第十六話 鉱山町のダンジョン
使者の詰問がようやく終わり、ソファーの裏に転がせておく。
コンコンコンと戸がノックされて、戸の向こうから可愛らしい声が聞こえてきた。
『私です』
「ああ。テイラー、入っておいで」
カチャ
「お父様、お母様お呼びですか?」
戸が開かれ、そこに杖で体を支えながら女の子が入って来た。
うん。こんなに幼い子に毒を盛るなんて許せないよな。
侍女が部屋に入りドアを閉めようと後ろを向いた瞬間に――鑑定!
俺は暗殺ギルドであることを確認、魔道具や武器もアイテムボックスに入っていたため一気に!
搾取! 収納!
「パティさん!」
「任せて!」
ダッ! パティさんは一気に加速し侍女を床に押し倒し奴隷の腕輪を嵌めてしまう。見ていて流石としか言いようがない速さです。
「な、なにお~」
侍女は力が出ず、か細い声で講義しようとするがパティさんはそれすら許さない。
「動かないで。私達の質問には嘘偽りなく話せ」
「うぐぅ」
「お母様、侍女は何か悪いことをしましたか?」
「ええ。と~っても悪いことをしたの」
「まあ! ダメですよ、メ! ってされなさい」
「ふふっ、そうだなテイラー。メ! とお父さんとお母さんがしかっておくからな」
「はい」
ペイジさんはテイラーを抱き上げ食事のための席に連れていく、パティさんは侍女を縛り上げ隣の部屋に放り込み兵士さんに見張りを任せて戻ってきた。
使者も兵士さんが引きずり連れて行き、『ふんっ!』とか言いながら隣の部屋に放り込んだ······HP1しか無いけど死んでないよね(苦笑)。
そしてずいぶん遅くなったが夕食が始まった。もちろんオーク肉だ。ステーキななのだがシンプルな味付けがやはり最高なのかもしれない。それから食事の合間の会話でペイジさんがこんなことを聞いてきた。
「ユウマ君達はこのオーク討伐依頼の後は何か予定はあるのかな、もし良ければ私達は王都ヘ向かうのだが、護衛依頼を請けてもらえないかな」
「そうですね、セイラ、ナニー、どう思う」
ナニーが少し考え込んでいる。
なるべくなら寄り道は減らしたいからな。
「私はどっちでも良いよ、ナニー次第かな」
俺もそう思う。
「方向的には良いですね。セイラ、ユウマ、その依頼を請けて良いですわよ」
方向的には? そうか、トラウト侯爵領の向こうが目的地か、その道筋に王都があるんやね。
「分かった。ペイジさん、俺達で良ければお供させて下さい」
「そうか、よろしく頼む」
ペイジさんがニコニコですね、もしかして娘さんの相手も兼ねているのかな。
「うふふ。よろしくお願いしますね、テイラーの事も仲よくしてもらえるかな」
そんな感じだな。大人ばかりの中で一人だけ子供じゃあ気を遣うよな。
「テイラーです。よろしくお願いします」
「こちらこそユウマです。よろしくお願いします」
「テイラーちゃん。セイラです、こちらこそよろしくね」
「ナニーと申します。テイラーちゃん、よろしくお願いしますわね」
「はい。仲よくしてください♪」
俺達は王都まで護衛と言う建前で、テイラーちゃんのお世話係を請け負った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2日間ペイジさん達は開拓の村を調査し、問題なしとなって、明日に王都へ出発となった。
その2日間も、暗殺ギルドの情報を偽使者と偽侍女から聞き出し、兵士さん達は資料をまとめ、王様に先に報せるため早馬で6名が先行で北門を通り抜け出ていった。
早馬なら、北門からの道を行くと5日で王都まで行ける様です。俺達は馬車なので速くても倍の10日くらいは掛かるそうだ、中々の長旅になりそうだな。
ちなみに転移者も暗殺ギルドの二人も、牢付きの馬車で王都に運ばれるそうなのだ、ここでは奴隷商が無いのと、暗殺ギルドの二人は王都でも取り調べがあり、転移者の方はと言うと、この4人ではないが色々問題を起こしているそうです。
聴くと転移者同士が戦闘をところ構わず始めるそうで、町中でも平気で魔法を使った事があったそうだ。その転移者は町から逃亡してしまい行方知れずになってしまったそうで、それと関連があるのか調べるためにしっかり調べたいと言っていた。
しかし、転移者ってそんなに来てるのか······。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ガタガタガタガタ。先行した人達の後俺達も出発して数日。馬車の中で思案していたのだが。
「はぁ~今日もこの揺れが続くのか」
「そうね、でも今日は小さな町に泊まるって言ってましたよね」
「そうですわよ、小規模の鉱山があるとおっしゃっていましたわね」
「そうですよ、ドワーフさんが沢山いらっしゃいます」
出発日の始めから今までずっと俺とセイラ、ナニー、それからテイラーが同じ馬車に乗り、王都への道を旅している。
ってかドワーフか、そう言えばまだドワーフもエルフも見ていないな、異世界なので是非お会いしてみたいものですね。
「ドワーフ♪ やっぱり髭もじゃなのテイラー」
「もじゃもじゃですよ」
「うふふ。女性は小柄な普通の人と変わりませんが、男性は確かに髭もじゃさんですわよ」
おお、良かった。昔読んだ物の中には女性も髭もじゃで、ハンマーか斧装備だった記憶があるので嬉しいじゃありませんか。
「私のこの護身用のナイフもドワーフさんに作ってもらいました」
ナイフは小さなテイラーの手にもしっかり握れるサイズなので、ペティナイフでも小さい方だよな、それを大事そうに俺達に見せてくれた。
柄頭に名前が刻印されている所がお気に入りだそうです。
その後の昼食休憩後、数時間走り、馬達の休憩時間になる前に鉱山の小さな町に到着した。
入門の手続きをした後、ペイジさん達はこの町の町長さんのところへ行き、俺達は毒をセイラに解毒してもらったテイラーと、町を見て回ることになった。
「杖無しで歩けるのは本当に嬉しいです♪」
「喜んでもらえて良かったわ」
「うふふ。後ろ向きで歩きますと危ないですわよ」
「え? きゃ」
とっさに手が出てテイラーを抱き止める事に成功したのだが言われた途端になんてな。あはは。
「ユウマお兄ちゃんありがとう、えへへ」
「言った後すぐにとは、うふふ」
「あはは、ちゃんと前も見て歩こうな」
やっぱり数ヵ月間杖を手放せなかったのだから足腰が弱っているのだろうね。
そんなこともあったが広場で露天商、地面にシートを敷き、色々種類豊富なフリーマーケットだなこれは、本当に何でも売り物になるんだな。
穴の空いた盾、剣の無い鞘、片方だけのブーツ、スマートフォン、お鍋の蓋、え?
「スマートフォン!?」
「どうしたのユウマ」
「セイラこれ、スマホだよな」
「嘘っ! 本当です」
色々なガラクタと言っては失礼になりそうだが、画面の割れたスマホが売られていたのだ。
「あらお客さん、それが気になるのかい」
「ええ、以前持っていた物と似ていたからね」
「そうなのかい、これは先日妙な服を着た子達が『クソ! 電波が来てないじゃないか』だったかねぇ、そんな事を叫びながら私の畑に投げ捨てやがった物だよ」
そんなの売ってるんだ。
「ここにある物は、殆ど全部そうだよ、ダンジョンの横に私の畑があるからね、たまに魔道具なんかもあるよ、ほらこれなんか水がいつも満タンの水筒」
「そんなのまで捨てちゃうのか」
「ユウマ、生活魔法の水さんがあれば要らないよね」
「くはは。その通りさ、ダンジョンで魔力を節約する時にしか使いようがないね」
「そうですわね。小さな子供達ならまだ使う事も少なからずありますわよ」
って聞き流してましたけど、ダンジョン!
この町にはダンジョンがあるようだ。
お読みいただきありがとうございます。
それと、前後編の物を書きました。
◇王子に刺されたメイドさんは仕返しをするそうです。~相棒は魔王でドラゴンなジョニー・デップ似でした~◇
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短いお話ですが、暇つぶしに見てくださいませ。
後、ほんの数秒、私にお時間を下さい。
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