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夜明けの魔法使い  作者: 鈴輪
序章
6/7

第6話 スリス村の神子

 ドンッ、城の上空で爆発が起こった。続け様に2発、3発と爆発が続く。10を超えた頃には誰もがそれぞれ警戒の体勢をとっていた。


 そしてついに事態は動く。爆発の中から1人の少年、ウシスが飛来した。彼は最上階の窓から城へと侵入する。


 ウシスの入った部屋に数名の警備の騎士もまた入ってくる。


「爆ぜろ」


 しかし騎士たちの警戒も虚しく、ただ1度部屋の中央に起きた爆発で皆吹き飛ばされた。


 廊下に出れば、向かってくる増援たちと目が合った。それもやはり一撃を持ってねじ伏せられる。


 その後ウシスは騎士たちの兜を順に外し、次々と放っていく。

 そして意識のある者を見つけ問いかけた。


「王女はどこに捕えられている?」


「こんな子供にやられるなんて国王派は烏合の衆だな。無理やり出てきて正解だった」


 そこに、軽装で片手に剣を握った少女が歩いてきた。

 ソルマ、謀反の首謀者として捕らえられていた王の妹。

 その姿を確認したウシスは手短に話す。


「革命する。ついてこい」

「そんなことしたら、ただの子供は処刑されるぞ」

「金と権力を奪えば許される。学校で習った」

「……そうか。ならお前が着いてこい。国王の居場所を道中盗み聞いてきた」


 事を理解したソルマは踵を返して階段を向けて走り出す。

 ウシスの実力を認め、わずか2人での革命を決行するつもりだ。

 そして、それを確実なものとすべく、走りながら自身の持つ情報を伝える。


「警戒すべきなのは王の三剣と呼ばれるものたち。バハト、アスバ。こいつらは飛び抜けた実力を認められた王の懐刀だ。非常時には遊撃手としてすぐに駆けつけてくる」

「この前もすぐ来たもんな」

「それ以外の奴らはさっきの騎士たちと大差ないから適当でいい。ただ、時間をかければ大聖堂から僧侶連中がやってきて厄介だ。短期でカタをつけることを心がけろ」

「わかった」


 2人が階段を降りると、廊下の先から1人の騎士が駆けてくる。遊撃手であるバハトだ。

 強化魔法をかけられた脚力では、常人をはるかに凌ぐ速度で距離を詰める。


 しかし、バハトが踏み込もうとした足の先で爆発が起こる。


 彼は全身の強化魔法を更に強め、躊躇いなくその足を踏み込んだ。


 爆炎の中、踏み込んだ足は深く沈み、バハトは体制を崩す。

 床は崩れ、落ちていく。下の階もその下も同じように床が崩れ、穴が開こうとしていた。


 バハトは崩れた床を無理やり踏みぬき、宙を飛び、対岸へと足をかける。

 そのままの勢いで剣を振り下ろす。


 しかし、その剣は透明な壁にぶつかり、そして体も続いていく。バハトは体勢を崩した。


 その直後、頭上から押さえつけるように更なる爆発が起こり、バハトは抵抗もできずその爆風に押され落ちていく。


「この高さなら死にはしな……え、この城地下あんの。それもだいぶ深い……」


 ウシスは穴の縁から落ちていくバハトを見送る。


 その後ろで、扉が勢いよく開いた。中から飛び出した騎士がウシス目掛けて剣を振り下ろす。


 ガン!と重い音が鳴り響いた。二人の間に入ったソルマが剣を受け止めている。


「強敵を倒したのはいいが、警戒を怠るな!」


 咄嗟にソルマはウシスを拾い抱え、穴に飛び込んだ。

 そして穴の縁掴み、別の階へと侵入する。




「聞いた話では奴はこの部屋で迎え撃つつもりらしい」


 その言葉の後、部屋の扉は爆破され、どよめきが聞こえる。


 扉の先には広い空間の先に数名の騎士に囲まれ、細身の男が玉座に堂々と佇んでいる。

 ソルマは告げる。


「あの男がアグニス。私の兄にして、現国王だ」


 ウシスは頷き、悠々と前に進む。騎士たちは行く手を阻むように陣取り、剣を構える。

 やがてウシスは歩みを止めた。手のひらを前に突き出し騎士越しに玉座に照準を合わせる。


 そうして彼らは目が合った。アグニスは毅然としたまま、その口が動かす。

 そこからこぼれる言葉は、


バリン!


 と響く破壊音に遮られる。


 一瞬にして皆の視線は音の主を探し、廊下へと集まる。

 そこには破られた窓とその破片の中を転がる1人の少女がいる。


「リア、何しに来た」

「ウシスを止めに」


 リーヤは立ち上がり、周囲の視線も、全身の傷すらも気にとめず進む。


「"スリス村の神子"リア。村の代表として、同胞を止める」

「....」


 その目はまっすぐにウシスへと向けられている。

 沈黙の中、ため息が漏れた。ウシスはゆっくりとリアの方へと向き直る。


「"魔人殺し"のウシス。...理想のため、押し通る」


 その言葉の直後、リアの右手から火の玉が飛び出した。


 二人の間で2つの爆発が起きた。その1つが火の玉を撃ち落とす。その中から土が飛び散った。


「不意打ちのつもりか?隠した土塊も、左手の風も俺が教えたものだろ。対処の仕方は忘れたか?」


 リアは言葉に応えることなく、走り出した。移動しながら魔法を打ち続ける。

 前から右から後ろから左から、火が水が土が風がウシスに向けて降り注ぐ。


 その全ては空中で爆ぜる。何一つとしてウシスに届くことはなかった。


「力量の差は理解できたか?とっとと投降しろ」

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