第5話 真昼の盲目
巨大な怪鳥が城へと続く大通りを進んでいく。身体からは力が抜け、されるがままに引かれている。
「生け捕りにしたせいで、想定よりもだいぶ時間がかかってしまいましたね」
「こんな大きいんだぞ。見せつけた方が箔が付くに決まってる」
ウシスとラトリーが怪鳥を引き、そう話していた。
すると城の方から神輿を担いだ男たちが見えてくる。彼らは陽気に歌いながら進む。周囲の者は手を振り、神輿の上の何かを称えていた。
神輿が近づきようやくウシスたちも神輿の上のその人に気がついた。
「あ、ウシスおかえり」
神輿の上からリアが彼らに顔を見せる。ウシスはラトリーと顔を見合わせ、再びリアを見やり呟いた。
「何が……あったんだよ?」
「先週、王女派が謀反を起こしたんだ。それも大聖堂が攻め落とされる事態にまでなった。そんな時、彼女は市民を束ね大聖堂の奪還を果たした」
大聖堂の一室でアスバか語った。机越しの向かいに座るウシスとラトリーは開いた口が塞がらない。
「これは俺の失態だ。事態が長引けば君たちが帰還し、解決することで箔をつけれると思っていたんだが、王女は捕らえられ、完全に事態が解決されてしまった」
「いえ、悪いのは帰還が遅れた私たちです。リアちゃんが勝手に動き出すなんて予想できませんよ」
事態を理解したラトリーも同様に頭を悩ませる。一方でウシスだけはあっけらかんとした様子で尋ねる。
「何が……問題なんだ?」
「君が引き抜きをするなら2番ではなく、1番を選ぶだろう?」
「実力なら俺の方が上だぞ」
「君はそれを示せていない。だから軍のお偉いさんは認めてくれないんだ」
「リアを決闘でもして倒せばどうだ?」
「あの様子なら、今更力を見せても支持を得るのは難しいでしょうね」
「なるほどな」
ようやく事態を理解したウシスは席を立つ。戸惑うふたりを他所に、振り返ることなく部屋を出ていった。
「頼りにならない奴らだ」
傷ついた廊下を通り抜け、大聖堂の外に出る。
強い日差しに目がくらむ。雲ひとつなく、澄み渡る空、ただ太陽だけがさんさんと輝いている。
「おそーい。というかなんで私だけ除け者なの?」
視線を落とせばリアが駆けてくるのが目に入る。その手には串焼きが握られていた。
「向こうで貰ったんだよね。ウシスの捕まえてきた鳥だってさ」
リアに導かれた先の広場でウシスもまた串焼きを貰った。
一欠片頬張るも筋が固く噛みきれない。もごもごと鶏肉と戦うウシスにリアが語りかける。
「私さ、いつもウシスの後ろに隠れてばかりだったよね」
唐突な話にウシスは相槌に困る。説明を求めようにも彼の口は鶏肉でいっぱいだ。顎の動きを早めながら話に耳を傾ける。
「でももうやめにした。私はちゃんと立ち向かう。私が守らなきゃいけないんだ」
リアはウシスに向けてそう宣言した。ウシスは未だ困惑したままだ。
それでも真っ直ぐな目からその覚悟だけは理解できる。
リアがは残っていた串焼きをペロリと平らげ、おかわりを貰いに行った。
取り残されたウシスがふと空を見上げてもやはり快晴だ。
口の中の鶏肉を無理やり飲み込む。続けて串に残るそれも飲み込んだ。
「どうしたものか」
『王女派が謀反を起こしたんだ』
ウシスは1人頷き、歩き出した。




