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石鎚表参道殺人事件  作者: 生間ひろし
7/7

モンベル

 七月一日、午後二時 西条国際短期大学

 明美は、午後の授業の休憩時間に携帯電話の留守番録音を聞いた。

『高城さんでしょうか。こちらは愛媛県警です。お話を伺いたく、連絡願えませんでしょうか。ゼロ・ハチ・キュウのキュウ・サン・キュウ・ゼロ・・・・・・・』

(何かしら。もしかしておとついの酔っぱらい運転が見つかったのかしら。)

 石鎚頂上山荘の宴会後、白髪紳士とどうにか下山したのだが、明美も日本酒を3杯飲んでいた。男は泥酔しており、しかたなく車で明美の部屋に連れ帰っていた。

 明美は留守録されていた番号に電話をしたらすぐ来るというので、学校の正門で待ち合わせをした。警察手帳を見せられ、ワゴン車に乗り込んだ。

「少し学校から離れますね。」

警察官と思われる男はそういうと運転者に指差した。動き出すとすぐに、

「石鎚山の事件はご存知ですか?」

警察官の名刺は、西条西警察署刑事部 宮城〇〇とあった

「えーっと、高城さん。先月の二九日登られましたよね。登山届が出てたので。」

「あっ、はい。」

「実は被害者が女性で、年齢も近く高城さんの可能性があったもので。」

「まだ、被害者も誰かわからないのですか。」

「そういうことです。登山中に変わったことなどなかったかなと思いまして。」

 明美は登山の行動の一部始終を話した。出合った人々の様子も聞かれるままに答えた。頂上山荘での飲酒については、「少々」とごまかしたが。


「すこし、気分を害されるかもしれませんが、この写真の女性、登山中に出会いませんでしたか。」

刑事の持つタブレット端末の写真は二の鎖小屋であろう、床によこたわされた全身が写っていた。

「えっ、・・・」

「お会いになりましたか?服装はすべて『モンベル』のものなんですよ。」


「ようこ?ようこなの?」


 五月二〇日 西条市内 大野葉子の部屋。

 明美は部屋に呼ばれていた。

「代表先輩。買ってきちゃった。着替えるね。」

と大きな『モンベル』の茶色い紙袋を持ってユニットバスに入った。

「じゃーん。」

「すごいじゃない。かわいい。」

葉子は、ライトトレールタイツにストレッチスカート。ロングスリーブTワンポイントロゴの上にラガーシャツハーフスリーブ。手にはシューズを持っていた。

「私、青系でいきますので、よろしく。」

 五月二五日、明美は就職活動で不参加であったが、サークルの月例ハイクでみんなにお披露目したらしい。


「お知り合いですか?」

「・・・・・・・・・・・」

「それではこの写真を、・・・」

 宮城刑事に次に見せられた女の写真は、裸の肩から上の正面、目を閉じられていた。

「よっ、葉子。キャー。」

公園の脇に停められたワゴン車の外まで聞こえるくらいの悲鳴となった。


「お時間良ければ、松山の県警までお越し願えませんか。」

明美はうなづき、車は高速に上がった。



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