第四十九話 視線
「お疲れ様。夜営したところに戻って馬車に乗り換えようか」
「ユウマ、街道を直さぬのか? 魔法でぐちゃぐちゃであるぞ」
「そうだな、国王に兵をあげるなら行軍しにくいよね。よし、直しちゃおう」
「うふふ。その後に寄って貰いたい場所があるのですが、よろしくて?」
「ん? 良いぞ、何かあるのか?」
「私が死んだ場所に少し、うふふ」
なんだろう、まあ、何かあっての事なのだろう。
「ふむ、ではさっさとやっちゃいますか」
「「はい!」」
「土魔法! 地均し!」
魔法を撃ち落とした場所から、魔物達が踏み荒らした場所、街道から森の中に至るまで、綺麗にしてしまう。森の中に円い空き地が沢山出来ました。
街道を地均ししながら進み、砦から馬車で半日のところにある魔道具があった場所まで綺麗にした後馬車に乗り換えて、またルキとラミエルが屋根の上から道を綺麗に地均ししながら次の町へと進んでいく。
両サイドが森になり、少し日差しも遮ってくれるので涼しく感じる。
そんな街道沿いで少し広くなった所に差し掛かりナニーが停めてほしいと。
「ここですわ。ユウマ、馬車を停めて下さる」
「ん、分かった。左端に停めるよ」
馬車を降り、皆でナニーの進む後を着いて行く、人の背丈ほどの大きな岩がありその場にナニーはしゃがみ込み地面を掘り出した。
「ここ辺りの筈ですが、あっ、ありましたわ、クリーン!」
目当てのものが見つかった様だ、皆と一緒に上からナニーの手元を覗き込む。
「指輪?」
ナニーが手に持っていたのは、細い鎖を通してネックレスにしてあり、決して煌びやかな物ではなく、シンプルで、質素な指輪だった。
「ええ、母の形見ですわ。死ぬ間際にここに埋めておきましたの、毒耐性が付与された指輪ですのよ、この指輪のお蔭で私は即死をしませんでしたの、そのお蔭で私は誰が私を殺そうとしたのか、なぜ殺そうとしたのかを知る事が出来ました」
「そうなんだ、その指輪のお蔭で俺達は出会う機会が出来たのか」
「そうですわ、残り少ない命の僅かな時間は、創造神様に祈りを届けて下さいました。そして仲間が出来て、愛する者が出来ました。創造神様には感謝してもしきれませんわね」
「ああ、俺も死んでしまったが、ナニーとセイラに転生してすぐに逢えて、創造神様には感謝している」
「私もよ、始めてお逢いした時はおっちょこちょいな神様かと、ちょっとだけ思ったけれどスゴく感謝よ」
「では先に進みましょうか、後少しで森を抜け、小さな町が見える筈ですわよ」
「よし、出発しよう」
「ユウマさん。俺達、オシリスさんを見に行っても良いですか? 本当にこの国の王を討つのかなど調べた方が良いと思って」
「そうか、あの兵士の言葉を鵜呑みにしていたけど、違う可能性もあるよな」
「そうですわね。オシリス様は温厚なお方ですので、もしかすると違うお考えがあるのかも知れませんわね」
「忍君、頼めるかな、透明ローブはそのまま持って行ってくれれば良いから」
忍君は、サラ、ミリー、未来、凛花、そしてテルースと頷き合い、来た道を戻るため馬車の向きを変えた。
「では行ってきます」
「よろしくお願いしますわね」
「「は~い♪」」
忍君達が去った後俺達も馬車に乗り込み王都へと続く道を進み始める。ラミエルは馬車の中に入り今はルキが道をなおしながら俺の膝上だ。
「のうユウマ、見られておるな」
「ああ、嫌な視線でな、あの岩山辺りだね」
「この先で待ち伏せの様じゃ、数キロ先じゃが軍隊かの?」
確かにこの先で沢山の人達が居るのは分かる。
この先何があるのか、ナニーに聞いてみるか。
「ナニー、ちょっと良いか?」
小窓からナニーが顔を出し、ちょこんと窓の縁に顎を乗せる。
可愛いやん! じゃなくてちゃんと聞かないとな。
「どうかしましたか?」
「ナニー、この先に沢山の人達が居るみたいなんだが、何かあるのかな?」
少し考え込んでいる様な。
「この先は草原が広がっておりましたが、特に人が集まる様な事は無かったはずですがで、その様ですね、軍の演習でしょうか?」
「ユウマさん、私が透明ローブを着て偵察してきましょうか?」
「うむ。そうじゃな、ラミエルとセイラはまだ見られておらんから、天窓から出て、飛翔で見てくるが良いぞ」
「そうだな、俺とルキは完全に見られているからな、ナニーも小窓から顔を出しているから可能性はある、なら2人で見てきてくれるかな」
「任せて、ぴゅ~って飛んで見てくるよ♪ ラミエル準備して、それとナニーは天窓から天井に出てくれる、私達が出ていくカムフラージュに」
「あははは、セイラ、中々の作戦じゃないか、頼んだ、でも気を付けてな」
「は~い♪」
ナニーが小窓から顔を引っ込め、天窓を開く。
シュ シュ
空気が抜ける様な音がした、出ていった様だ、そしてパタンと天窓を閉める音がして、上から声がかかる。
「屋根の上も中々の物ですね。風が気持ちいいですわ。うふふ、本当に沢山いますわね」
「だろ、兵を集める様な場所なのか?」
「この先と似た場所での演習はよく耳にしてはいましたが、王都の近くですわね、この場所は遠過ぎですわ。チェルノーゼム王国が近いのかしら、ここからだと、7日ほどで行けますし」
チェルノーゼム王国か、攻め込みたいって行ってたからなぁ。
そこにセイラ達から念話が届いた。
(もしもし、私セイラ、皆聞こえる? 軍隊だよ~、兵士さん達が沢山集まっているよ~)
電話かい!
(もしもし、ラミエルです、聞こえますか、チェルノーゼム王国をぶっ潰せぇ~って偉そうなお髭の方が叫んでますよ、聞こえますかぁ~)
ラミエルもかい!
(もしも~し、ラミエル、届かないのかな?)
(もっと気合いを入れると届くでしょうか、も~しも~し!)
「ユウマ、返事はしてやらんのか?」
「ぷふっ、電話じゃないんだから、可愛いよな、よし」
(聞こえているぞ、ありがとう、動き出しそうなの?)
(まだだと思うよ、テントを張ってあるし、今張ってる途中のテントもあるから)
(炊き出しの準備もしていますし、お腹空きましたね)
(了解、俺達も後ちょっとで森を抜けるから、見張っててくれるかな)
(は~い♪)
さてさて、どうなるのかね、とりあえず戦争は止めたいんだけどな。
読んでくれて本当にありがとうございます。
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