第三十九話 悪魔
「うおっ! また地滑りか! 大丈夫だからね」
ギュッと俺の服を掴み、プルプルと震える子を抱えたまま、戸が無くなった入口から出ようと、地滑りで押された馬車の中だがバランスを取りながら移動。
「おっと、歩きにくいな」
後2歩で入口に手が届くかと思った瞬間!
ミシミシ
「どわっ! 浮遊! 痛っ!」
馬車が転がりだしたので、浮遊で水平を保とうとしたのだが、背中を馬車の壁に強打してしまった、その際脇腹に激痛が走る。
子供を抱っこしているため確認は出来ないが、何か刺さった? マジかよ、これだけステータス上がってんのに刺さるってなんなの! ってんな事を考えてる場合じゃない!
ゴロンゴロンと転がり続ける馬車と一緒に回り続け、何回転したか分からないが俺の背を下にして、回転が止まった。
ズキンズキンと痛む脇腹に手を伸ばすと、壁を補強していたと思われる金属製の何かが生えていた。
あかんやん! 抜かな動けん!
その時ふっと、揺れが無くなりこれはチャンスと痛そうだが、構ってられない!
「よし、今の内に、ふん! がぁぁ! 抜けねぇ!」
ミシミシ
真上に合った、馬車の戸の外に見えていた空が土砂に侵食され、空の部分が小さくなる。
「せや! 転」
バキバキバキ
転移で空に避難しようとした瞬間頭の方から馬車が潰れだし、次の瞬間······。
「移!」
空中地上から100メートルほどの高さに転移、浮遊は解除していなかったために落下はしないが出血が酷く、意識が落ちそうだ。
それにまだ馬車の中だ、どうすれば······。
『収納!』
外からセイラの声が聞こえ
『怪我をしています、回復を!』
ナニーの声も聞こえた
そこで、意識が途絶えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ん~、ん?
「あれ? 知ってる天井だ」
「起きたか、ふむ、まだ意識が混乱しておるようじゃな」
ん~、確か······。
「地滑りは!」
ガバッと起き上がり自分が寝室に居ることを確認したが、目の前に角の生えた女の子がいる。
「えっと、どちら様?」
「いきなり起き上がるでない、ビックリするではないか、まったく」
「ああ、ごめんね、えっとその白い髪の毛は馬車に居た子だよね、良かった、怪我とかしてない?」
「うむ。お主のお蔭で封印も解け怪我なんぞすぐに治したぞ。お主は血を流しすぎたのでな、先ほどまで血を分け与えておったのじゃ」
「えっと、君は大丈夫なの?」
「その状態でまだ私を心配するか? ふふっ。大丈夫じゃ、これでも悪魔の一人、あの忌々しい悪魔封印のせいじゃ、ただの幼子と変わらん力しか出せなかった時は、本当に心細く、恐いと思った、あの様な震えが来て、お主にしがみつくしか出来んかったが、封印が解けた今はなて事はないのじゃ」
うわぁ、のじゃロリ来たよ······。
「って悪魔なの!」
「そうじゃ、ルキフェル、ルキと呼ぶことを許そう」
「そ、そうか、ルキだね。俺はユウマ、ありがとう輸血してくれて」
「うむ。セイラとナニーを呼んで来るとしようか、ユウマはまだ寝ておれ、私の血が馴染むまで後少しかかるのでな」
そう言うとベッドの上で正座しながら俺のお腹に手を置いていたルキは立ち上がり、ぴょんと飛び降り部屋を出ていった、角の触ってみたかった······。
でもまあ、とりあえず危機は逃れられた感じかな、
開けたままになっている入口から、セイラとナニーが入って来た。
「心配かけたね、ごめんな2人とも」
「良いよぉ、元気になってくれたからぁ」
「そうですわよ、次からは気を付けて下さいねそれと、もう解禁にして下さい、先ほども馬車ごと安全な場所に転移させていれば、怪我もなく助け出せた筈ですわ」
そう言い涙ぐむセイラとナニー、そんなに心配かけたんだな。
「分かった、善処するよ」
「政治家みたいな事は言わないの!」
「解禁する気が感じられませんわ!」
「わ、分かりました! 解禁! 解禁します!」
「よろしい絶対ね!」
「はい!」
ついに解禁となってしまった古代魔法。
「ふふっ。お主らは楽しいのぉ。よし、決めた! ひとり旅も飽きてきておったでな、私を仲間に入れてくれんか?」
「ルキちゃんなら大歓迎だよ♪」
「うふふ。こんなに頼もしい仲間が増えるだなんて、私も賛成ですわ♪」
「今までひとり旅だったのか、でも俺達の今の目標は」
「聞いているのじゃ。ヘキサグラムの国王と、兄、妹に仕返しをしに行くのであろ? 問題ないのじゃ。どちらかと言うと、そんな催し大得意じゃぞ」
「「悪魔だもんな」」
「その通りじゃ! それに命を救われたからには礼を尽くさねば私の気がおさまらん!」
そんな押し掛けな感じで、新しい仲間が増え、古代魔法が解禁となり、トラウト侯爵領に進みながらルキに手綱を持たせ俺が横で指導しているのだが、これまた下手くそで、前進はしているが、蛇行するわ、スピードは上がったり下がったり、止まったり、バックまでしだした······。
「ルキ、馬車には乗ったことあると豪語してたけど、乗るだけで運転は初めてだったりする?」
「そんな訳無いぞ! 昔、オーディンから無理矢理借りた騎馬の、超デカいスレイプニルが引く馬車を乗り回し、ぶいぶい言わせておったのじゃ!」
それって神馬だよね? ······勝手に引っ張ってくれてたんじゃないかな。
「はぁぁ。分かった、それ系のスキルが使える様にするけど良いか?」
「ぬぬぬ。し、仕方がないのう。よし、その施しを受けようではないか!」
なぜか上から目線······あはは、まあ、良いか。
「行くよ、シェア!」
ルキに透明なピンポン玉が吸い込まれ、俺自身のステータスも跳ね上がる。
「ぐあっ! こ、これヤバ!」
馬車の中でも悲鳴が上がる。
「キャァァー!」
「どうしたのじゃ? ん? おお! 馬車の操作方法が! なるほどなのじゃ! ほれほれ、馬さんは良い子じゃのう」
のたうち回る俺達をよそに、ウキウキで馬車を走らせ、今日の夜営地まで運転しきったのであった。
俺は気力を振り絞り、持ち運びハウスを出してセイラとナニーを寝室に運び、自分も寝室に行く前に廊下で寝てしまいました。
読んでくれて本当にありがとうございます。
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