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導き手

■導き手

 イズルとセリス2は火山地帯を抜けると、草原に出た。

 丘陵の辺りに、奇妙な人影が見えた。

 先に見つけたのはイズルだった。

「導き手です」

 アリスはその奇妙な姿に喉に何かを詰まらせた様な気分になった。

『何アレ!』

『ペーパークラフトの恐竜の骨格模型の馬版の様な機体に、鎧を付ける前のイズルの様な姿のものが、脚の内側にだけ鎧をつけて乗馬しています』

『え?乗ってるのが足を置いてるの、自転車のペダルみたいだけど、回転じゃなくて上下に動かすみたい?』

 などとアリスとメタアリスが導き手のその奇妙な姿を論評している間に、導き手はイズルの方に向かって来た。

『やっぱりペダルを上下に踏んでるわ。あの馬の動力は人力なのね』

『人力が適切かどうかは不明ですが、四足歩行する自転車、という点では賛成です』

 イズルが導き手にお辞儀をする。導き手が言った。

「誕生者よ。汝、捕食者の試練を越えてここまで来た。この先、道は二つに分かれる」

 導き手が後退すると、左と右に続く道が見えた。

「一つは易しい道。もう一つは険しい道」

 初めに左方向の道を示し、次に右方向の道を示した。

「どちらを選ぶか」

 導き手はイズルをじっと見つめている様子だった。

『こういう場合、易しい方を選ぶと大抵大変な目に遭うのよね』

『この世界の仕組みがアリスの認識と一致しているとは限りませんよ』

 イズルは右方向の道を右のハサミで指し示した。

「険しい道を」

 導き手は左の道の方へ後退し、イズルに道を開けた。

 イズルはお辞儀をすると、右の道を進み始めた。

『キャー、イズル格好良い』

 もし光が居たら「アリスさん、ちょっと浮かれすぎですよ」と苦言を呈した事だろう。

 セリス2はイズルの後をついて行った。

 その道の先は、本当に険しい道だった。道の先にいるモノがその道を険しいものにしていたのだ。

 道をしばらく進むと、メタアリスが伝えて来た。

『アリス。視界に変化が認められました。要注意です』

 意識したアリスにも認識できた。空間の光量が減り、辺りが暗くなっていっている事に。

 そして、道の先に大きな暗い穴がある事に。

 それよりも、その穴の上に浮いている存在にアリスは寒気を覚えた。

 漆黒のマントを羽織ったような、黒い幽霊のような姿。それはかなりの大きさだった。

 頭部と見受けられる箇所には、ぼんやりとした蒼い炎のような影。首から肩にかけては、黒曜石でできたバラの花のような鋭い切っ先がいくつも突き出ていた。

 その黒い幽霊はまるで光の鎖で縛られた様になっていた。光の鎖は下の暗い穴から伸びていた。

 黒い幽霊の背後から穴の周囲を周り、導き手と同じ騎馬が現れた。その数五騎。導き手と違いその手に光る槍を持っていた。

「我らは騎士団。汝、討伐の試練を求めし者か?」

 先頭に立った者の言葉だった。

 イズルは跪いた。

「はい」

「では」

 先頭に立ったその騎士が言うと、イズルの鎧が変化し、騎士団の者と同じになった。

 馬は無いが、その手には同じ光りの槍を持っていた。

「槍を投じ、あの黒い幽霊を浄化せよ」

 先頭に立った騎士はイズルにそう告げた。

『ちょっと、槍でどこを狙うかはノーヒントなの!?』

『アリス。保育器からの情報でそれは伝えられていると推論されます。おそらくイズルはこれまでの工程を事前にある程度教えられており、道の選択も事前に決めていたのだと』

 セリス2の唇は薄くなった。

『相当の覚悟をして望んでいる試練、なのね』

『手助けしないように求めたのも、その為と考えます』

 セリス2の脳内会話の間に、イズルは槍を投じていた。槍は黒い幽霊の頭部、蒼い炎のような影に命中する。

 黒い幽霊はバラバラになり、その大部分は穴の中に落ちて行った。残りは浮遊していたが、その穴が閉じると、その上にゆっくり落ちて行った。

 とこからか現れた幾匹かの捕食者がその破片を食べている。

「汝の討伐の試練、見事勤めたと認める」

 先頭に立った騎士がそう言った時、異変が起こった。


■異変

『何!』

『地面の暗い穴が開いて行きます。崩壊した黒い幽霊の破片が穴から上昇し、集合しています』

『幽霊の、復活』

 セリス2はイズルに視線を向けた。イズルも騎士団も復活した黒い幽霊に槍を向けて身構えていた。

『さっきまで黒い幽霊を縛ってた光の鎖が、無くなっています』

『状況、かなりマズそうね』

『アリス、復活過程を精査した所、集合する破片の中心に何かありました』

『見せて』

 アリスの視界に、そのシーンが再現された。

『中心の物体、まるで』

『はい、アリス。私にもそう視えます』

 中心部に映し出されたのは、漆黒の球体。

『お、鬼じゃないの!』

 アリスは自分が感じた寒気の原因がこれだったのね、と感覚が言語化されるのを感じた。

 アリスは思い出していた。

 かつて死神白酉しらとりつぶてに鬼を憑けられそうになった事を。

 そして、東雲の鬼の集積の事を。

 鬼、それは人に取り憑き、その寿命を縮めるもの。そして人の命を喰って増殖する。有害な怪異。

 通常、巫術師には普通の霊脈と鬼は区別は付かないが、高密度のものならば、それは、漆黒の球体と視える。

『アリス、私達が認識するこの世界は翻訳されたものと考えられますから、あれが本当の鬼かどうかは、断定できません』

『でも同等にヤバいシロモノってコトでしょう!』

 セリス2は下唇を噛んだ。

『メタアリス、あたし達の行動もこの世界に翻訳されるのよね?』

『はい、アリス。イズルと会話できていますから』

『なら、あの鬼、巫術で消したら、その業も翻訳されて効果がある?』

『それに関しては、やってみないと分かりません』

 ならやってみよう。アリスはそう決めた。

 セリス2はイズルと騎士団に言った。

「あの黒い幽霊をバラバラにして!そしたらあたしが、中の鬼を祓う!」

 復活した黒い幽霊を見ていたイズルと騎士団は、セリス2の方を振り返った。

 騎士団は初めてセリス2を認識した。

「汝は?」

 先頭の騎士が問うた。

「あたしは巫術師、玄雨雫の弟子。名前はそうね。玄雨有栖ありす!」

『その言、後に面倒な事態が起こる可能性は高いと判断します。ですが支持します』

 アリスはメタアリスの声を聞き流した。

 セリス2は、先頭の騎士にニッと笑った。

 先頭の騎士が言った。

「承知した。黒い幽霊、必ずや」

 そう言うと、騎士団は黒い幽霊に対峙した。イズルも続く。

 と同時に黒い幽霊の周りの空間が振動した。

 騎士団の何人かが、手で両耳を塞いだ。正しくは耳があると思われる辺りに、だが。その結果手に持った槍が地面に落ちる。そして消えた。

 イズルは左手を片方の耳の辺りに当て、槍を持つ右手を引き絞った。槍を投じた。

 槍は黒い幽霊の発する振動に歪められ、頭部には当たらず喉の辺りに命中する。

 と同時にその振動が止まった。

 その隙に騎士団 が槍を投じる構えをする。と、その手に光る槍が現れる。槍を投じる。

 五本の光りの槍が黒い幽霊の頭部に突き刺さった。

 黒い幽霊は先ほどと同じように崩壊し始めた。

『アリス、前回と様子が違います。既に黒い穴が塞がっており、落下した破片が地面で蠢いています』

 地面に落下した破片。それは形を変えると小さいが黒い幽霊と同じ形状に変化した。

 セリス2は、森でひっくり返した岩の下から、多数の小さい虫が這い出ていくのを見たような顔をした。

 先頭の騎士がセリス2に言った。

「案ずるな。あれらは捕食者が対処する」

 言葉通り現れた捕食者達が、その小さい黒い幽霊を食べ尽くした。食べ尽くすと、捕食者達はその場を去って行った。

 空中には、漆黒の球体だけが残っていた。

「穴は塞いだ。復活は叶わぬ」

 先頭の騎士が叫んだ。

 黒い球体は身震いするように振動する。

 セリス2の体が光った。輝きが収まると、姿が変わっていた。洋装から巫女装束へ。そして杖は舞扇に。立方体は要に通した糸の先にぶら下がっている。

「後はあたしが」

 セリス2は舞を舞う。安寧の舞を。セリス2の周囲に多数の桜の花びら現れ、周りを回り始めた。

 漆黒の球体の下に、再び暗い穴が開いた。

 穴が開くや否や、すかさず光りの鎖が伸びる。鬼を縛る。

 セリス2は右手に持った舞扇を左肩から振り、鬼に向けた。

 その動きに、周囲を回る桜の花びらが一斉に鬼に向かって飛ぶ。

 鬼の周囲を花びらが舞う。旋回する花びらのカーテンの中に鬼の姿が隠れた。

 セリス2は両手を水平に広げると、ゆっくりと前で合わせる。

 舞扇はその前に浮いている。

 セリス2は両手を水平に広げ、柏手を打とうとする。

『鬼の状態の変化を検出。アリス、注意してください』

 メタアリスの緊迫した声がアリスに届いた。

 セリス2の手の動きが止まった瞬間、桜の花びらのカーテンから、漆黒の二本の棒状のものが左右から飛び出して来た。

「腕!?」

 棒状のものの先には五本の指のようなものがある。その指先は鋭く尖り、手の形は何かを切り裂くように曲がっていた。

『どうやら相当タチが悪い鬼のようね』

『漆黒の球体として視える事、形状の変化。これらから総合的に判断すると、あまり考えたく無いのですが、あの鬼、「東雲の鬼の集積」クラスかそれ以上の可能性があります』

『し、東雲!』

 かつてある時の線の世界を壊滅に至らしめる力を持った鬼。それが東雲の鬼の集積。初代時の女神の技でかろうじてその危機は回避されたが、それと同等以上、というメタアリスの判断にアリスは自分が皮肉めいた笑みを浮かべているのを感じた。

『まったく、なんて厄介な』

 セリス2は再び右手に持った舞扇を左肩から振り、鬼に向ける。

 新たな桜の花びらが舞う。突き出た鬼の腕が新しい桜のカーテンに隠れる。

 セリス2が両手を広げ、それを胸元で交差させる。

 桜のカーテンの旋回半径が小さくなる。

『アリス!』

 メタアリスが警告を発した。途端、桜のカーテンの隙間から漆黒の棘のようなモノがほとばしった。それは黒い稲妻だった。桜のカーテンの一部が引き裂かれ、花びらが宙を舞う。

 セリス2は眉根を寄せた。

「しぶといですわね」

 セリス2がそう呟いた時、右手で持った舞扇がまるで自らの意思で動くように、水平になるように回転した。持つセリス2の右手も連られてそう動く。

 何?

 アリスは舞扇ごと右手が自分の意思を離れ、動いている。そう感じていた。

 水平になった舞扇は、そのまま下に下げられる。そして、勢いよく上に向かって振り上げられた。

 途端。

 開いた地面の穴から、桜のカーテンの中央を貫いて天に届くとばかりに、薄水色の霊脈が噴出した。

 桜のカーテンの内側から迸っていた黒い稲妻が止む。

 四散していた桜のカーテンの一部、その花びらが再び桜のカーテンへと向かう。桜のカーテンは修復される。

 これらの出来事がほんの僅かの間に起こった。

 アリスは暫し呆然としたが、すぐさま我に帰ると舞扇を正面の空中に置く。

 そしてセリス2は柏手を打つ。

 柏手の音が響く。

 旋回する桜の花びらは周囲に四散する。そして消えていった。

 漆黒の球体、鬼の姿も消えていた。暗い穴も。

 再びセリス2の体が光る。光が消えた後は、元の洋装に戻っていた。

 セリス2の前に馬から降りた騎士達が跪いていた。

「え?」

 驚くセリス2の声に先頭にいた騎士が言った。

「巫女様、貴方の行先はお決まりか?」

「う〜ん。イズルの後を付いて行ってるだけで、特に行き先は決まって無いわね」

「イズルは討伐の試練を果たした。騎士団の一員となり、旅はここで終わる」

 セリス2はイズルを見た。

 イズルは頷く。

「巫女様、言い伝えがある」

「何?」

「我が弟子がこの地に来る事あり。その者にこれを渡すべし」

 セリス2の双眸が見開かれた。

「これを」

 先頭にいた騎士が差し出したのは、一枚の書状だった。

『なんだかご都合な展開じゃない?書状がポンて出てくるなんて』

『多分メッセージの具現化としての翻訳なのでしょう。おそらくアリスが雫の弟子と名乗ると渡されるように多数配信されていたものと推論します』

 などと脳内会話がなされる内に、セリス2は書状を受け取り、それを広げた。

 書面にはこうしたためてあった。

「光りの柱を目指せ」

 この記述の他には何もなかった。

『なんだろう。行き先無かったら、あんなに目立ってるんだから、行くわよね、普通。光りの柱に』

『このメッセージは、寄り道するな、急げ、という意図があるものと考えられます。文面が短いのはメッセージの情報量が限られているというのが理由かも知れません』

『異界のショートメッセージ、ね』

 書状からセリス2が視線を上げると、イズルが以前のザリガニの鎧を付けて立っていた。

 先頭の騎士がイズルに言った。

「汝に巫女様を光りの柱までお送りする任務を授ける」

 イズルは跪くと、こうべを垂れた。


■破壊者

「ねえ、そっちに行くと遠回りなんじゃないの。光りの柱は向こうよ?」

 セリス2は先導するイズルに言った。

 イズルは振り返った。

「まっすぐ向かうと、大きな亀裂があります。それとそこは破壊者のテリトリーです」

「破壊者って?」

「テリトリーに入るものを打ち砕いて命を吸い取ります。そしてそれを海と空に返します。循環の一部ですが」

 そこでイズルは言い淀んだ。

「何?」

「祝福されずに空に行くと、途中で」

 アリスは何か分かった。

「黒い幽霊になるの?」

 イズルはコクリと頷いた。

「昇る途中瘴気を吸うと、そういう命はアレになります」

「瘴気って?」

「この世界の循環が少しずつ捻れた結果生じたの歪み、のようなものです」

 そこでイズルは跪いた。

「巫女様が現れ、その循環の捻れを正す、と言い伝えられています」

 アリスは何か閃いた。

「も、もしかして、その捻れ。押し留めてる人がいるんじゃないの」

 イズルは頷いた。

「はい。それが巫女様の師匠である玄雨雫様です」

 繋がった。

 アリスはそう思った。

『この翻訳された世界がどうなのか分からないけど、事件の経緯は分かったわ』

『こういう事でしょうか。先に眠った雫は、この世界の破綻を押し留めました。けれど修復はできません。それでその修復を行う役目が』

『あたし、ってコトね。そこにイトの箱』

『その箱が修復に関係していると推論されます』

 ただ、そう簡単な事件の筈は無いのよね。

 アリスはそう考えた。

「分かったわイズル、先に進んで」

「はい」

 二人は進み始めた。

 草原地帯を抜けると、山岳地帯に入ってきた。

『やっぱり距離か時間が翻訳されてるわね』

『光りの柱がかなり大きくなってきました』

 山の影から見える光りの柱。その大きさがかなり大きくなり、だんだんと見上げるようになっていた。

 セリス2が光りの柱を見上げながら歩いていた時、イズルが厳しい声を上げた。

「止まって!」

 何事かと、視線を光りの柱からイズルに移す。すると、イズルの少し先の地面に亀裂が現れていた。

「亀裂が伸びています。破壊者のテリトリーが拡大したようです」

 イズルの鎧が震えているように見えた。

「攻撃は上から来ます。避けて!」

 セリス2は空を見上げた。

『アリス。上空の空間に管状のものが出現し落下、いえ、伸びてくるようです』

『あれが破壊者』

『先端の移動先をマーキングします』

 地面にマーカーが表示された。イズルと重なっている。

「イズル、そこに来る!避けて!」

 イズルは空を見上げた。そこに直径がイズルの体程の大きさの管の先端が落下した。

 直撃した!?とアリスが思う瞬間、イズルは横に素早く移動しつつ、管の先端をハサミで叩いた。

『イズルはステップと同時に落下する先端を叩き、その反動で直撃地点から脱出しました』

『すごい離れ技ね』

『アリス、管は一つだけではなさそうです。次の落下地点はここです』

『え〜、ヤダなぁ』

 ちょっとアリスは面倒くさそうに言った。

 管がセリス2の位置に落下してくる。イズルが叫んだ。

「セリス2!」

 管が地面と激突した時、セリス2は管の隣に立っていた。位置を変えたのだ。

「大丈夫。予測できるし、すぐに移動できるから。イズル、気をつけて」

 イズルは頷いた。

『それにしても、この攻撃、いつまで続くのでしょう。止める方法を知る必要があります』

 メタアリスの声に、アリスは反応する。

「イズル、この攻撃止める方法あるの!」

「ありません。しかし攻撃はあと八回の筈です。そこまで耐えれば、しばらく止まります。その間にテリトリーを抜ければ大丈夫です!」

 弾倉に十発。残り八発。そしてリロード。アリスはそう理解した。

「来るわ。イズル、その位置に!」

 イズルは先ほどと同じように横にステップすると同時にハサミで管の先端を叩き、避ける。

 セリス2は落下位置を予測すると、位置を変えて回避する。

 これが繰り返され、残りの攻撃は二回となった。

 地面は八本の管、柱が乱立しているような状態になっていた。

『なんかマズいわね。逃げる空間が狭まってる』

『セリス2は回避可能ですが、イズルの逃げ場が塞がれています』

「イズル、手を!」

 イズルがハッとしてセリス2を見た。

「急いで!」

 イズルは小さく頷くとセリス2の手をハサミで優しく挟んだ。

『移動座標決定しました』

『位置を変える!』

 セリス2とイズルが消えると同時に、その場所に二本の管の先端が落下した。

 落下した二本の管の間から見える平らな岩の上に、二人の姿があった。

「セリス2、い、今のは」

 セリス2はニコッと笑った。

「ヒミツ。内緒の技よ」

 イズルは跪いた。

「巫女様には不思議な力があるのですね」

「黒い幽霊の時のもの以外にも、ね」

 セリス2は少しおどけて言った。

 イズルは考えた。

「もしかすると、歩いて移動するより、先ほどの技を使った方が早く着く、のでは無いかと」

「行き先が分からないと出来ないわ」

「では、これを」

 イズルのハサミの先に小さな紙片が生えてきた。

 セリス2はそれを取って見た。

『どうやら地図のようです』

『しかもご丁寧に、今の場所と、行き先がマーキングされてる。あー、ここがイズルが言ってた破壊者のテリトリーの亀裂か。その先に険しい山岳地帯っぽいのがあって、その先がゴール、光りの柱。あれ?その周りに』

『都市?のようなものが描かれています。マーカーはその都市の手前に』

「ここに移動すれば良いの?」

「はい、そこが光りの柱を守護する街の入り口です」

 なるほど。一種の防衛ラインか。

 アリスはそう考えた。

「分かったわ。じゃ」

 そう言うと、アリスは左手を差し出した。イズルがその手をハサミでそっと挟む。

 二人は消えた。

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