結局、あなたに依存してます
高一の体験入部。
二人の兄がずっと野球をしていたから、なんとなく刷り込まれていた感覚で、野球部を覗いた。
先輩女子マネージャーが一人。
このままだと、マネージャーがいなくなると困っていたから、入部することにした。
蓋をあけてみれば、一年マネは、私を含めて5人。
天真爛漫なタイプと、几帳面なタイプの子。
お笑い担当に、もの静かな不思議ちゃん。
どちらにもいえるのは、負けん気の強さが言葉に出ているということだ。
HSP気質の私は、4人の会話にヒヤヒヤする。
相手をディスってるのに、お互い気づいてない?
3年間、思いやられるな、、と思っていると、
カンカンカン、と二階の部室に誰かがあがってくる音がする。
「おーい、新しいマネ入ったんだって?あ、これ?全然、可愛くないじゃん。よかった~」
えっ?なんて不躾な、こんな人いるの!?
というか、誰ですか?
私がパニックになっていると、マネの先輩の花奈さんが、実は、幽霊部員だけど野球部に在席のもう一人の先輩マネ、鈴花さんだと教えてくれた。
鈴花さんは、どうやら野球部員に好きな人がいるようだ。その先輩を取られたくないと、一方的に品定めをしに来たらしい。
この人みたいに、世の中、すべてが自分を中心に回っていると思い込めたら、どんなに生きやすいだろう、なんて考えていると、
「ねぇ、あんた、仲良しこよし、すいかのめいさんちって曲の題名知らない?さっきから、ずっと気になってて、思い出せないんだよねー?」
「すいかのめいさんち、そのままの題名じゃなかったですか?」
私がぼんやり答えると、
「そのままかよー!なーんだ!あ、あんた、名前なんていうの?まぁ、何でもいいんだけど、佳祐先輩には絶対、色目使うなよ。じゃ、私、塾あるから帰るねー。みんな、砂ぼこり浴びて頑張れー。」
そう言い残して鈴花先輩は、ドタバタと階段を降りて行った。
私だけでなく、他の一年マネもみんな、呆気に取られていた。
花奈先輩が、鈴花は悪い子じゃないんだけど、あのキャラが昂じて、野球部員や顧問から距離を置かれてしまい、幽霊部員になってしまったことを話してくれている間も、私の頭の中は、彼女が歌う、すいかのめいさんちのメロディーでいっぱいだった。
自由な人、めいさんち先輩。仲良しにはなりたくないけど、少し分けてほしいな、あの感じ。
堂々と好きな人を宣言できたり、自分のペースを守れたり、好き嫌いがはっきりしているところ、羨ましいな。
学校帰りのバスの中で、私は窓に映る自分に話しかけた。