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黒い影がうつる時

 周りがざわついている。このまま誤解されたままでは、私の人生がナジアス様ヤンデレルートに突入してしまうかもしれない!


 「あの!私、ナジアス様と婚約などしていませんが…」


 『おめでとうございます!ナジアス殿下!ミレーネ様!』


 「いや、だから違っ…『なんと!ミレーネ様はナジアス殿下にお決めになられたのか』

 

 …だめだ。誰も聞いちゃいない。


 私の気持ちとは裏腹に、ワァッと会場は盛り上がりをみせた。もはや私の声はかき消されて届かないのであった。


 「あら、おめでとう。ミレーネ。小さかった貴方も、いつの間にか大人の女になっていたのね。なんだか寂しいわ」


 「お母様違っ『ノンノン!マダームにはワターシがいまーす!』『いや、僕がいますから!』『いや!私が!』『いやいや、私がお側にいますよ!』


 ……別の意味でさらに騒がしくなってしまった。さずがお色気ムンムンのお母様。10代の少年から50代の渋いジェントルマンに至るまで、あらゆる美形を侍らせている。


 そして、お母様は自らのハーレムに埋もれて見えなくなってしまったのであった…。

 


 ゲームの進行にでも関わるのであろうか。私が否定しようとしても誰かに邪魔されるし、もっと騒がしくなる。


 (しかし、こうまでされると何がなんでもこの流れに逆らいたくなってくるわ~。まっ、しばらく様子見してみるかな)


 『成人のお祝いに婚約披露とは、実にめでたいですな!』

 『これで次代の王座にナジアス殿下が王手をかけましたわね!』

 「兄上~!僕は認めませんよ!!」

 『ミレーネ様お考え直し下さい!セントバル殿下こそ貴方のパートナーに相応しい方ですよ!』

 『美男美女カップルで羨ましいですわ~』


 …耳お済ませば皆さま本当に言いたい放題である。


 「ぷっ!いや~!知らなかったよ。ミレーネがナジアス殿下に決めていたなんてね!!あはははははっ!おめでとう!」


 (笑いながら拍手してくるな、父よ。あんた絶対私がまだ婚約者を決めてないの知っているだろっ!)


 「いやぁ~ん!ナジアスさまぁ~ん!」バタッ 


 (あ、従姉のアンジェリカが倒れた。ってか、叔父夫婦と一緒にあなたも来てたのね)


 アンジェリカには、正直、誕生会に来ないでほしかった。彼女はいわゆる恋の邪魔をしてくる悪徳令嬢的な位置にいる。ナジアス殿下の好感度が高いと、絡んでくるのである。【ナジアスルートに詳しい龍兄談】

 高慢ちきで派手好きな娘で、私の最も苦手なタイプだ。



 (あ~あ、どうしよっかなー)


 王座を賭けた壮大な誤解が始まってしまった。会場はまさに混沌と化している。


 ため息をついている私をよそに、ナジアス殿下はレディーキラースマイルを全開にして優雅に歩みを進めてきてきた。


 これ以上何をする気だろうか。イケメンに微笑まれても私の眼がつぶれるだけである。


 (まっ…眩しい!!!これが乙女の理想像を形にした王子の輝きなのか!!!!)

 このままではアラブの王子っぽい顔(好みの顔面)に眼と心臓が殺られてしまう。


 私の前に立つと、スッと片膝をついて、手にキスをしてきた。


 「ミレーネ嬢、“私と”踊ってくれますか?」

 

 (しかも、めっちゃ王子っぽく成長してるんですけど!?アレクセイ~!どういう事なの~!こんなの聞いてないよ~!!困るって!ナジアス様は変態で馬鹿な俺様王子って言ってたじゃない!!これじゃ主人公のはずの私が落とされちゃうから!)


 目線でキョロキョロアレクセイを探したが、見つからなかった。

 

 「ご、ごめんなさい。私、今回は先約がありますの」


 つい焦って断ってしまった。もちろん先約などない!!!


 「何っ!?一体どこのどいつだ?」

 殿下のお顔が鬼の形相に変わる。美男子が怒ると威圧感がヤバかった。すごく怖かったので、私はふいに頭に浮かんだ、対抗出来そうな人を盾として前に差し出した。 


 「も、もちろん、この方よ」

 近くでただの野次馬と化していたお父様の腕を引っ張り、私とナジアス殿下の間に押しやった。

 

 「へ?」

 お父様のにやけ顔が引きった。何せ、会場の視線だけじゃなく、殿下の失せろ的な視線を真っ直ぐに浴びているのだから。

 

 (え~い!もうヤケだ!!)


 「今日は私の成人のお祝いだもの!最初はここまで育てて下さったお父様と踊りたいわ!」


 「うぅっ…そうだったのか。私のミレーネよ!!なんて可愛い娘なんだ!もちろんだよ。さぁ今すぐ踊ろう!!!」



 この時、私はお父様が馬鹿で良かったと初めて思った。



 父と二人でワルツを躍った。今回は攻略対象者を確かめ、対策を練るのが目的なので、躍りながら、さりげなく次なるターゲットを定める。よし、二人で固まっている公爵子息のリッパーにしよう!


 最後の礼を取ると、私は公爵子息の双子の所に急行“しようと”した。だって、ナジアス殿下が寄って来そうだもの!!



 だが、背後から殿下が近寄ってくる気配はなかった。それどころか、会場は突如静かになり、音楽も鳴りやんでいた。



 そこで、誰かが悲鳴をあげた。


 「…そんな……」

 アレクセイが、ナジアス殿下の側で血を吐いて倒れていた。

 

 「いやぁぁあぁぁあーーーーーー!!!」

 やっとヤンデレ展開のダーク面を解放できました(;・∀・)


 メインストーリーに入っていきます。攻略対象者との攻防を、ダーク兼コメディテイストに楽しんでいただけたらと思います!



 今回もお読み下さり、誠にありがとうございます!

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