初めての兄弟ゲンカ~やめて!私のために争わないで!~
さっそくですが、すみません!!!m(_ _)m
アレクセイ君を出したいがために
話の都合上、ナジアス殿下の殴り込みではなく、雪崩れ込みになってしまいました( ̄□||||!!
きっとアレクセイ君がいなければ、ナジアス殿下の事ですから、殴り込みをしてくれていた事でしょう。
『お兄ちゃん詩織と結婚して!そしたら、詩織とずっと一緒にいられるもの』
『実里は可愛いなぁ』デレッ
『あはは!見てほら龍兄の顔!シスコンはきっと死んでも治らないんだから、ないない。転校しても、実里ちゃんと私はずっとずっと友達なんだから!心配しなくても大丈夫だよ。それに、龍兄は実里ちゃんみたいな子が好きでしょ?』
『もちろんだ』
龍兄は恥ずかしげもなく、即答していた。
―――――実里達が転校していく前、小5の頃の出来事である。
*************
そうだ。龍兄のタイプは私とは正反対の実里ちゃんみたいな子だったはずだ。
頭が良くて優しくて、女の子らしくふわっとした見た目なのに、とっても頼りがいのある親友は、考えなしにとりあえず動く私とは違う。
「え~と…龍兄優しいから、私を助けようとしてくれてありがとう!でも、(力づくでも)どうにかするよ!大丈夫!」
そう結論づけた私に龍兄が口を開こうとすると…
カチッ…ガチャッ
突如、部屋の鍵が“内部から”開けられた。
(え、誰!?)
扉の方を見ると、なんと、部屋には私と龍兄以外に、もう一人いたようだ。私より少しだけ年上の小さな男の子で、サラサラとした銀髪、薄いアイスブルーの瞳は子供らしくなく、冷めたい眼に見えた。
人の気配には敏感な私が、全っっっ然気づかなかった。全部聞かれてたって……事?ど、どうしよう!彼には意味の解らない話だっただろうから、きっと大丈夫だよね!?頭のおかしな令嬢とでも思われているぐらいのはず!!!(泣)
龍兄もビックリして口をあんぐり開けていた。紅い顔がいつのまにか青白く変わっている。
謎の男の子によってドアが開かれると、お父様とナジアス殿下が床の上に「わあぁ!!」と、叫び声をあげながら雪崩れ込んできた。
…間違いなく盗み聞き・覗きの類いをしていた二人。
分厚いドアなので、殆ど声など聞こえていないと思うが、小さな鍵穴からでも頑張って覗いていたのだろうか。お父様が下敷きになっていることから、率先して行動していたのはこヤツだと思われる。
男の子はナジアス殿下にだけ、片膝を付いて手を差し伸べた。
それを当然のように握り返し、立ち上がる殿下。
どうやらこの二人は主従関係のようだ。
「アレクセイ、何か問題でも起こったのか!?」
「はい。セントバル様が婚約者に名乗り出られ、ミレーネ様を口説かれていましたので、早急にナジアス様をお呼びしました。」
「何っ!?セントバル、お前!さっき自分から婚約辞退したじゃないか」
「兄上にはわかりゃにゃい理由がありゅのでしゅ!」
ベーっと舌を出し、兄に対しあかんべーをするセントバル殿下(龍兄)。完全に3才児の行動である。中身の年齢を知る私としては、つい冷めた目で見てしまったが、前世の記憶を取り戻す前は、お転婆な幼児だったのだろう。
昔を知る者にとっては失笑ものであったが、黙っておいてあげることにした。
「…なんだと!?」
挑発にのって声を荒げるナジアス殿下。彼の心の中は荒れ模様だった。
(いつも警戒心一杯の可愛くない奴なのに、何でこいつミレーネ嬢にこんなになついているんだ!?まぁ、彼女は可愛いからそれも仕方ないかもしれんが…くっ!気に食わん!!生意気すぎる!!俺にはわからない理由とか何なんだ!!!)
「お前、さっきから見ていればミレーネ嬢に抱き付かれたり、何て色々羨ま…けしからん奴なんだ!!王族足るもの、もっと節操をもて!」
「だきちゅいたのは、ボクの意志じゃにゃいもんね。しっちょ《嫉妬》は見ぐるしいでしゅよ、兄上」ふふんと鼻を鳴らすセントバル殿下。
「誰がお前に嫉妬などするか!このマザコン野郎」
ガーン!!!!【セントバル殿下に9999のダメージ】
「どうせ可愛いとか言って抱き付かれたんじゃないのか?はんっ、それって恋愛対象外じゃないか。な!お前もそう思うだろ?アレクセイ」
「ナジアス様。残念ながら、お二人は随分とお互いを思い合っていられる仲のようにお見受けしました。嬉し涙を流しながら抱き合っておられました」
ガガガガーン!!!!!!【ナジアス殿下にクリティカルヒット!99999のダメージ】
あれ、これなんだろう。議題は私なハズなのに、私抜きで勝手に兄弟ゲンカが勃発してる。
…お父様。頼むから愉しそうな顔で見学しないで下さい。元はといえば、元凶はあなたなんですよ。
「…お…お前にミレーネ嬢は渡さない!!一体どんな手を使って彼女を懐柔したのだ!」
「兄上には関係にょないこちょでしゅ!みれーにぇはボクがまみょる《守る》ときめちゃのです!引っ込んでちぇくだちゃい!!!」
「お前っ!ミレーネ嬢のお名前を呼び捨てにするとか…ほんと羨ま…けしからん奴め!!」
なんだかヒートアップしてきてしまった。あれ?でもこれは、乙女が一度は夢見る事態というヤツではないだろうか。
お父様は愉快そうに眺めているし、私もちょっとだけ楽しんでみたくなってきたので、あの台詞を口にしてみました。
「二人ともやめて!私のために争わないで!」
一度言ってみたかったんだよね。えへへっ。
まぁ、こんなので止まるわけはないけどね。
ズキュンッ!
ん?今、変な音が聞こえた気が…
「俺がミレーネ嬢の婚約者だ。お前には絶対渡さない!俺のから大切な人を奪うつもりなら、弟とて容赦はしないからな!!」
何故か心臓を押さえながら喋るナジアス殿下。
ミレーネは火に油を注いでしまったのだった。
「…こにょヤンデレェ予備軍め!だきゃら、兄上ににゃどまかしぇていりゃれにゃい《任せていられない》のでしゅ!」
「“やんでれ”?何だそれは」
「みれーにぇにとって、あぶにゃい人間のこちょでしゅよ」
「何だと!?俺がいつ彼女を傷つけたというんだ!」
「まだ傷ちゅけてないでしゅ。予備軍と言っちゃじゃないでしゅか。これきゃら兄上はみれーにぇに絶っっっ対ひどいこちょをしましゅ。これは絶対なのでしゅ!」
ブチッ
「…もう我慢ならん!訳のわからん事ばっかり言いおって!イカれた頭の者などミレーネ嬢は選ぶまい!」
「失礼にゃ!ボクはイカれちぇなどいましぇん!ねっ!みれーにぇ!」
話を合わせろ、俺に味方しろと、龍兄は合図としてウインクしてきた。
「………え、あ、うん。そ、そうですわね!」
ビックリしたー。急にこちらに振らないでほしい。今、夕食は何かな~とか、ボケーっと考えていたのだから。
「…ミレーネ嬢はセントバルを選ぶのか?」
うるうると、子犬のような目攻撃が炸裂しました。
完全に目の錯覚だが、私には黒いシェパードが主人にだけ甘えるように、くーんと鳴いているように見えた。
きゅんっ!
ギャップ萌とはこういう事を言うのだろう。私は確信した。
(ど、どうすればいいの!?龍兄を裏切れないけど、龍兄を選んでナジアス殿下犬を切り捨てるなんて、そんなヒドイ事私には出来ない!)
私はめちゃくちゃ考えた。何かここを切り抜ける手はないだろうか。
(王命だから逃げられないし、かといってどちらとも、はっきり答えられない。第一、王族との婚姻なんてやっぱり面倒くさいのよね…。う~ん…う~ん…うう~ん?…あ!良いこと思い付いた!!)
「私には決められません!だって私は4才だから!」
そう、私は世間的に見て、まだ何も出来ない幼児なのだ。こんな歳で人生を左右しまくりの判断など出来るわけがない。世間的には。
(中身の歳がバレなきゃ大丈夫!)
「私はまだ自己判断力のある歳じゃありません。自分の言葉に責任を持てる歳になってからの方が、お互いが傷つかずにいられますわ」
そこでキラキラ…というかギラギラと眼を輝かし始めたのがお父様だった。
「ミレーネ!さすが我が娘だ!ナイスアイデアだよ!!」ボソッ「…ナジアス派とセントバル派の貴族の両方が胡麻をすってくるぞ。フフフフ…」
近くにいたせいでお父様の独り言まで聞こえてしまった。うん、聞かなかったことにしよう。
「私の娘はまだ幼いし、御二人のどちらかを選ぶなんて大それた選択は子供の肩には重すぎるだろう。我が娘がもう少し大きくなってから、キチンとした判断を聞くというのはどうでしょうか?」
「…それはどのくらい先の話だ?」
「15才…11年後はどうでしょうか?女性の成人したと認められる歳ですし。ミレーネはどう思う?」
「意義なし賛成です!!」
その間に実里ちゃんみたいな子を探して、龍兄に紹介すればいいし、ナジアス殿下には私の事など忘れてもらおう。せっかく戴いた第二の人生だもの。ヤンデレになる可能性のあるキャラとは、縁遠い人生を歩みたいものだ。
「その間、セントバル殿下にはお手紙を書きますね。ナジアス殿下は11年後にお会いしましょう。ほら、会えない時間が愛を育むと言いますでしょう?(その間に私の事など忘れてくれ)」
「え?愛?君と育む?」
ナジアス殿下は別の世界(妄想)へと旅立った。
「ちょ、みれーにぇ!?そんにゃので回避できりゅのかしぇんぱい(心配)なんじゃけじょ!??」
「きっと大丈夫よ!当たって砕けろの精神でいかなきゃ、きっとこの世界は生き延びられないわ!」
「しょ、しょうかみょしりぇないけど…。じっしゃい《実際》回避のしかちゃなんて知らにゃいし…」
「でしょ?…って事でお父様、後の処理はお願い致しますわね!お父様なら絶対上手くやってくださるはずだもの。他の者になんか絶対任せないでね!」
(なにせ、私の人生が懸かっているのですもの)
「さ…さすが我が娘だ。私をコキ使えるのはお前か母さんくらいのものだろうよ。とほほ…」
そうして、私とお父様はやっと城を離れることが出来たのでした。
帰りの馬車の中から後ろを振り返ると、またあの声が聴こえた気がした。
『君は誰にも渡さない』
魔法をかけてきたのは誰だったのか。この時は結局わからず終いだった。
また襲われるかもしれない…。魔法をしかけられた時、妙に粘着質な想いが流れ込んできたのだ。
次攻撃されても、気絶しないよう訓練しようとミレーネは心に誓ったのだった。
―――――そうして、11年の歳月が過ぎた。
お読み下さり、誠にありがとうございます!!m(_ _)m
次回、『そして物語は廻り始める』をお送りいたします。
やっとゲーム本編が始まります。お待たせいたしました!(^_^;)
そして、実質このお話の後日談となる、番外編『アレクセイの手記~空白の11年間の記録~』を新しく連載でUPしました!
アレクセイ君の視点でナジアス殿下やミレーネ達を何話か描いていく予定です。
よろしければ、そちらもお付き合い頂けると嬉しいです!(*^.^*)