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転生したら猫のいない世界だったので悪役令嬢を猫の代わりに愛でます

作者: クロトユーリ

初投稿です。よろしくお願いします。

ペットがいる人はおちおち転生できないんじゃないかなと思っています()


 あなたはとても猫に優しい人間だったニャ

 今しがたトラックに跳ね飛ばされ、朦朧とした頭で現実を処理した。

 猫が直立して人語をしゃべっている。

 部活帰りにこっそり買い食いして、夕飯何かななんてお気楽に歩いていたら車のヘッドライトに照らされた猫を見て、つい。

 うちは猫が5匹いる。そのうち2匹は年でもう死んじゃったんだけど。最初の1匹は野良で残りはその野良が産んだ子供。猫ってツンデレで気まぐれで、全然懐かないって言われてるけどそんなことない。

 オレにはかなり年上の姉ちゃんがいるけど、もう家を出ちゃってるから猫たちが兄弟みたいなもんだった。

 ネットとかでよく見る猫狂いとか猫信者みたいなわけではない。肉球の匂い嗅いだりしないし、傍若無人に振舞われても「猫様!!」なんて拝んだりしたことはない。

 猫が好きというよりうちの猫たちが好きなのだ。

 だから野良猫がトラックにはねられたって、関係なかったのにな。

 死ぬ寸前なんだろう、猫がしゃべる幻を見るなんて。だったら死んだ『のんたん』か『まりん』が迎えに来てくれるとか、自分ちの猫がしゃべる幻を見たかったよなぁ。

 げぷり、と血の塊を吐いてひゅうひゅうと息をするのも苦しい。内臓が破裂しているのか。

 近隣住民なのか野次馬ができていて、トラックの運転手を逃がさないようにしているらしい。オレはよっぽどひどい状態なのだろう、だれも近づいてこない。

 シルバーの毛並みのその猫は薄青い目でオレを見つめる。

 慈愛に満ちた視線は、長く一緒に暮らしていたような錯覚を覚えさせた。

「助けてくれてありがとうニャ。

今ぼくが君にできることはないけれど、ぼくの命を一つ使って君を生まれ変わらせてあげるニャ」

 猫の命は9つある。というのはイギリス人の作家が創作した内容だっけ?

 じゃあオレが助けたのは無駄だったのかな。いやいや車にはねられたら死ぬでしょ普通。

 こいつ、普通の猫じゃなかったの?

「君の来世に幸多からんことを」

 あぁ、りくが玄関で待ってただろうな。まおは今日もオレのクローゼットの引き出しで寝てただろうか。くるみが好きなかつおぶしのおやつは、いつもオレが小遣いから買ってたのに。

 そんな未練を感じながら、オレは抗うこともできず瞼を閉じた。




 薔薇の綺麗な庭園で、目の前には5歳くらいの外国人の少女が機嫌が悪そうにむくれている。

 オレはその子より2つ年上で、なんとお貴族様に生まれていた。

 生まれて初めてしゃべった言葉が「ねっこ!!」だったと乳母が言っていた。

 未練強すぎだろオレ。いやでも、残してきた猫たちはかなり気になる…。

 オレの位牌の前とかで座ってたりするんだろうか。そんなことはないかな。

 でも寂しがってはくれるだろう。つらい戻りたい。

 少女の名前はケイティ・コトン。コトン伯爵家の娘だそうだ。腹違いの弟がおり、生まれたばかりで愛らしい彼とは反対にわがまま癇癪もちの彼女は家族からも使用人からも疎まれているのだとか。年の離れた姉しかいなかったけど、年が近ければ嫉妬だったり赤ちゃん返り的なことがあるんじゃねーのって思うけど。

 ピンクブロンドの髪をドリルヘアにしていて、青い瞳がきゅっと吊り上がっている。

 子猫が毛を逆立ててるみたいだなぁ、とぼんやり眺めていたら、フンッとそっぽを向いてメイドの名前を呼んでいた。チョコじゃなくてクリームがいいの!! とケーキにケチをつけている。クッキーやらマカロンやら高級そうなお菓子がテーブルいっぱいに並べられているのにお気に召さないらしい。

 この世界に猫がいないと知った時の絶望たるや。

 貴族に生まれて裕福に暮らせるのはラッキーにしても、いずれ猫が飼いたいと思っていたら「ねこ…ねことは何です?」とじいやが小首をかしげたのは軽くトラウマだ。

 猫のいない世界ってなんだよ。犬はいるっぽい(番犬や牧羊犬がいた)のになんで。

 見たことはないが国境近くや森には魔物が住んでいるし貴族は魔力があって、12歳を迎えると魔法学校に通うんだとか。

 魔物がいるんなら猫型の魔物とかいるんじゃね? 猫として認識されてないだけで。

 ケットシーならワンチャン…猫耳しっぽの獣人だけなら世を儚んで隠棲したい。

とか猫の定義がもはやあやふやだけど、もしそうなら魔物の研究者とか目指そうかな…。

 剣と魔法の世界で勇者無双! みたいなのは向いてないと思う。普通に怖いから。

生きてた頃だって「あいつ背高いし無口で怖い」って言われてたけど、単に陰キャだったしバスケ部の先輩イケイケばっかで怖かったし。強引な勧誘断り切れなくて入部届けだけ出して目立たないようにしてたんだよ。

 なんで背が高いとスポーツ万能じゃないといけないみたいな風潮なんだ。絶望的な反射神経が露見した時の失望した空気やめろ。最初からできねぇって言ってんだろが。


 我がブランドン伯爵家には十歳離れた次期後継者の兄がいた。なのでオレはどこぞに婿入りせねばならないらしい。貴族ってまだ小さいうちから身の振り方考えなきゃいけないのか…魔物の研究者になれないのかな。

 オレはこのケイティ嬢の婿候補なのだろう。

 お嬢様、席にお戻りくださいと慌てる従僕たちと、逃げ回るご令嬢。

 オレは構わずクッキーを頬張った。

 な~んかあの子見たことあんだよなぁ…外国人の知り合いなんかいないし、歴史上の人物…いやファンタジーだからアニメ?

 結局ケイティ嬢がばっくれて、オレは散々謝られて帰宅する。

 離れてみていた保護者である父は、ほかにもいくつか当てはあるぞ、と馬車の中で話しかけてきた。

 が、オレの心は決まっていた。

 この世界に猫がいないなら、ケイティ嬢を猫としてかわいがってやろうじゃないか。


 この時のオレは気づいていなかった。

 彼女が乙女ゲームの悪役令嬢であることも。その悪役令嬢は冴えない婚約者が気に入らなくて、主人公を取り巻くイケメンたちに懸想して嫌がらせをする役どころであることも。

 そのフラグをすべてへし折り、彼女とラブラブになることも。

 全く知らないのである。



おわり


夏頃やっつけで書いたものなので、読んでくれる方がいればもうちょい掘り下げようかなと。

家を出た姉がジャンル幅広いヲタで、主人公は姉の部屋にある漫画を読んでいたけどその中に乙女ゲーコミカライズ作品があったので見覚えがあった、という設定。

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