第六十六話 仕返しの終わり
ヘキサグラムの王都を三方から囲む軍勢から数十騎ずつ離れ、王都に入る様子が見てとれる。
王城の最上部に俺達は集まりその時を待っている。
騎兵達が大通りを進み、王城に向かい入れられる。
向かい入れた側は皆が青い顔をしている。
そしてビルドが最前に立ち、オシリス王弟様に声を発する。
「オシリス、よくぞ参ったこのアイテムボックスを受け取ってくれ、全ての罪の証拠が入っておる」
それはもう顔は真っ青になり、屈辱に歪み、ふるふると震えながら差し出す。
「ふむ。ここまでの道中でも思った事だが、兄ビルドよ、何が、誰がそうさせたのだ? カール、デムーも口を閉ざし話そうとせん」
「禁じられておる。だが、我が家族はこれより民の前でとある殺しを白状し、その他の罪も公開し、民に裁かれなければならん。オシリス、貴様なら理解し、贅沢は出来んが民には良い国になるであろう」
それはもう、怨みがましい顔をオシリスに向け、訥々と言葉をつなぐ。
「ふむ、やはり兄も喋らぬか、始まりは国境砦のスタンピードからだ、何人いたかも把握できておらんが、数名の少年少女が食い止めて、1人の犠牲者もなく砦を守り消えていきおった」
「なんだと、スタンピードは起こったと言うのに犠牲が1人もおらんだと?」
「その後も、カールがチェルノーゼム王国へ攻めいる前に、賛成派を捕らえ、我が軍に取り入れられるよう計らい」
「10万以上の軍をそう簡単に」
「ああ、賛成派の上官達は尽くビルド、お前の様に奴隷となり、私に付くよう言われたそうだ」
「······」
「その後も寄る村、町、街の悪事を働くもの達が、衛兵の詰め所に自身の罪も、他者の罪も吐き出して、自ら犯罪奴隷として今償いを始めておる」
「······」
「そして今朝王都に着いた時には、私に付く者達が集まっていた、遠方、ヘキサグラム魔法大国全土から私宛に連絡があり、私に付くと、それをしたのがビルド、お前達が話せない者達なのだな」
「くっ、あやつがか······もう良い、民を集めよ。どうせその辺りでこの成り行きを見ているであろうからな」
「ふむ、よし、鐘を鳴らせ! 民を城内の庭に集めるのだ!」
「「はっ!」」
鐘がまだ鳴り響いている。
朝に鳴り出した鐘は鳴り続け、お昼が過ぎ、お城前の広大な庭に民が溢れんばかりに集まった頃鳴り止み、街中は動く者もなく、全てがこの城に集まったかの様相である。
お城の庭に面したテラスにビルド、カール、デムーが現れ、ざわざわとした空気が静まり返り、皆がビルド達に注目する。
その視線を浴び、それから起こる事を想像してか、三人共に真っ白な顔で1人ひとり魔道具を握り、拡声器の様に音量を上げ、ビルドが声を発する。
「良く集まってくれた、少し話をせねばならん!」
「第一王妃についてだ、病に倒れ死んだと言うことは嘘偽りである」
その一言で庭に集まった民達の雰囲気が変化する。
「第一王女ナニーが産まれ、限り無く乏しい魔力しか持って産まれなかった事を理由にだが、次に産まれた第二王女、デムーに類い希なる才能が有ると知った時より!」
ビルドは唇を噛み切り、血が一筋顎に伝う。
「王妃を私が毒を盛り数年をかけ殺した!」
ざわざわが、またこの場に蔓延するがビルドは話を続ける。
「それから数年、王妃と同じ様に、ナニーの食事に毒を盛り、じわりじわりと毒を蓄積させておったが半年ほど前、隣国への公務に無理やり連れて行き、隣国からの帰りの森に囲まれた街道で、ビルド、カール、デムーの3人でナニー食事に即死するほどの猛毒を盛り、街道に投げ捨て殺した!」
庭中から声が発せられる。
「何て事を!」「優しかった王妃様を返して!」「ナニー王女様ー!」「お2人をかえしてー!」「何やってんだ!」「お前達が死ね!」「······」「······」「······」
収集が付かなくなる寸前に、ビルドは音量を上げ喋り続ける。
「そしてこのビルド・マギー・ヘキサグラムは、暗殺ギルドのヘキサグラム魔法大国のグランドマスターである!」
一瞬、時が止まったかの様に静まり返った後、地を震わせ、大気をも震わせる様な轟音が、王城を包み込んだ。
鳴り止まぬ罵声、罵倒、痛罵、あらゆる罵詈雑言が飛び交い、テラスに立っている、ついにはビルド、カール、デムーに向かって石が投げられ出す。
さらに音量を上げ、石が当たり額から血を流しながら言葉を続ける。
「家臣も、兵も衛兵、ドレイ商会、他にも沢山の暗殺ギルドの部下をこの国に蔓延らせ、あらゆる罪に手を染めてきた! 誘拐をし、残虐な殺しも、強姦した後にもなんの躊躇いもなく殺してきた!」
次々に自らが暴露して行き、血だらけで立っているのもギリギリの状態だが、喋り終えたようだ。
ビルドが終わった後、カール、デムーもビルドに続き自らの罪を告白して行く。
3人は全ての罪を公開した後、自ら歩き庭の中央にある1メートル程の高さの舞台に最後の力を振り絞り、登った。
3人は背中合わせになり、手を広げ、大声で叫んだ。
「「「民よ! 裁きを!」」」
そこで俺達は転移でその場を離れ、小高い丘の墓地に転移してきた。
「お母さん、悪者はやっつけてきましたわよ」
「それから私、冒険者になりましたの、お母さんに読んでもらった、物語に出てきた様な素敵な殿方、旦那様ですわよ、そして仲間がこんなに沢山出来ましたわ」
「復讐は終わりましたわ、もうこの先、この仲間達とこの世界を旅していこうと思ってますの、ずっと先になりますが、いつか子供を連れて会いに、ここに来ますね」
俺達はナニーが墓石の前で、今報告出来る事を全て報告し終わるまで、静かに見守り、立ち上がったナニーが笑顔で俺達のもとに歩み寄ってきた。
「ナニー、とりあえず報告は終わったみたいだな」
「はい、とりあえずは」
「なら、新たな報告を作りに行こうか、皆で」
「「はい!」」
十万文字ちょっとで終わらせるつもりがズルズルと長くなってしまい申し訳無いです。
私的に、難産な子だったので、まだ可愛がりたいのですがなんとか完結です。
伏線も残したままですが······もしかしたら後日談を書くかも知れませんが期待してくれた皆様、ここまで読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。
これからも読んでもらえるような物語が書けるよう頑張ります。
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※誤字脱字報告いつもありがとうございます。頑張って無い様に······頑張ろう。