俺が守ってやらなきゃ
海水がほんのりと温かく穏やかな昼下がりに、エディが気持ち良さそうに泳いでいました。
エディは体長6cm、灰色の体に8本の黒い帯をもつコンビクトシクリッドという魚です。
近くに妻の姿を見つけると、声をかけました。
「サラ、こっちにおいで。小さなエビをたくさん見つけたよ」
サラはエディと同じく黒い帯の入った灰色の体を揺らめかせながら、エディに近づきました。
エディとは違い、腹部と背びれに入ったピンク色がとても綺麗です。
「いつもありがとう、エディ。いただきます」
サラのきゅるんと輝く瞳を見て、エディは今日も「サラは俺がいないと生きていけないもんなぁ」と得意な気持ちになりました。
美味しそうに小エビを食べているサラを少し眺めたあと、エディは
「ゆっくり食べておいで。僕は縄張り内をパトロールしてくるから」
と声をかけ、サラから離れていきました。
しばらく泳ぐと、岩の窪みに別のメスが待っていました。
「お待たせ、リリー。あっちに美味しそうな藻を見つけたよ」
「あら、嬉しい。いつもありがとう、エディ」
リリーは涼やかな瞳をキラリと輝かせながらにっこりと微笑みました。
2匹は仲良く泳ぎ始めます。
リリーの腹部と背びれにはオレンジ色が入っていて、サラに負けず劣らず美しい魚です。
藻を食べているリリーを見て、「リリーも綺麗だよなぁ」とエディは心の中で呟きました。「でも、リリーはひとりでも生きていけそうなんだよな。その点、サラは俺がいないと生きていけないし。このままサラを守りつつ、こっそりリリーと遊ぶのが一番だよな。俺の人生、イージーモードだ」とエディは心の中でほくそ笑みました。
しばらくリリーと遊んだあと、エディはサラのもとに戻りました。
「サラ、ただいま。縄張り内に異常は無かったよ」
サラはきゅるんとした瞳をエディに向けて、
「ありがとう、エディ。頼もしくてステキ」
と微笑みました。
この瞳を見るたびにエディは、サラのことを守れるのは自分しかいないと確信するのでした。
エディが「ほんと、サラは俺がいないと生きていけないんだよな」と得意気に泳ぎ出した瞬間、大きな黒い影がシュッと現れて、エディをひと飲みにして去っていきました。
あっという間の出来事に、黒い影が何だったのかも分かりません。
サラは一瞬、体を硬直させましたが、黒い影が見えなくなると、
「あ〜、びっくりした」
と呟きながら岩場伝いに移動しはじめました。
しばらく泳ぐと
「サラ!」
と声がかかりました。
オスのコンビクトシクリッドが声をかけたのです。
「アーロン!」
サラは嬉しそうにアーロンに泳ぎ寄りました。
「サラ、小魚の群れを見つけておいたよ。一緒に食べに行こう」
「いつもありがとう、アーロン」
サラは瞳をきゅるんと輝かせました。
その瞳を見てアーロンは、「サラは俺がいないと生きていけないもんなぁ」と心の中で得意気に微笑みながら、サラを伴って泳ぎ出しました。