第四十八話 人工スタンピード
『魔物が近付いています、外出にはご注意を』
へ? 魔物が? まあ、良い······。
「ダメじゃん! あっちの持ち運びハウスは普通の持ち運びハウスじゃん!」
「ふあぁぉ、どうしたのですかユウマさん、まだ暗いですよ」
「皆起きてくれ、魔物が近付いて来てる、忍君達の家がヤバい!」
「ん? その様じゃな、ほれ服を着て迎え撃つぞ、ラミエルが見ておるぞ」
「あふっ、分かりましたわ、ユウマ、早く忍君達に知らせないと」
「ラミエルは見ちゃ駄目、いつの間に一緒にってか了解! セイラも起こしておいてね、先に行くよ」
「これこれ、ユウマ、パンツは履くのじゃ、ほれ」
そう言えばすぽぽんだった。
(忍君起きろ! 魔物が来たぞ!)
念話を飛ばし服を整える。
(分かりました! おい皆、起きて、持ち運びハウスをしまわなくちゃいけないから)
「よし、先に迎撃してくる」
シュ
窓を開け飛び出した。が様子がおかしい、街道を国境砦の方へ、俺達の持ち運びハウスには見向きもしないで突き進んでいる。
「ってか、並んでる人達が危ないやん! 浮遊! 飛翔!」
(皆、俺は砦に向かうからなるべく早く応援頼む!)
((はい!))
街道を一直線に飛び、魔物の先頭が後数百メートルで接触する、上から魔物の先頭に向かって連射!
搾取!
連射を続けながら、後続に踏み潰され死んだ魔物を収納し続ける。
「お待たせ!」
皆が、空を飛び合流してくれた。
「皆で搾取飛ばしてくれ! 後続にやられて死んだ奴は収納!」
「「はい!」」
あれから1時間、左右からも魔物が集まりだし、勢いは変わらずだ。
「なぜ止まらない、鑑定! 魔物寄せだ!どっかの商隊がばら蒔いたか?」
「ユウマさん、あの黒塗りの馬車が魔物寄せを持っています」
「収納! でもどこからこれだけの魔物がダンジョンか?」
魔物が押し寄せてくる方向を鑑定、ダンジョンは無い。
さらに集中して鑑定! あった! モンスターハウスの魔道具だ。
「モンスターハウスの魔道具だ! 俺はそれを回収してくる」
「分かりましたわ、皆さんここは私達だけでやりますわよ!」
「頼んだ、転移!」
鑑定の場所上空へ転移した俺は十数人の兵士がモンスターハウスの魔道具に魔力を供給しているのが見えた。
「くそが!」
搾取!
放つと同時に急降下し、18人の兵士に奴隷の腕輪を嵌め、魔道具を収納。
「命令! 国境の砦まで行き、自分達の罪を話し、罪を償え! 隠し事はするな! 行け!」
「う、うぅ」
「はぁはぁはぁ」
ふらふらと歩きだし、砦のほうこうにすすむ。
その姿を確認してから街道側で33人。
先程の反対側に18人の兵士がいた。この場所には1人だけ豪奢な鎧を着けた者が一人、リーダーか、隊長か?
「おい、お前達の目的はなんだ?」
「立ってぇおれん、貴様ぁぁ、何をしたぁぁ、子爵の俺様にこの様な振る舞いぃ、不敬罪であるぞ」
ふむ、鑑定! この国の貴族で暗殺ギルドじゃん!
「暗殺ギルドのメンバーで、ヘキサグラム魔法大国の子爵か、命令、正直に嘘偽りなく話せ!」
まずは目的とかだな。
「お前達の目的を話せ、誰の命令だ?」
「そんな事喋るわけには、砦に、軟禁されている反乱分子である王弟オシリスを殺さねばならない、王命だぁ、あぁぁ、喋ってしまった、これでは、俺様がメンバーから狙われてしまう」
「なぜ弟を殺そうとする?」
「戦争を反対して、その砦で兵を集めて反乱を起こすからだ、くそぉ」
ほう、ナニーに確認した方が良いな。
(ナニー。王弟オシリスって人が狙われたのがこの騒動の発端だが、その人はどんな人物?)
(まあ。オシリス様ですか、私に言わせれば私の父とは比べ物にならないくらいのお方ですわ。賢王になりうる人物ですわよ)
おお。ナニーが賢王とまで言うとは中々の人物の様だな。
(その人が国境砦にいるらしい、会ってみるか?)
(いいえ。私は死んだ人間ですから、影からこっそりでお願いしますわ)
(了解)
じゃあこいつらにはその賢王に情報をしっかりと伝えて貰わないとな。
「では命令。国境の砦まで行き計画や、その他知っている事を全て嘘偽り無く、そのオシリスさんに伝えてくれ、よし行け!」
ふらふらだがまっすぐに国境砦に向かいまだ暗い森を歩き出す。
よし、上空へ転移!
暗いが、皆の姿が点で確認できた。
飛翔で皆の方に急ぐが、途中あいつらが向かう方向の魔物達を搾取していくのは忘れない。
確実に情報を持って行って貰わないとな。
少し時間はかかったが、8割くらいはこちら側の魔物は減ったはずだ。
「3方向の魔道具は回収したから後は減るはず、さっさとやってしまおう」
「「はい!」」
「ユウマさん日が昇り始めています、見つかりますよ!」
魔物達の走る地鳴りや、吠える声、森の木をたおす音で気付き始める者がいるだろう。
忍君の言う通り、日が昇り始め空に浮いているのはまずいと行列と、魔物との間の地に降り立てば、今度は視界が悪く、魔物の倒す効率が落ちる。
「くそ、効率が悪いな、だが仕方がないか」
「片側だけですが、魔物が減ったのでマシですが」
「そっちは、この人工スタンピードの作戦リーダーっぽい奴がいたから、確実にオシリスさんに情報を届けて貰わないとないけないから、魔物から搾取しながら帰ってきたからな」
「そうなのですね。それはちゃんと報告して貰いませんと」
魔法も織り交ぜながら、魔物達を押し留めつづける。
高い山から半分以上日が昇った時、俺達の後方から冒険者や兵士と思われる揃いの鎧を着た者達が、押し寄せてきた。
ある者は武器、盾を持ち、俺達の前に出て、防御体制を取る。
ある者は杖を振りかざし魔法を魔物に向かって打ち始める。
それからは早かった、集められた強者は流石の魔法の威力で魔物を蹴散らす。
転移者達までも、自分の身に降りかかる火の粉は払う様で、犯罪者の称号がある無し関係無く、魔物に向かって魔法を撃ち、守っているのはパーティーメンバーだけかもしれないが、魔法を打つ者の前で盾を構えている。
(皆、この混乱中に離脱するぞ、絶対面倒に巻き込まれる)
(分かりましたわ。ユウマさん透明ローブの出番ですわ)
(そうか! 忍君、今から透明ローブを渡すから皆に配って!)
(了解!)
皆に透明ローブが行き渡った事を確認後、遥か上空に特大のファイアーボールを複数作り、押し寄せる魔物の中心に向かって撃ち落とした。
(着弾と同時に羽織って!)
((はい!))
次の瞬間!
ボン! ゴオオオォ!
着弾したファイアーボールは魔物達を焼き、半径50メートルほどの空き地を作った。
ボン! ゴオオオォ!
ボン! ゴオオオォ!
ボン! ゴオオオォ!
その後も連続して30発のファイアーボールが着弾。火事にならない様にと皆がウォーターボールを大量に放ち、森に着いた火を消してくれる。
これで砦前の魔物の八割ほどが消し炭となり、一気に有利な方向に変わった。
(皆、大丈夫そうだな、上空に転移!)
(よし、後は、搾取で上から援護だけにするぞ、収納は無しで、魔物寄せの浄化だけは最後にしよう、今バラけられると面倒だから)
((はい!))
その後30分ほどで、魔物の出が悪くなりポツポツになった、俺とセイラはこの地の一帯を浄化して、この場を立ち去ることにした。
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