第三十一話 ドワ子のざまあ手伝いますか? Yes or No
「お前達は何者だ! この村に何しに来た!」
1人のおじさんがそんな事を言ってくるけど、冒険者だよね、ただの。
「え~、俺達は冒険者で、この先の商業街に行く途中だが、もしかしてここに夜営したら駄目だったとか?」
「ぬぬ? 隣村の者では無いのか?」
「王都から来たから違うな」
正確にはどこの者でもないが。
「王都からか、はぁぁ、村の外に新しい家が建ってると聞いて、村と村の間は手を着けん約束が破られたのかと思ったのだ。すまんな皆の衆、朝からすまなんだ、聞いた通り旅の途中だそうだ」
他の村人達は口々に『はぁぁ、ビビっただ』とか『オラはまだ足が震えてるだ』『帰って畑さ行くだ』とか言ってます。まぁ、誤解が溶けたなら良いか。
「旅の方もすまなんだ、ワシの早とちりだ」
「いえいえ。とんだご迷惑をかけてしまったみたいで、では俺達は行きますね」
そう言い持ち運びハウスをしまい馬車を出すと、『家が消えただ!』とか『今度は馬車が出て来ただ!』とか、うぷぷ。
馬車に馬具で馬さんを固定して······なんだか早口言葉みたいだな、あはは。
ほどなくして俺達は出発したのだが、屋根の上は春真っ盛りです。バカップルか! ほっときましょう、落ちないでね。
半日掛からず隣村を通り過ぎ、やっと下りになってきた。
馬さんも一度休憩させて俺達もお茶を飲んでいると、忍君がテルースさんに何かを教えている。聞き耳を立てると忍術を教えているようだ。忍術良いよな、偵察任務とか出来そうだし、よし、君達をNTBに、任命だ!
お昼休憩後、ゆるい登り坂を走り出して2時間ほど経ったので、馬さんを休憩させておこうと馬車を停められる所を探していると、森が一気に開け草原が広がり街道の先に町が見えてきた。
町があるなら行くでしょう! 馬さんもう少し頑張って下さいね、一応回復魔法をかけてみる。
町に入り、オークが売れないかと思い、冒険者ギルドに寄ったのだが忍君とテルースさんがパーティーを組むとの事で、先程のNTBのパーティー名を教えてあげると、本当にそのままパーティー名にしてしまった。
俺達もオークを100だけ売り、オマケでと言うか無理やりダンジョンカードを持たされた。何でも王都と商業街の間にはダンジョンが無いそうで見つけると黒貨5枚出るそうだ、まぁ、見付からないから5千億プルなんてふざけた報酬が出るんだろうな。
それも皆の分をくれるし、いやいやパーティーで1枚で十分だから! ちゃんと2枚返しました、忍君とテルースさんも元々持っていて、ダンジョンへは入った事がないので新品のままだった物を見せると、受け付けのお姉さんが物凄く残念そうな顔をしたそうです。
馬車に乗り込み町を出発。
「ユウマさん、相談があるのですが」
忍君が、屋根の上から話しかけてきた。
「ん? なんだ?」
「僕と、テルースに偵察部隊みたいな事をやらせる気はありますか?」
「ん? NTBを思い付いたのは忍者だろ? なら偵察だし、2人いるならとりあえず部隊って付けとけって、半分冗談だったんだが何か偵察してくれるの?」
「一足先に次の町に行ってナニーさんの仇の情報を集めるのです」
「ほお、そりゃ助かるね、で本音はテルースと2人でラブラブしたいと」
「そうそう、やっぱり2人きりになりたいしって僕の試みをバラさないで下さいよ!」
「いやいや、バレバレだよ、あはは、でも頼めるならこっちは助かるね」
うん、めっちゃ助かる、もしかしたら今まで通り過ぎてきた町や村にも、何かナニーの仇に一矢報いるものがあったのかも知れないし、完膚なきまで破滅させてやりたいからな。
「ならテルースもシェアして貰えませんか、色々教えたのですが凄い素質を持っていまして、既に職も2つになっています。職が複数ある人って中々いないそうですから、だからシェアして貰えれば戦力が激増です」
ふむ、確かにその考えは有だな。俺は無職のままなのだがな。
「じゃあ俺達の旅の目的に協力して貰えるのか?」
「任せて下さい!」
「あははは、ありがとう、寄生! シェア!」
テルースに向かって放たれた透明な玉は、テルースに当たりそのまま中に消えていった。
「どうだ? 上手く行っているだろ?」
「どう、テルース」
「はい。こんな事って、鍛冶職があります! 火と土魔法もありますよ!」
ん? 何かな?
「言っただろ、ユウマさんのシェアならなんとかなるって、今なら仕返し、じゃないな、見返してやろう」
涙を流し、何度も頷くテルースさん。
「忍君、いったいどういうこと?」
忍君の話だとこうだ。
●火魔法と土魔法2つとも無いドワーフは居ない。
●孤児院出身で報酬から毎月孤児院に寄付をしている。
●転移者のパーティーに、ポーターとして入っていた。パーティー登録はしていないがそれにアイテムボックスは無いので大きなリュック(慎重の倍近くの物)で、力もそこそこしか無く、落として壊しただの入れたのに物が無いなどの事で体罰を受けていた。
●今回はトラウト領からの護衛依頼で王都に行った帰りに金が勿体ないと言われテルースだけ徒歩での帰り道だった事
●体罰で背中は傷だらけである事
●馬車に乗る前に全ての物を取られ、本当に着の身着のままだった。
よくあそこまで歩いたもんだよ、飲まず食わずだろ? テントもない、何もないのに······俺は。
「おい、テルースさん、忍君、任せろ、全部解決してしまうぞ!!」
「聴いてたよ!! そんなの許せない!」
「私の物は後回しで構いませんわ! 徹底的に潰しますわよ!!」
「聞いたかテルースさん、忍君、転移者には派手に後悔と、孤児院には使いきれない程の寄付をしてやろう!」
「ユウマさん、セイラさん、それにナニーさんは自分の事もあるのに、ありがとうございます!」
「あ、ありがとうごじゃいましゅぅぅ!」
「テルースの修行はどうしますの? 見たところ忍術の伸びが良さそうですわね」
「俺もそう思ってた、忍君が教えるのが一番良さそうだよな」
「それなら僕達は先行します、偵察もしながら魔物を倒して、技を覚えたいので」
うん、効率は良いかな。忍君がこの世界の常識とか知らないはずだけど、テルースさんが補完してくれるか。
「良さそうだな、じゃあ頼めるかな」
「はい!!」
涙の止まったテルースさんと忍君はその返事と共に馬車の前に飛び降りて駆け出す。
「では先に行ってきます!」
「商業街の冒険者ギルドで会いましょう!」
そう言って、一気に加速し登り坂の先に消えていった。
それから2時間後、馬を休ませるために休憩をしているところに現れたのは······。
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