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石鎚表参道殺人事件  作者: 生間ひろし
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感電

  六月三十日(月)午後一時 愛媛県警

 瀬部警部は自席にて電話をかけていた。

「東山さん、二十五日からの登山届、それに山小屋を含めた周辺の宿泊者名簿を集めておいてくれ。」

 東山は生活安全部の庶務担当であった。瀬部警部と河野巡査は消防のヘリコプターで県警に戻ってきていた。

「河野ぉ、良かったなぁ。ヘリに空きがあってよぉ。」

「本当ですよ。でも、ホトケと同席はいい気がしませんけどね。」

 そこへ、一人の女性が近寄ってきた。

「瀬部さん。死因は感電じゃろいいよんよ。」

「ミセルちゃん。そりゃぁ雷っちゅうことか?」

「なんいうとん。ホトケの腕に電気の入った傷あったけんよ。くわしうは、これからやけど。」

 ミッシェルは、フィリピンの大学から研修として愛媛県警の鑑識課に来ていた。日本語は母国で勉強し、大阪の研修施設でも半年間学んだので、不自由なく会話ができていたが、二年前に着任してから伊予弁に興味を覚え、彼女なりの伊予弁を屈指していた。

 肌の色を含め外見は日本人と変わらず、他県民は外国人だと気付かないかもしれないが、その彼女なりの伊予弁が愛媛県には、日本人とは間違えがたくなっていた。

「そうかぁ。あの傷は電気が通った痕やったんか。コロシかぁ。」

  

  六月二九日(日)午前十時 石鎚表参道

 明美は、「一の鎖」に対峙していた。梅雨の明けていた日曜日、鎖に取りかかるまでに、前行者が先に行くのを、五分ほど待った。

「一の鎖」は33m、「試しの鎖」より楽ではあるが気を抜けない。トレッキングポールはザックに縛り付けていた。

 ほどなくして「土小屋ルート」との合流点に着いた。合流点は登山者でごった返していた。明美は、「土小屋」からの団体さんが出発した後にスペースを見つけ、腰を下ろした。

(お昼までに頂上着けるかしら。)

 団体は「二の鎖」を回避し、巻き道を行くようであった。そこへ、下より、

(あっ、ベッコウおやじだ。どこで抜いたんだろう。)

「君、また、鎖に行くの?」

「は、はい。」

初めて話しかけてきた。

(えっ、またってどういうこと?わたしの行動を監視してたの?)

「ふーん。つよいのね。」

 ベッコウおやじは休憩せずにそのまま頂上へ向った。

(なんか、気持ち悪い、山でストーカー?)


 山に登る人はいい人ばかりであろうか。確かに気さくな人が多く、そう感じるのだが、最近ではルール、マナーを知らずに登ってくる。そのルールも各自で曖昧ではあるが。

 登山道の真ん中、はたまた頂上の狭い広場を占領して食事を採る中高年グループ。飴の包み紙、タバコの吸い殻を平気で山中に投げ込む家族連れ。奇声を上げながら駈け下りてくる山ボーイ集団。下に登る人がいるのにゴロゴロ浮き石を落としながら登る外国人登山者。

 最悪なのが、盗みを働くやつ。ピストンをするためデポしている荷物から、カメラ等を抜いていく。

 山での性犯罪は聞いたことが無かったが、そういう時代が来たのかもしれない。


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