おかしい。何故誰も手に取らない?
もうすぐ閉店時間になってしまうではないか!
いや、まだだ。まだ終わらぬぞ!
まだ一人だけ客がいるのだ! 20代前半と思われる若い女性が!
「ちょっと店員さん、これ売り物なの?」
「ハイ、売り物ですよ」
一瞬、我は耳(無いけど)を疑った。
こ、これは
き……キターーーーー!
ついに、ついに我が念願が叶うときが来た。
名も無いいちごぱんつ。その本分を全うできる時が来たのである。
「ちょっと試着してみていいかしら?」
「申し訳ございませんお客様、当店では下着の試着はご遠慮していただいております」
「あらそう、じゃあいらないわ」
……………………は?
天国から地獄に落とされるとはまさにこの事だろう。我は再度耳(何度確認しても付いてないけど)を疑った。
いちごぱんつを試着することを店員に言う客も言う客だ。だが買いそうな人物を前にして試着を断る店側も店側だ。
我は運命を呪った。
運命を自分の手で切り開くというのは、いちごぱんつであるこの身の上では所詮無理な話だったのだろう。
もう閉店時間になる。
また百年、我は封印されるのだろう。
と、そんな諦めにも似た考えをしていると、チーンという音がなり一人の人物がエレベーターから降りてきた。20歳半ばくらいだ。
「すみません! いちごぱんつありますか!」
神はまだ我を見捨てていなかった。
我はいちごぱんつ。
今宵初めて生まれてきた本分を全うできる。
履かれる寸前、手に取られた瞬間そう思った。
ん?
この女、何か付いてないか?
それはまごう事なき立派な一物であった。
所曰、にゅーはーふというやつである。
そうだ。神は我を生み出したと同時に我を見捨てたのだった。
それを思い出した瞬間に、我は正気を失った。
うわあああああああああああああ!