第三十八話 街道の封鎖
お昼前に街道の少し開けた場所に到着して、お昼ごはんにする。
食休みに、今後の動きについて話し合う事にした。
「忍君達は先行してトラウト領のサラとミリーの家に行く事が第一目標ね」
「そうですわね。暗殺ギルドも心配ではありますが、最優先はそれですわね」
「僕もそう思います。送り返した後、暗殺ギルドに関して調べておきますね」
「忍君が道中に修行をつけるのよ頑張ってね」
「はい。分かりました。持ち運びハウスの予備って無いですよね」
ん? ん~んっ! あるじゃん!
「ほいっと!」
ドン
「いつも間にか入っていたよ、たぶんあいつら、チームアースの誰かが持ってたんじゃないかな、男爵までいたし」
「おお~♪ 流石大所帯のチームだったから持ってたんですね、一回試しますね」
忍君は、持ち運びハウスに魔力を流し設置してみる様だ。
みるみる大きくなって俺達のログハウスの数倍の家が目の前に現れた。
「「デカっ!」」
「まあまあ。中級の下って所ですわね、これなら6人は十分寝泊まり出来ますわよ」
これで中級の下なのか、分譲住宅の大きめの家くらいあるぞこれ、俺達の6畳ログハウスから見るとめちゃめちゃデカい。
「中見てきますね♪」
「私も♪ 忍待って♪」
「見たい見たい♪」
「うちの家より大きい♪」
「デカかったな、あはは」
「そだね~、あはは」
「うふふ。でも自己修復が付いていませんわよ、燃やされてしまえば無くなっちゃいますわね」
いやいや怖いこと言わないで下さいよ、うちのログハウスは燃え尽きないし、そもそも燃えた様に見えて中は微塵も影響が無いけれどね、あはは。
中に入った六人は······。
なぜか、打ち拉がれ家から出てきた。
「ゴミ屋敷でした······」
「あはは、生活魔法のクリーンを沢山放り込んでおけばすぐに綺麗になるよ」
「そうでした! 皆行くよ!」
「「はい!」」
6人は最終決戦に挑む顔付きになり、家の開いたままの入口に向かって、全力のクリーンを放った。
俺達3人も、同情票を入れてクリーンを大量に放り込んであげた。
外観から新品になったかのごとく、ピカピカに光る持ち運びハウスに様変わりした。
「では先行してきますね、また冒険者ギルドでお会いしましょう」
「気を付けてね、・・・・・・・・・・」
「あははは、頑張ってね皆♪」
「うふふ、皆さんお気を付けて」
ハーレム王は5人を従え街道の先に消えていった。
「あははは♪ ハーレム王、強ち間違っていないかもね~♪」
「うふふ、そうですわね、ユウマもハーレム公爵くらいですわよ、私達二人居るのですから」
「ありゃ、ブーメランが返ってきた」
そして出発しようとした時、お母さんが話しかけてきた。
『ユウマ、私は一度森に帰りますね。今回のスタンピードで大量の魔物が居なくなってしまったので、魔物の移動が始まると思うの、ちょっと心配だから』
「そうなのか、それってどう不味いの?」
『最悪スタンピードね、軽くて縄張り争いが活発化して街道に出てくる者達が増えるわね』
それは不味いよな、良かれと止めたスタンピードでスタンピードを誘発させたら元も子もない、最低でも街道に出てくる魔物が増えたら安全面が駄々下がりだよな。
『そうなってしまうとユウマ達は悲しい思いをしてしまうでしょ? 落ち着いたらまた一緒に旅をしますから、今は行かせてもらいますね』
「俺達の尻拭いをごめんな、いや、ありがとう」
「お母さん早く戻ってきてね」
「雑務を任せてしまいますが、どうかよろしくお願いいたします」
「こっちは任せるにゃ」
『うふふ、ではまた』
シュタ
俺のフードから出て飛び降りると、瞬く間に大きくなり、走り去ってしまった。
シュ
「行っちゃったな、よし、帰ってきた時に笑われない様に俺達は俺達のやるべき事をだな」
「そうにゃ、フウが付いているから怖いもの無しにゃ」
「あははは、そうだな、頼むぞフウ」
「お願いね~♪」
「頼もしいフウちゃんがいますもの、元気を出して行きますわよ♪」
その後は順調に進みトラウト元侯爵領まで後半分ほどのところまで来ました。
「あちゃぁ、昨日の雨で崩れてしまってるね」
そうなのである。昨日の夕方から降りだした雨は激しく降り、朝まで降り続いた。
そのせいで両側が急勾配の山の間を通る街道が、地滑りで見事に埋まっているのだ。
「あはは、こっちの方が近道だから来たけどこれじゃあねぇ」
「引き返すなら2日ほど戻らないといけませんね、どうしますか?」
ん~、2日は嫌だなぁ、そうだな少し解禁するか。
「古代魔法の浮遊と飛翔を、この崩れている部分を越えるためだけ解禁としましょう」
「あはは、やっと解禁ですか」
「変な拘りを持っているものですわね、うふふ」
「良いじゃん! そのお蔭で色んな人達と会えたし!」
「はいはい。じゃあ馬車を収納して行っちゃいましょう」
「うふふ」
俺達は馬車を収納し、馬を引いて地滑りの際までやって来た。
「よし、さっさと行こうか、馬さんもビックリしないでね、せ~の、浮遊!」
俺達3人と、馬2頭(フウは俺のフードの中にいます)が、ふわふわと浮き上がり、地滑りが起きたところよりも高く浮き上がった。
「んじゃ、馬さんが怖がらない様にゆっくり行くね、飛翔!」
スーっと地滑りの現場の上を進んでいく。
「めっちゃ長い距離が崩れた様だな」
「そうですわね、あそこはまだ山から水が出てますので、更に崩れる事もありそうですわよ」
「はわ~、数百メートルはありますね、あっ! あの先のところ馬車が巻き込まれています! 馬さんも居ますよ!」
「マジか! クソっ! 転移!」
パッ
「土魔法! ほいっと!」
転移で一気に馬車が巻き込まれていた場所に来た。
俺達が来た街道の反対側、馬がまだ二頭馬車に繋がったままである、荷台の方はほとんど埋まっている。
「ユウマ! 収納!」
セイラが馬さんから馬具を収納で取り外し、ナニーと共に馬を崩れていない道まで引いていってくれた。
「ありがとう! クソどけよ! 土魔法!」
なぜここまで慌てているかと言うと、馬車の前方に開いている小窓から小さな手が見えたからだ。
馬車の上の土砂を退かせて行くと馬車の全貌が見えてきた。
小さな荷台を連結した馬車で、後ろ側の少し豪華であったっぽい黒い馬車は大きな岩が乗っかり大破、手前の馬車は護送用なのかいたるところが補強で金属が使われていて、ひしゃげてはいるが、十分中は空間を保っていると思われる原形を留めていた。
「よし! 中は大丈夫そうだ、扉は、鍵か!」
素早く刀を取り出し、鍵に向かって切り付ける。
キン
ゴト
「よし、んぐぐぐ!」
バキン
蝶番がちぎれ、扉ごと外れた。
「開いた!」
中は小さな明かり取りの窓以外は真っ暗で、生活魔法の光を中に放り込んで、覗き込んだ。
酷く臭いが構ってられない。
「1人だけか、よし、もう大丈夫だよ、少し抱っこするからね」
「うぁ」
「よし」
生きているようだ、素早く抱っこして立ち上がったその時!
ズ ズズズズ······
重低音の音が鳴り足元が揺れ、馬車が動き出した。
「「ユウマ!」」
読んでくれて本当にありがとうございます。
これからも読んでもらえるように頑張ります。
もしお時間が頂けるなら、この後書きの下に☆☆☆☆☆がありますので、お気軽に評価してもらえると励みになります、もちろん評価無しでも大丈夫です。
例)
『ダメダメ』 ★☆☆☆☆
『面白い!』 ★★★★★
もう少し時間があるならブックマークもポチっとして貰えると嬉しいです。
読んでいただき、ここまでお付き合いありがとうございます。