第6話 スリス村の神子
ドンッ、城の上空で爆発が起こった。続け様に2発、3発と爆発が続く。10を超えた頃には誰もがそれぞれ警戒の体勢をとっていた。
そしてついに事態は動く。爆発の中から1人の少年、ウシスが飛来した。彼は最上階の窓から城へと侵入する。
ウシスの入った部屋に数名の警備の騎士もまた入ってくる。
「爆ぜろ」
しかし騎士たちの警戒も虚しく、ただ1度部屋の中央に起きた爆発で皆吹き飛ばされた。
廊下に出れば、向かってくる増援たちと目が合った。それもやはり一撃を持ってねじ伏せられる。
その後ウシスは騎士たちの兜を順に外し、次々と放っていく。
そして意識のある者を見つけ問いかけた。
「王女はどこに捕えられている?」
「こんな子供にやられるなんて国王派は烏合の衆だな。無理やり出てきて正解だった」
そこに、軽装で片手に剣を握った少女が歩いてきた。
ソルマ、謀反の首謀者として捕らえられていた王の妹。
その姿を確認したウシスは手短に話す。
「革命する。ついてこい」
「そんなことしたら、ただの子供は処刑されるぞ」
「金と権力を奪えば許される。学校で習った」
「……そうか。ならお前が着いてこい。国王の居場所を道中盗み聞いてきた」
事を理解したソルマは踵を返して階段を向けて走り出す。
ウシスの実力を認め、わずか2人での革命を決行するつもりだ。
そして、それを確実なものとすべく、走りながら自身の持つ情報を伝える。
「警戒すべきなのは王の三剣と呼ばれるものたち。バハト、アスバ。こいつらは飛び抜けた実力を認められた王の懐刀だ。非常時には遊撃手としてすぐに駆けつけてくる」
「この前もすぐ来たもんな」
「それ以外の奴らはさっきの騎士たちと大差ないから適当でいい。ただ、時間をかければ大聖堂から僧侶連中がやってきて厄介だ。短期でカタをつけることを心がけろ」
「わかった」
2人が階段を降りると、廊下の先から1人の騎士が駆けてくる。遊撃手であるバハトだ。
強化魔法をかけられた脚力では、常人をはるかに凌ぐ速度で距離を詰める。
しかし、バハトが踏み込もうとした足の先で爆発が起こる。
彼は全身の強化魔法を更に強め、躊躇いなくその足を踏み込んだ。
爆炎の中、踏み込んだ足は深く沈み、バハトは体制を崩す。
床は崩れ、落ちていく。下の階もその下も同じように床が崩れ、穴が開こうとしていた。
バハトは崩れた床を無理やり踏みぬき、宙を飛び、対岸へと足をかける。
そのままの勢いで剣を振り下ろす。
しかし、その剣は透明な壁にぶつかり、そして体も続いていく。バハトは体勢を崩した。
その直後、頭上から押さえつけるように更なる爆発が起こり、バハトは抵抗もできずその爆風に押され落ちていく。
「この高さなら死にはしな……え、この城地下あんの。それもだいぶ深い……」
ウシスは穴の縁から落ちていくバハトを見送る。
その後ろで、扉が勢いよく開いた。中から飛び出した騎士がウシス目掛けて剣を振り下ろす。
ガン!と重い音が鳴り響いた。二人の間に入ったソルマが剣を受け止めている。
「強敵を倒したのはいいが、警戒を怠るな!」
咄嗟にソルマはウシスを拾い抱え、穴に飛び込んだ。
そして穴の縁掴み、別の階へと侵入する。
「聞いた話では奴はこの部屋で迎え撃つつもりらしい」
その言葉の後、部屋の扉は爆破され、どよめきが聞こえる。
扉の先には広い空間の先に数名の騎士に囲まれ、細身の男が玉座に堂々と佇んでいる。
ソルマは告げる。
「あの男がアグニス。私の兄にして、現国王だ」
ウシスは頷き、悠々と前に進む。騎士たちは行く手を阻むように陣取り、剣を構える。
やがてウシスは歩みを止めた。手のひらを前に突き出し騎士越しに玉座に照準を合わせる。
そうして彼らは目が合った。アグニスは毅然としたまま、その口が動かす。
そこからこぼれる言葉は、
バリン!
と響く破壊音に遮られる。
一瞬にして皆の視線は音の主を探し、廊下へと集まる。
そこには破られた窓とその破片の中を転がる1人の少女がいる。
「リア、何しに来た」
「ウシスを止めに」
リーヤは立ち上がり、周囲の視線も、全身の傷すらも気にとめず進む。
「"スリス村の神子"リア。村の代表として、同胞を止める」
「....」
その目はまっすぐにウシスへと向けられている。
沈黙の中、ため息が漏れた。ウシスはゆっくりとリアの方へと向き直る。
「"魔人殺し"のウシス。...理想のため、押し通る」
その言葉の直後、リアの右手から火の玉が飛び出した。
二人の間で2つの爆発が起きた。その1つが火の玉を撃ち落とす。その中から土が飛び散った。
「不意打ちのつもりか?隠した土塊も、左手の風も俺が教えたものだろ。対処の仕方は忘れたか?」
リアは言葉に応えることなく、走り出した。移動しながら魔法を打ち続ける。
前から右から後ろから左から、火が水が土が風がウシスに向けて降り注ぐ。
その全ては空中で爆ぜる。何一つとしてウシスに届くことはなかった。
「力量の差は理解できたか?とっとと投降しろ」




