第三十三話 商業街に到着
「マズい、マズい、マズい、おい君、この方達が盗賊行為をしていたと言うのか!」
「はい、俺達の後ろに居る商人さん達も一緒に襲われましたから、間違いは無いですね」
「なぜ領主様のご子息様が! しかし称号があるのは確か、これは申し開きも出来ないぞ。こんな事俺一人では判断出来ん。君はここで待っていてくれるか? すぐに上官を連れて戻ってくる」
領主の息子か。ほお、嫡男とありますな、そりゃ慌てもするか。
「はい。街に入りますので並んでおきますよ」
「すまない、そうしてもらえると助かる」
そう言い、門に向かって走り去ってしまった。
「どうしたの? 何か大慌てで兵士さんが帰っていってる様だけれど」
「ん? 捕まえたヤツらの中に領主さんの嫡男がいたみたい、それで上官の意見を聞きに帰ったところかな」
「ふ~ん。転移者以外にもそんな爆弾があったのね」
「うふふ。気づいていなかったのですね、後、男爵本人とその嫡男が居ますわよ」
「マジか!」
「転移者は6名ですが、その3人は中々の大物ですわね。うふふ」
しっかりと鑑定し直してみると、
カウフマン伯爵嫡男 “ロイバー”
ベトルーク男爵当主 “ベトルーク”
ベトルーク男爵嫡男 “ガウナー”
あちゃちゃ~だな、称号は見事についてますし駄目じゃん。
「なんだか話が大きくなりそうな雲行きだな」
「せっかくダンジョンと大きな金のお皿でご機嫌なのにね」
「うふふ。戻ってこられたわよ。どうなることかしらね」
本当だ、さっきの人が、2人の男性を連れて戻ってきた。
「待たせたな。ちょうど領主様も視察に来られていたので連れてきたのだ」
おお! いきなり領主ですか! 心の準備が出来てないよ!
「あはは······、領主さんが直々ですか」
「ああ。すまないが説明を聞きたいのだか、······ふむ、確かにうちの息子だな」
「ち、父上! これは何かの間違いです!」
「カウフマン伯爵、私です、ベトルークです! 男爵をしております! これは違うのです! 誤解なのです! 夜営に近付いたところを誤認され、捕まっただけでございます!」
「ふむ。こう言っておるようだが」
ん~!
「命令です。自分の罪を正直に答えなさい、貴方達は盗賊行為なんてしていない、犯罪など犯していないと言うならその場に座って下さい」
どう? まさかやっていたことが犯罪じゃないと本気で思っているヤツは居ないよね?
「誰も座らないでしょ。それに称号を見ればすぐに分かりますよ、息子さんなんか酷いものです」
殺人、窃盗、強盗、恐喝、詐欺、誘拐、強姦、横領、等々、犯罪称号がずらりと並んでいる。
「うむ。弁解の余地もないとはこの事だな。よし、すまないが列から離れ付いてきてくれるかね」
「分かりました」
悲痛な顔をした領主さんが門に向けて歩き始め、俺達も馬車を入門待ちの列から外し、領主さん達3人の後をゆっくりと付いて行く。
門をスルーして手続き無しで商業街に入った。街の中にはあちこちに露店や、それを目当てに集まる人々でごった返している。俺はそれを横目で見ながら、門を抜けてすぐの場所にある大きな屋敷の庭に馬車を乗り入れた。
領主さんのお屋敷かな? それに逆側は冒険者ギルドだったし、門近くに建てるのは、まあ、ありだな、魔物や敵の襲撃時には真っ先に出れるこの場所は理にかなっているし。
屋敷前に到着するとそこには50人ほどの兵士さんが待ち構えており、馬車を停止させた。
「すまないが命令で罪を包み隠さず話すようにしてもらえるかな? 詰問をしたいものでね」
「分かりました。命令です、罪を正直に全て答えなさい、ついでに他の仲間や、繋がりのある者も全て話して下さい」
「うむ、ありがとう。よし! 連れて行き全てを吐かせよ! 私の息子も、ベトルーク男爵も遠慮せず詰問せよ!」
「はっ!」
兵士さん達は個別に分かれ1人ひとりに質問を始めた。んじゃ報酬聞かないとね、
「あの、報酬はどうなりますか? 俺達この後新ダンジョン発見の報告に行かないと行けないので早めにお願いしたいのですが」
「何! 新ダンジョン発見だと!」
物凄い勢いで聞いてきたのは3人で迎えに来た、最後の1人。
「はい、王都からの峠で見付けたので」
「ダンジョンカードを見せてくれ! 頼む!」
「はい、これですが」
素直に見せることにした。
食い入るようにカードを見詰め、裏返したり色々してから、懐から何か取り出して、カードリーダーの様にダンジョンカードを通した。
「領主様、これは間違いありません、本物です! 場所も言っていたままです! 峠の難所手前、こちらからなら馬車で一日あれば着く距離ですよ!」
「真か! なんと言うことだ! 嫡男を廃嫡にし、途方に暮れていたが、そんな物どうでも良くなる話ではないか!」
いやいや跡継ぎは必要でしょ。
「はい。領主様、私はこれから冒険者ギルドに戻り公開しなくてはなりません、この者に報酬をお願いします」
「分かったではすぐに」
「旦那様! 奥様が! 奥様の御懐妊が確認出来ました! 旦那様奥様がお待ちです!」
おお! それはめでたいではないですか! 跡継ぎ問題が解決かな? あはは。
「ああ、私は夢でも見ておるのか。分かったすぐに用事を済ませ向かうと伝えてくれるか」
「はい、では失礼します!」
「ギルドマスター、これより報酬を渡す。見届けてくれるか」
「はっ」
「名を教えてもらえぬか」
俺の方を見て、『早く言え』『妻に会いに行くのだ』オーラを醸し出しているので勿体ぶらずに答えた。
「ユウマです。よろしくお願いします」
「うむ。ユウマよ。此度は我が領地の繁栄に寄与した事を心より感謝する。報酬の黒貨幣5枚を、今ここで授与する事とする、ありがとう」
「ありがとうございます」
領主さんは収納から出した装飾施された木箱を取り出し蓋を開け俺に突き出してきた。一応鑑定してみると、何やら1枚が100億プルだそうです。材質も異世界素材が満載、ミスリル、オリハルコン等々、一気に大金持ちだな。
「うむ。ではすまぬが私は妻の元に行くぞ」
「はい、奥様にもよろしくお伝え下さい」
「うむ」
そう言い物凄い勢いで屋敷に消えた。
「くははは、息子が廃嫡になった途端にか、まぁ、目出度くていいな。よし、冒険者ギルドに来てもらえるか、ダンジョンの登録は出来たが、ギルドカードにも登録、ランクは~今はBか? それはないな、Aだと思うからSランクに申請せねばならんな」
「いや、Cランクだぞ、ほら」
ギルドカードを見せると目を見開きプルプルしている、あはは。
「ま、まあ良いか、すまぬが冒険者ギルドに行こう」
「はい」
ギルドマスターを御者台に相席させて、ギルドに到着、中に入るとギルドマスターは少し待っていてくれと俺達のギルドカードを持って、受け付けカウンターの奥に入っていった。
そして見付けたのだが、忍君とテルースが隅の方でイチャイチャしていた······お~い。
視線を送っていると『はっ』とした顔になり気が付き、2人は少し顔を赤くしながら俺達の方にやって来た。
「暗殺ギルドの支部を見付けたよ」
とんでもない爆弾発言をぶっ込んできた。
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