06 シール貼付、二人目
リーフェスさんとしばらく見つめあう。
透明な輝きを放つすみれ色の瞳に見つめられて、なぜか背中には冷や汗が流れた。
声もあれだけど目もあの感じがする。
泣いて謝りたくなるあれ。
気を抜いては座りそうになる体にぐっと力を入れて胸をそらす。
どれくらい見つめあっていたのか、ふいにリ-フェスさんがこくりと頷いた。
そして小さく会釈を残して無言で部屋を出て行ってしまう。
・・・な、なんだったの?
まさか見えない力でわたしの何かがわかってしまったとか?
よくわからなかったがそっと息を吐き出し振り返れば、うっすらと頬を染めて見上げるウォレスがいた。
どうしたお前。
やはり最初からおかしかったが、きっと今もおかしいのだろう。
少し可哀想になって、たぶん視線もそうなったはずなのに。
ウォレスはさらに頬を染めるとうっとりと・・・うん、見なかったことにしよう。
ソファに座りなおし、ティーレの実の残りを食べる。へたはすでにない。
「では早速で悪いが緑の館に行ってくれ。家具も一通りは揃っているはずだ。定期的に手入れはしているが、気になることがあったらウォレスに言うか私に言ってこい。私は少し所用があるので同行は・・・ウォレス、いつまでも阿呆面を晒すな、みっともない。館までミナモを案内してやれ。」
立ったまま見下ろした形でそう言ったフラウが扉に向かう。
その背中に「フラウありがと」と言って手を振った。
手は見えてないと思ったけど肩越しに振り返ったフラウが左手を軽く上げる。
その所作は気品と慣れを感じさせて、やはり一国の王子を名乗るだけはあると思う。
見たところ中学生くらいなのに、命令し慣れた態度と口調はちゃんと王子様。
フラウが第三王子ということはフラウのお兄ちゃんがあと二人はいるということ?
あれ?そういえばみんなの年齢きいてないけど・・・ま、いっか。
見た目とあんまり差があるとは思えないし。
お城の外観はこのうえなくヨーロッパ調だった。
歩いた道のりはわたしには複雑で、あの部屋に戻れない自信がある。
ウォレスに案内されて緑の館へ向かう途中、お城の廊下やお城の外でいろんな人とすれ違う。
その度に女の人がちらちらとウォレスを見ていた。
見た目のかっこよさは認めよう。
でもこの人は知ってはいけないものを持っている気がする。
見た目はいいのに・・・見た目だけは。
なんだか残念な気分でウォレスにも“鑑賞用”のマークの入ったシールを貼り付けた。
もちろん心の中で。