第三十二話 転移者クラン
「馬さんが喉乾いたにゃって言ってるにゃ」
「おっ、フウは馬の言葉が分かるのか? ってかいつの間にか『にゃ』って付けてるな」
「ハッキリは分からないにゃ、たぶんそんな感じに喋ってるにゃ。『にゃ』は勝手に出るようになったにゃ」
たぶんに勝手にかい! あははは。
「まぁ、そろそろ休憩させてやらないとな、適当に開けてる場所があったら休憩しよう」
池の畔が少し広くなっているので馬車を停め池の水も鑑定すると雨水で、『飲む事が出来る』だったので、今日は登りが多かったから馬を休ませるため、ここで夜営する事にした。
池は大きな岩盤が窪んで出来た池のようで、魚も生き物も全く居ない水溜りのようだ。流れ出る所も、流入する所もない。
「大きなお皿みたいな池だな」
「そうだね、これならフウちゃんとお母さんが元の大きさでも十分お皿に出来るよね」
「うふふ、それにこの池のお皿は金鉱石ですわよ」
「本当~♪ 鑑定♪ はわぁ~、黒い縞々の石だと思ってきたのに金だ!!」
「うわっ!! マジもんや!! 明日出発する時に収納していこう」
「大賛成♪」
「これ分離させるにはやっぱり錬金術かな?」
「暗殺ギルドに錬金術士が居ることを期待しましょう、それと転移者ですわね。うふふ」
翌朝、出発準備が整ったし、最後は大きな金の皿を収納しましょう。
「じゃあ、収納して出発しよう。収納!」
ボコっと、半径50メートルほどの大きな穴が空き、すり鉢みたいに真ん中が深い穴が出来た。
「デカすぎやろ!!」
「あはは、自然破壊ですね」
「え? ユウマあの真ん中!!」
池があった中央に四角い穴が空いていて鑑定するとダンジョンだ!
「ダンジョンだよ! 見つけちゃったよ!!」
「凄い♪ こんなの見付かりっこないよ、普通のアイテムボックスにはあのサイズの物は入る訳無いし♪」
「ユウマ。まずはダンジョンカードに登録ですわ、その後商業街に急ぎますわよ♪」
「これはフウと馬達に感謝だな、早速登録して出発だ!!」
街道を順調に進み、この街道の一番の難所、ここから明日一日は登り坂になる所に到着した。
中腹にも一か所休憩場が整備されているが、今からだと夜遅くにしか辿り着けないので、この場には既に行商隊だろうか、同じ型の馬車が夜営の様相だ。
「ユウマ、どこに持ち運びハウス出そうか?」
「出口に近い所かな、俺達は朝早めに出るだろうし、奥だと迷惑かけそうだろ」
「分かった、じゃあ出してくるね~♪」
「待って下さいまし、セイラ、私も行きますわ、ユウマ、馬達をお願いしますね」
「ああ、少しここで水を飲んだら連れていくよ」
深夜、喉が渇きキッチンにお茶をのみに来たのだが。
『何者かがドアを開けようとしています。外出はお気をつけ下さい』
「いやいやそこは外出しちゃ駄目でしょ! 盗賊かな?」
2階からリビングに下りて窓開け外を見てみると、行商隊のテントがことごとく倒され人々がロープで縛られているのが篝火の明かりで見て取れた。
うちの持ち運びハウス前には六名の転移者がドアの隙間に剣を差し込みこじ開けようと奮闘中だ。
「はわあぁぁ、誰か来たの?」
「こんな夜分に来るなんて非常識ですわ」
2人とも寝ているところを起こされ不機嫌だな。だが服は着てきなさい。ってか俺もか。
「招かれざる客って所は概ね間違いじゃないかな、盗賊ってヤツらだけどね、よし、鑑定!」
鑑定でドアをこじ開けようとしているヤツらと、その仲間を判別。
チームアースってクランの様だ。
まずはドア前の奴らに、搾取!
他の所にいる者達にも、一気に放つ!
服を出して着替え、窓から飛び出し、こじ開けようとしているヤツらに声をかけてみる。
「何してるのかな?」
持っていた剣も地面に落としてしまい、自身も座り込んだり、這いつくばっている。
「な、なんだぁぁ~、動けないぞぉぉ」
「訳分かんねぇぇ、どうなってるぅ」
「ああ、俺はこのログハウスの持ち主、お前達は盗賊だよな」
「てめえがやってるのかぁぁ、俺達の仲間を30人はいたんだぞ」
そんなにいたのか、26人だと思ったのだが。
「えっと、26人だよね? そいつらなら今は行動不能だよ」
「チィ、何故人数を知ってやがるぅぅ」
ほっ、良かったまだ居たらどうしようかと思ったやん! じゃなくて思うだろ!!
「ユウマ腕輪着けるの手伝うよ~♪ 目がさめちゃったし」
「向こうを私達がやって来ますわ、セイラ行きますわよ」
よしよしちゃんと着替えた2人はドアにもたれてるヤツを押し退け出てきてくれました。
「ありがとう。お願いね、着けたらここに来るように命令して、縛られている人達を助けなきゃ」
「分かりましたわ」
2人が駆けて行ったので俺も転移者6人に腕輪を着け、その場で動くなと命令して、行商隊の解放に向かった。
数人、冒険者達だが抵抗したので少し怪我をしていたが俺達が回復させ、1人の犠牲も出さずにこの騒動は終わりを告げた。
そして、詰問タイム。
「君達は何故こんな事をやってるの? リーダーさん答えて」
答えたのはドアをこじ開けようとしていた中の1人だね。
「ここは異世界だろぅ、NPCなんだからぁ、何しても構わねえだろぉ」
こいつも前のヤツと一緒の事を言うのか。
「いや、NPCなんて居ないよ。皆は普通に生きている人達だ、明日この峠を越えて商業街に君達を連れて行く。まぁ、その称号だと一生犯罪奴隷だろうけど」
「くそぉぉ、死にやがれぇ、ファイアーアロー」
だがスキルが無いし出るわけ無い。
「はれ、何故出ないんだ?」
「ああ、君達、ステータス確認したら分かるよ」
自身のステータスを見たのか、あちこちから声があがる。
「レベル1だとぉ」「スキルが何もないじゃないか」「俺の火魔法が」
「分かっただろ? 何故出ないのか」
「それじゃあ俺達は」
「明日商業街の衛兵さんに身柄を渡して犯罪奴隷としてどこかで働くんじゃないかな」
「どうして、俺達は主人公だろ」
「ん~、君にとっての物語ではそうだろうな。でも現実は皆が主人公だろ? なら悪さをすればどうなるか、元の世界と同じだ」
「······」
「朝には出発するから寝ておけ、命令ね、後逃げるなよ」
その言葉の後しばらくすると26人のクランの皆は横になり、イビキが聞こえ朝までの時間鳴り止むことは無かった。
早朝、隊の人達にお礼を言われながら、一緒に出発し、日がまだまだ高い内に商業街に到着、馬車の入門待ちの列に並び、商隊の方達は順番を譲ってくれて、後数台で俺達の番になる。
門兵が、1台ずつ調べるため事前に持ち物などを聞きに回っているようだ。
「この馬車は商人ではないのか?」
「はい、王都から来た冒険者です」
「ふむ、ん? その後ろに立っている奴らはなんだ?」
「峠で盗賊行為をしていたので捕まえてきました、この街の衛兵さんに引き渡そうと思いまして」
「おお、大手柄じゃないか。ふむ、鑑定! なるほど間違いないようだなぁぁぁ! 何故貴方が!」
ん? 何かヤバいヤツでも居たのかな?
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