第4話 直談判
「国王を出せ!」
城門の前で仁王立ちをしたウシスがそう言った。それに対して門番たちは呆れた様子で帰るように伝え、相手にしない。
「俺を誰だと思ってる?“魔人殺し”ウシスだぞ」
つい先日まで辺境の村に引き篭っていた少年を知る者などそう居ない。
しかし彼は取り押さえられても暴れ騒ぎ、一向に帰ろうとしない。
「騒がしいね。いったい何事だい?」
城門から糸目の軽装な男が出てくる。男はウシスに歩み寄り、間近で彼を見つめた。
間を置き、彼は安堵した様子で話し出した。
「俺は“竜騎士”アスバ。特級騎兵で人の心を読む神技を持っている。あとは任せてくれ」
アスバは簡単に自己紹介し、早く帰るようウシスをせっつきはじめた。
しかし、ウシスは動かない。国王を出せと不動の意思を見せつける。
「騒がしいな。いったい何事だ?」
「くっ、間に合わなかったか」
城門からバハトが出てきた。ウシスはバハトを睨みつけ、アスバはため息をつく。
「そろそろ詫びるかこら」
「何をだ。間違ったことなど言った覚えは無い」
「2人とも落ち着け。そして帰ってくれ」
「騒がしいな。何事だ?」
城門からドレスの上に最低限の鎧を着た少女が歩いてくる。ウシスは期待の眼差しを向け、アスバは頭を抱え、バハトは剣に手をかける。
「良い格好!お前偉いやつだな、国王か?」
「よくわかっているじゃないか。私はソルマ・ヴィジェッタ・ユダ。この国、ユダの正当なる王位継承者だ」
「だったら、」
「国王ではなく王の妹だよ」
「騙したのか!」
「あんな悪しき王なんて、じきに私が潰してやる」
「国家転覆の宣言とはいい度胸だ。取り抑えよう」
「バハト!王族に怪我させる気か?!もう全員仲良く帰ってくれないかな!」
「あ、すいません。失礼します」
騒ぐ4人の傍らをダルシャが通り過ぎようとしていた。身をかがめて、早足で。4人とも一瞬言葉を失った。
「授業の準備があるので急ぎますー」
「このガキ連れて帰ってくれ!お前の生徒だろ!」
「離して、面倒事に巻き込まないで」
「人の困り事を面倒事扱いするなよ。嫌な奴だな」
「子供は大抵面倒だ」
「やんのかこら」
「国王派と戦うなら加勢するぞ」
「えぇ、何事ですか……」
町の中を駆けてきたラトリーは肩で息をしながら、状況を確認する。
すぐに何かを理解した様子でウシスを抱えて帰ろうする。そして抵抗する彼に言った。
「何があったか知りませんけど、アスバさんが昼頃までには何とかしてくれます。ここは帰りましょう」
「期限短くないかな!」
「まぁ、ラトリーが言うならギリギリ信用しよう」
そうして事態は収束した。ウシスたちは金属のぶつかる音とアスバの騒ぎ声を背に城門を離れていく。
帰り道でウシスはラトリーに何があったのか話した。早足のダルシャが見えなくなった頃に話が終わった。
「ウシスくんは実力を認めて欲しいわけですね?」
「俺は強いからな。ふさわしい特別な役割があるはずだ」
「思春期ですね」
ラトリーは小さく笑いながらそう言った。そしてあからさまなに不満気なウシスに言い聞かせる。
「何も急ぐ必要なんてないんです。人生は長いので、ゆっくりと積み上げて、大人になってから大成すればいいのですよ」
その言葉を受けて、ウシスは空を見ながら呟いた。
「俺は死ぬべきなんだ。そうあれは、」
「そんなことはありません」
「……」
「運命というものがあって、その人の行いによりその人の未来が決まります。誰もが運命から逃れられない。つまり今生きてることこそが、生きるべきだという証です」
「そうなのか」
空を見上げながら話を続ける。すると空を遮るような大きな建物が見えてきた。
「ここが我らスリスティ教団の本拠地である大聖堂です」
ウシスはここで待つよう言いつけられ、大人しく椅子に座っている。
暇を持て余し寝転び始めた頃、アスバが現れた。ウシスの隣に座り説明を始める
「残念ながら今すぐ卒業させるわけにはいかない」
立ち上がるウシスに静止をかけながら話し続ける。
「卒業ではないが、在学中の栄転には前例がある。30年前、特級魔法使い“豪雨”ジャドガがプランヤとの戦争での功績を讃えられ軍に引き抜かれた」
「戦争起こしてくる」
「やめてくれ。要は実績があればいいってことだ。ウシスには魔獣退治をしてもらう」
「“竜神”だな。行ってくる」
「隣国が祀る神様!戦争になるでしょ!」
「“大海壁”か?骨が折れるな」
「海の支配者を倒したら良い意味で大問題だけどね。もっと無名なやつだよ。数をこなして、功績を集めるんだ」
話が進まない中、ラトリーが戻ってきた。そして、アスバから説明を受け、ウシスを連れて大聖堂の外に連れ行く。
そこには一頭の馬が居る。彼女はウシスを抱えるように馬に乗った。
「ウシスくん、知ってますか?治癒魔法をかければ疲れも空腹も収まるんですよ」
「そうなのか」
「丸1日我慢してください」
ウシスが返事をする間もなく馬は走り出した。




