17,スイカ割り(夢)
ああ、これは夢に違いない・・・・・・・
わたしは町内会のイベントで海に遊びに来ている。小学二、三年生の頃、夏休みの出来事だ。
わたしたち子どもは砂浜でスイカ割りをして楽しんでいた。
当たった外れたと歓声がわく。元来引っ込み思案で何事にも遠慮がちなわたしは一番最後の順番だった。上級生や大人に手伝ってもらった年少者たちがスイカを割っていく。一番最後のわたしは自分の番が回ってくる前に用意されたスイカがすべて割られてしまうのではないかと内心ハラハラしながら見守っていた。
案の定、わたしの前の子が最後のスイカを割ってしまった。歓声がわき、割った子どもは大喜びし、いっしょに笑っていた大人たちが一人残ったわたしに気づいて実に気まずい困った顔をした。
いつものことだ。わたしはこういうことには慣れっこになっている。
おお、あった、と誰だかおじさんが声を上げて大きなスイカを持ってきて位置に置いた。
わたしはそのスイカを見て、なんだかひどく嫌な気がした。
そのスイカはひどく黒く、表面が目に見えてぶよぶよしていた。
わたしは、嫌だ、と思ったが、さあボクの番だぞ、と笑顔のおじさんに目隠しをされてしまった。木製のバットを持たされ、ぐるぐる回らされた。ああ、目が回る、気持ち悪い。
さあ行け、とわたしは背中を押された。ああ、ひどい、頭がグラグラしてひっくり返りそうになりながらわたしはなんとか前に進み、右だ、左だの声に翻弄されながらバットを振り上げた。
スイカに当てる気なんかなかった。外れて笑われるのも惨めで嫌だが、それ以上にあの黒くてぶよぶよしたスイカを叩き割るのが嫌で嫌で仕方なかった。
しかし、
わたしは知っている、嫌だ、と思う方に、わたしは常に引き寄せられてしまうのだ。
振り下ろしたバットに、グシャッと、鈍い破壊の衝撃が伝わった。
大当たりー!と歓声が上がった。よかったよかったと大人たちの安堵の笑い声が聞こえる。
バットを持ったまま立ち尽くすわたしは目隠しを取られ、バットを取り上げられた。
わたしは自分の叩き割ったスイカを見下ろした。
黒い皮が破れ、中の赤い果肉が弾け、その中に、
赤い汁まみれになった男の顔があった。
男は赤く濡れながら、わたしを見て、笑っていた。
ああ、これは夢に違いない・・・・・・・
わたしは小学生の自分を見上げている。不自然に低い位置から。
小学生のわたしは何故かギャーギャーと泣き喚いている。
どうしたんだい、かわいそうな子どものわたし。
スイカ割りなら出来たじゃないか、ほら、こうして・・・・・・
ああ、これは夢に違いない・・・・・・・




