第五十八話 包囲作戦 Ⅱ
貴族の奴隷化が昼過ぎに終わり、今は冒険者ギルドに来て、食事処でサンドイッチを摘まみながら忍君達の集めた情報を聞いている。
「王都近くは暗殺ギルドが多いですね。奴隷商会は9割ダメです。後、暗殺ギルドの下請けに、人攫いギルドって小さそうですがありまして、次の街に本部があるそうです」
聞けば聞くほどこの国はヤバい国だな、人攫いか、これはリストを手に入れ、バルバロッサ伯爵に別口で動いて貰う方が良いだろうな。
サンドイッチをもう一口、忍君の話の続きを聴く。
「僕達は既にそのリストを手に入れ、転移でバルバロッサ伯爵様に渡してきました。僕達はこの街の拠点は衛兵に知らせ、もちろんリストや犯罪の証拠のコピーを渡してあります」
ほお! 凄いじゃないか忍君! 君、主人公だよ!
「このコピーのスキル良いっすよね、簡単にコピー出来ちゃうし」
へ?
「そ、そうだな、あは、あははははは······」
「ユウマ、知らなかったでしょ~」
セイラ見逃しておいて欲しかったです。
「はい、存じ上げておりませんでした、深く反省します」
サンドイッチは1口かじった後は、もう喉を通りませんでした。
「じゃあ、僕達は反時計回りで王都周辺の街を回ります」
この街だけじゃなく、周辺全ての街も回り俺達は時計回りで王都を1周し、貴族のふるい落としをしていく、もちろん奴隷の腕輪を着けて。
「ああ。ぐるりと回ってこの次の街で待ち合わせだな、そっちも頼んだぞ」
「はい。街中の暗殺ギルドや人攫い達もやっちゃいます」
よし、みんなで頷き合い席から立ち上がり出発しよう。
······勿体ないので食べ残しのサンドイッチは収納してギルドを出る。
路地に入り、素早く透明ローブを羽織り、飛翔でそれぞれの方向に飛び立った。
王都周辺で3か所を済ませ、4か所目は王都周辺で1番大きな商業街、貴族の屋敷も多いのかと思いきや、ここは貴族の屋敷より商人の屋敷が多く、貴族は管理官の子爵と5人の男爵がいるだけであった。
「一応商人の屋敷も見て回るか」
「ユウマよ、隣の屋敷に消え入りそうな命があるぞ」
「何? 鑑定! なっ! マジで死にかけじゃん、行くぞ! 転移!」
転移してきた場所には沢山の鎖に繋がれた者達がいた。
幸いこの牢の中も外も見張りなどはおらず、すぐさま回復魔法と、クリーンを部屋中に力いっぱいかける。
部屋内の糞尿や残飯、天井の小さな穴から落ちてくるようだが、ぐちゃぐちゃで虫が湧き、異臭を放っていた。
鎖に繋がれた人達は皆が壁にもたれ掛かったり横に倒れたりと虚ろな眼には何も映っていない様だ。鑑定では、状態が栄養失調、脱水、食中毒、下痢······刀を取り出し全員の鎖を断ち切り、両腕と両足に残った、枷を収納。
(この人達はルームに入れるよ)
((はい!))
6人全員をルームに移し、この牢に降りてくる階段を、土魔法で崩し入れないようにして、俺以外の皆にはルームに入って貰い、俺はこの屋敷の地上に転移。
地下への階段が崩れた音を聞き付け、人が集まってきた、鑑定をかけながら様子を見る。
「なんと言うことだ! 早く掘り返すのだ!」
「無理です! 今は土魔法が得意な者はおりません!」
「ぐぬぬぬ、まずいぞ生きてて貰わねば売れないではないか! やっと心を折る間際までこぎ着けたと言うのに、私が考えた食事は部屋の中央で手も口も届かぬ場所に残飯を落とし、目の前で腐っていく食べ物を見せる。これで今まで落とした者達はビルド国王に高値で売れたのに、6人で黒貨になる予定だったのだぞ! ええい! 手でも良い、少しずつ掘り起こしておけ! 納期に間に合わなかったり、死んでおれば私だけじゃなく、お前達も暗殺ギルドから追われる事になる、急げ!」
「はっ、はい!」
ビルド絡みか、搾取!
この部屋にいた6人から全てを奪い、部屋を出ていった奴を追いかける。しばらく歩き、豪華な執務室に入ると、書棚から本を1冊抜き取り、抜き取った所に手を突っ込み何かを操作する。
すると書棚が真ん中から分かれ、左右に移動してゆく、移動しきったところにぽっかりと通路が現れ、その中にずんずんと進んでいくのでそれを追いかけ、奥の部屋につくと金貨や大金貨、白貨、大白貨までが壺に入れられ床や棚に大量に置かれていた。
「くそ、せっかくの金づるが。ふう、しかしこの光景を見るだけで心が落ち着く」
ふ~ん、搾取!
「なっ、なんだぁ、立っておれんぞぉぉ」
収納! この部屋にある物全てを収納して、絨毯から棚まで全て、すると地下に行く階段が現れたので、喚いているがしばらくは動けないので、放っておき、階段を下りる。
下りるとそこもまた、貨幣もそうだが宝石類や、ミスリルや金銀のインゴット、少量だがオリハルコン、アダマンタイト、ヒヒイロカネまでがあった。
また全てを収納今度は隠し階段や扉は無くこれで最後の様だ。
手前の部屋に戻り、奴隷の腕輪を嵌め、念話で命令をする。
(命令、お前の罪の証拠を全て出せ!)
「なんだぁ、今の声は、はぁはぁは」
最初の部屋、執務室に戻りまた書棚を操作すると、もとの位置に戻り違う本を引き抜き操作。
カタン、と音がしたと思ったら書棚の下の土台だと思っていた所が引き出しの様に出てきて、そこには大量の書類や本が入っていた。
上から覗き込み、奴隷売買についての事が書かれており
『●バルバロッサ伯爵家 候補者◇サラ ◇ミリー ※攫う前に、行方不明のため、計画変更』
『●アポローン侯爵家 家臣 候補者◇エンシェントエルフ1名 ◇ハイエルフ2名 ◇エルフ3名 ※○月○日引き渡し予定』
なっ! サラとミリーもそうだが、さっきの六人は良い貴族のアポローン侯爵家の家臣なのか日付から行くと今日から半月後、間違いなさそうだな。
(ナニー、その6人はアポローン侯爵さん所の人達だ!)
(はい、鑑定で称号に載っておりましたわ、なんとか皆の状態は空腹だけになりましたので、回復しそうですわね)
(良かった、ルキお手柄だな、ありがとう)
(にゅふふ、どうってこと無いのじゃ)
くねくねしてる姿が眼に浮かびそうだよ、あははは。
よし、こいつは、いまから罪の償いをさせよう。
(命令! 衛兵の元にその罪の証拠を持って行き、全てを話し、一生をかけ罪を償え、二度と悪さをするな行け!)
台車に載っていたティーセットを下ろし、そこに本や紙束を乗せ、よろよろと部屋から出ていった。
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